3分でわかる技術の超キホン 有機ケイ素化合物 シリコーンの基礎知識

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有機ケイ素化合物

1.ケイ素のクラーク数

ケイ素は、地球の地殻表面における元素の存在率を示すクラーク数では25.8%であり、酸素に次ぐ第二位の元素です。その多くは二酸化ケイ素(SiO2)として存在しています。

本コラムでは有機ケイ素についてご紹介します。

順位 元素 元素記号 比率
1 酸素 O 49.5
2 ケイ素 Si 25.8
3 アルミニウム Al 7.56
4 Fe 4.70
5 カルシウム Ca 3.39

【表1 クラーク数の順位】

 

2.ケイ素と炭素の比較

最初にケイ素と炭素の比較をしたいと思います。

ケイ素は炭素と同じ周期表の第14族ですが、ケイ素は第三周期、炭素は第二周期であることから、ケイ素化合物は炭素化合物と異なる性質を有しています。

ケイ素と炭素を他の原子との結合の強さを比較しました。
炭素―炭素結合は強く(356 kJ mol-1)、炭素同士で立体的な構造をとることができますが、ケイ素ではそのような例は少ないです。それはケイ素―ケイ素結合の弱さ(230 kJ mol-1)が理由の一つです。
酸素やフッ素など電気陰性度が強い原子との結合は一般的に炭素よりケイ素のほうが強くなります(ケイ素―酸素結合、368 kJ mol-1)。
また、ケイ素―フッ素の結合はさらに強く(582 kJ mol-1)、これらの性質を利用して有機合成の分野ではケイ素はアルコール基の保護基として利用されています。

X = C X = Si
C-X 356 290 1.23
O-X 336 368 0.91
F-X 485 582 0.83
Cl-X 327 391 0.84
Br-X 285 310 0.92
Si-X 290 230 1.26

(単位:平均結合エネルギー, kJ mol-1
【表2. ケイ素と炭素の結合エネルギーの比較 ※引用1)

 

3.シリコーンとは

有機ケイ素化合物は、LED・有機EL封止剤、コーティング剤、シリコーンゴム、化粧品など様々な製品に使用されています。
ちなみにシリコン(silicon)とシリコーン(silicone)、どちらも言葉は似ていますが、違うものです。
シリコンはケイ素(Si)元素を意味しますが、シリコーンは、ケイ素(Si)と酸素(O)と有機基(CH3基、Ph基など)が結合した化合物の総称であり、シロキサン結合 (-Si-O-Si-) を有しています。シリコーンは、有機と無機の両方の特性をあわせ持つ高機能素材です。

シリコーンの構造

※「シリコンとシリコーンの違い」の詳細については、こちらの記事をご参照ください。

 
炭素は有機化学のメイン元素ですが、ケイ素は無機化学の代表となる元素です。この2つの性質を有するのが有機ケイ素化合物です。
シリコーン、シランカップリング剤などの有機ケイ素化合物の需要は今後も拡大すると予測されており、2050年の世界の有機ケイ素化合物の市場は、約535億ドル(約6.0兆円)まで成長すると予測されています。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・I)

 


≪引用文献・参考文献≫

  • 1)Jonathan Clayden, Stuart Warren, 野依良治(訳代表), ウォーレン有機化学(下),東京化学同人, 1336.
  • 2)玉尾皓平, 化学と生物. 1995, 33, No9, 591-596.
  • 3)三菱ケミカルリサーチ、有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発/有機ケイ素に関する技術動向と市場の調査
    https://www.nedo.go.jp/content/100904991.pdf
  • 信越化学工業株式会社、シロキサン結合による特長
    https://www.silicone.jp/info/begin4.shtml

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