【QC検定3級対策】サンプリングと誤差
QC検定は、JSA日本規格協会グループが主催する品質管理の知識を問う筆記試験です。
内容は品質管理とは何か?から始まり、改善活動の基礎知識、統計的なプロセス管理など多岐にわたります。
受験者数は年々増加しており、毎年の受験者数が10万人を超える製造業ではメジャーな試験です。
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この連載では、各級の頻出範囲について例題を交えて解説を行います。この連載を通じて、QC検定の受験準備をしてみましょう。
今回から、職場で問題解決を行う全社員や品質管理を学ぶ学生を対象とした3級試験について16回に分けて解説します。3級の試験範囲は日本規格協会のHP(品質管理検定レベル表)をご確認ください。
【3級解説:第1回】サンプリングと誤差
今回は3級の試験範囲(手法分野)から「サンプリングと測定誤差」に関する章を具体例を示しながら解説します。
(1)サンプリングとは?
サンプリングの例として、「100本の真の値が4gである鉛筆の重さを推測するため9本をサンプリングして測定する」場合を考えます。
このとき、100本の鉛筆を「母集団」、そのうちの9本抜き出すことを「サンプリング」、9本の鉛筆を「サンプル」と呼びます。この9本の鉛筆を測定し、その結果から母集団である100本の鉛筆の重さを推定して合格判断などの処置を行います。
ちなみに鉛筆の真の値は4gとありますが、実際の鉛筆の重さは製造の誤差や測定の誤差があります。厳密な意味での真の値を調べるのは困難ですが、ここでは4gと定義されていると考えましょう。
また今回は母集団が100本の鉛筆で調べているのが重さですので、100本すべてを測定することも可能ですが、実際の製造現場では母集団が何万個もある場合や壊さないと測定値が算出できない試験などあります。そういった場合を想定したワークだと考えましょう。
(2)誤差とは?
それでは実際に測定していきます。結果は下表です。
測定No. | データ(g) |
1 | 1 |
2 | 3 |
3 | 2 |
4 | 3 |
5 | 4 |
6 | 5 |
7 | 2 |
8 | 4 |
9 | 3 |
真の値が4gに対し、4g以外の測定データもいくつか得られました。これらを「誤差」といいます。
誤差にはサンプル自体の違いからくる製造の誤差と、測定の誤差があります。
測定誤差は同じサンプルを測定していても起きる誤差です。
また測定誤差には「系統誤差」と「偶然誤差」があります。
系統誤差は測定者のクセや測定器のクセ、測定機器の校正状態、測定条件によるもので、偶然誤差は特に原因はないが起きる誤差です。
(3)ばらつき、かたよりとは?
上記の誤差を考慮しながら、9本の鉛筆の重さの傾向を見ていきます。
①:まずは測定データをとります。
②:測定データを「〇gと測定されたのは何回か?」という表にまとめ直します。
③:②の表をグラフ化します。
④:③の表を折れ線グラフにします。
このとき9本の鉛筆の重さの傾向を表す数値として下記があります。
定義 | 例の場合 | |
平均 | 測定データの平均値 | 3.0g ①表から算出 |
母平均 | 母集団の平均値 | 100本の鉛筆の平均値なので求めていません。 |
真の値 | 全く誤差のない本来の値 | 4g |
誤差 | 測定値から真の値を引いた値 | 4-3(データ)=1 4-1(データ)=3 など |
かたより | 母平均から真の値を引いた値 (系統誤差) |
4-3.0=1.0 |
ばらつき | 測定値のばらつき(偶然誤差) | 範囲R=6.0 ※他にも標準偏差などで表される |
真の値4gに対して、平均値が3.0g、かたよりが1.0g、ばらつきの範囲が6.0gですので、かなり誤差が大きい結果と言えます。
今回の場合、製造または測定方法に問題があるようなので、改善が必要という結論になります。
それでは最後に例題で意味を再確認してみましょう。
例題
次の文章で正しいものには〇、正しくないものには×を選びましょう。
(1) 真の値と母平均の差を「ばらつき」という。
(2) サンプリング誤差より測定誤差の方が必ず大きくなる。
(3) サンプリング誤差はかたよりとばらつきの両方を含む。
(4) サンプリングの目的は抜き取ったサンプルの情報を得るためである。
(5) 誤差とは測定値から真の値を引いた値のことである。
(6) サンプルは母集団より大きくなることはない。
(7) 一般的にサンプリングは分析することを考慮して、規則正しく採取したほうがいい。
(8) 測定者が変わることで測定値が変わるのは仕方がないことなので対策は打たなくていい。
[解答と解説]
まとめ
今回は統計の基礎となるサンプリングと測定誤差について解説しました。
QC検定では統計に関する問題も多く出題されますので、しっかりと身につけましょう。
次回は引き続きQC検定3級の内容で基本統計量について解説します。
(アイアール技術者教育研究所 A・K)