サイマルテニアスエンジニアリング(SE)、コンカレントエンジニアリング(CE)、そして品質ゲート管理
“SE”(Simultaneous Engineering:サイマルテニアスエンジニアリング)と、“CE”(Concurrent Engineering:コンカレントエンジニアリング)は、どちらも同時進行型の開発を表します。
同時進行ですが、あるタイミングでは、開発、製造、品質及びコストなど、それぞれの分野で所定の到達レベルとなっていなければなりません。いくつかのキーになるタイミングで、到達レベルを管理するのが”品質ゲート管理”です。
開発初期段階から各分野で情報共有して議論 ”SE”と”CE”の考え方
同時進行型でない場合、開発から量産化までの流れは、
開発完了
↓
製造工法&工程の設計
↓
外製品の調達先設定
↓
物流設定
というように、各分野が棒繋ぎのように活動します。
これに対して、なるべく早い段階から各分野のメンバーが情報を共有し、ともに活動するというのがSE(CE)の考え方です。
開発の評価が進む前に、最適製造、最適調達及び最適物流を考慮した、構造・仕様となるように、各エキスパートが集まり議論をします。
プロジェクト方式で行われることが一般的ですが、メンバー間での目的や詳細計画の共有のみならず、最新状況情報の効率的な共有方法や、活動を軌道修正する場合の決定プロセスも重要なポイントとなります。
早期に議論ができるということは、多様な意見をうまくまとめていかなければならないという負荷がかかることになります。
この時期をしっかりと乗り越えないと、‘棒繋ぎ開発に比べ効率が悪かっただけ’で終わってします。
先に苦労をしておいて後半はスムーズに、質の高い良い結果を得る方法をFront loading (フロントローディング)と呼びます。ただ、‘言うは易(やす)し、行うは難(かた)し’で、実行には強い信念が必要です。
「品質ゲート管理」の評価と仕様変更
品質ゲート管理を行うためにキーになるタイミングには以下があります。
すなわち、
- 量産化活動を行うということを決定するタイミング
- 製造設備に関係するような製品の基本仕様を決定するタイミング
- 工法・工程も含めて量産の仕様を決定するタイミング
- 実際の量産ラインでの評価結果に基づき実際の量産を決定するタイミング
- そして、量産後ある時間の経過後に量産の状態を評価するタイミング
です。
各タイミングでは、要求品質に基づき企画した目標仕様に対して、その時点での実際の仕様が、機能や信頼性のみではなく、品質や供給能力も含めて予定完成度に到達しているかをデータベースで評価し、必要なフォローアップ活動を決めます。
例えば、製品の機能や信頼性の評価結果がOKでも、製造バラツキが大きかったり、工程能力が低い、あるいは製造コストが高い時には、仕様変更が必要となる場合もあります。
仕様変更においては評価実績を考慮した変更にしなければなりませんので、より後半の品質ゲートでの決定により変更しようとした場合は、変更範囲・内容に関する制約条件が多くなります。
評価が不充分な仕様変更をどうしても採用しなければならない場合は、リスク管理(影響度評価&対応策準備)が重要となります。
SE(CE)により、フロントローディング活動をしっかりやっておくと、後半の品質ゲート評価では規定された項目の確認作業(データ類のチェック)だけで完了することができます。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)