トヨタ生産方式における「見える化」のヒント
1.トヨタ生産方式と見える化
トヨタ生産方式(TPS, Toyota Production System)は、トヨタ自動車が生み出した工場での生産方式で、多くの企業にこの方式が導入されています。
トヨタ生産方式の中で「見える化」というしくみがあります。
見える化は、現場の状態が正常か異常か見た目で判断し、正常にするための管理手段のため「目で見る管理」とも言います。
見える化の目的は、問題やムダのあぶりだしや管理を効率化することです。
生産現場における作業の方法や順序、物の管理、作業の進捗管理、安全管理などすべてについて正常と異常の状態を明確することで、問題が常に見えるようになり、問題が発生してもすぐに認識して、解決できるしくみになっています。
そのための見える化のポイントとして、「誰が見てもひと目でわかる」「情報が共有化できる」ことが大切になります。
2.現場の見える化
目で見る管理として「アンドン」が良く知られています。
図1のような異常が生じた時、現場監督者や作業員に知らせたり呼ぶために用いる呼び出しアンドン、設備やラインの運転状況を赤・黄・青のランプで知らせる稼働アンドンなどがあります。
運転していることがわかれば、不用意な立ち入りによる怪我の防止や、異常がある場合は離れていても状況を知ることができます。
【図1 アンドンによる見える化】
また、図2のような置き場所の区分線表示や色分けによる物の区分、高さ制限ライン表示による安全確認など、物や置き場所の見える化の例として挙げられます。
【図2 表示・区分による見える化】
3.仕事の見える化
1人の人が複数の仕事をできるようにしておく多能工化が進むことで、需要による生産量の変化に対応した適切な配置や、突発的な欠員が出た時の対処がフレキシブルにできるようになります。
多能工の育成・管理として、作業者がどのくらい技術を習得したかについて、計画と現在の状況が全員に共有できるように、図3のような「星取表」を表示することで、スキルの見える化をすることができます。
星取表は横軸に作業名、縦軸に作業者名とした表に作業者の習熟レベルを4等分の円グラフを埋めていき、作業者がどの作業をどのレベルで習得したかを管理することができます。
また、職場の中でお互いに刺激しあい助け合うことでモチベーションの向上にもつながります。
【図3 星取表によるスキルの見える化】
IoTを活用した見える化も
こういった見える化の工夫に加えて、最近ではIoT(Internet of Things)を導入したスマート工場の取り組みが進んでいます。
工場の生産ラインの機械設備にインターネットをつなぎ、機械の稼働状況や生産数・品質などのデータをリアルタイムで収集し分析することによって短時間で情報の見える化を行い、業務効率の向上などの改善をしていくことができます。
改善を行うには、IoTのしくみも活用しながら、常に一人一人が問題意識を持って自ら工夫し考えていくことが大切です。
(アイアール技術者教育研究所 N・Y)