【早わかりポンプ】ポンプの要素部品「軸3兄弟」を解説(軸受/軸封/軸継手)

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1.軸をキーワードとする重要な要素部品「3兄弟」とは?

ターボポンプがその基本機能を発揮するための主要部品は、水にエネルギーを与える羽根車、羽根車を回転させる軸、羽根車を収納して水密を保つケーシング(胴体)の3つですが、回転機械であるターボポンプを健全に運転するためには、軸をキーワードとする重要な要素部品の「3兄弟」が必要となります。

(1)軸受

ターボ形ポンプや、容積形回転式ポンプでは、ポンプ回転体(主軸や羽根車など)を支える「軸受」が必要です。

ポンプの回転体には、軸と直角方向に作用するラジアル荷重と、軸方向に作用する軸スラストの両方が作用します。そのため、ラジアル荷重を受けるラジアル軸受と軸スラストを受けるスラスト軸受が必要となります。

ターボポンプに使用される軸受は、ころやボールの転がり接触を利用する転がり軸受と、油膜の潤滑作用を利用するすべり軸受に大別されます。

転がり軸受は、荷重の種類に応じて各種形式のものが市販されていますので、なるべく転がり軸受を用いる方がコストや保守面で有利です。しかし、軸径が非常に大きい(大出力)、軸の回転速度が非常に速い、変動荷重が作用する、あるいは極めて高寿命を要求される、などの条件によっては、すべり軸受の適用が必要になります

ラジアル荷重を支えるすべり軸受はジャーナル軸受と呼ばれます。円筒形の軸受台金(スリーブ)の内面にホワイトなどの合金製の摺動材を貼って摺動材内径が回転軸径よりわずかに大きく作られ、摺動材と軸との狭い隙間に潤滑油が供給されて油膜が形成されます。

ラジアル荷重と軸スラストの両方が作用するポンプ回転体を支えるために

  • ラジアル荷重用軸受+複合荷重用軸受の組合せとするか
  • ラジアル荷重用軸受x2+スラスト荷重用軸受の組合せとするか

いずれかの構造を選択します。

軸受が健全に機能するためには、適切な潤滑が必要不可欠です。潤滑方法には、グリース、油浴、滴下、噴霧、強制給油などの方式があります。低速・中速回転であればグリースや油浴が用いられます。高速あるいは高荷重になると、滴下・噴霧・強制給油など潤滑用を強制的に注入する方式に移行します。

 

(2)軸封

ポンプ回転軸がケーシングを貫通する箇所には、圧力を持ったポンプの内部水が外へ漏れださないようにするための軸封部品が必要になります。

よく用いられる軸封方式にはグランドパッキンメカニカルシールがあります。他に、漏れを前提とした非接触形式であるスロットルブッシュフローティングリングシールというものもあります。

 

① グランドパッキン

グランドパッキンは繊維を編み込んだものをリング状に形成して「パッキン押え」という部品を締め込むことにより、回転軸に装着した軸スリーブに密着させて漏れを止めるものです。完全に漏れをなくすと摩擦によりスリーブとパッキンが焼き付いてしまうため、適度な締め加減で一定量の水を漏洩させながら使用します。グランドパッキンの機能を適正に発揮させるためにはグランド押えの締め具合が重要で、保守管理する人の力量に頼る部分が大きな比率を占めます。

 

② メカニカルシール

メカニカルシールは、軸とともに回転する回転環と回転しない固定環とが、互いに摺動しながらスプリングによって押し付けられて密封性を高めて、漏れを最小化する構造の軸封装置です。回転環と固定環が焼き付かずに健全な運転を維持するためには摺動面を適正に潤滑冷却する必要があります。回転環と固定環の隙間を数μmに保って、この隙間に「フラッシング液」と呼ばれる液体を供給して摺動面を潤滑冷却して、隙間からの漏れを最小限に保たれるように設計製造されます。微細漏れであれば、摺動面を冷却潤滑した後に蒸発するので、目視ではほとんど漏れがないように見えますが、完全無漏洩ではありません。

なお、シールレスポンプ(軸封部品を不要とした構造のポンプ)として、キャンドモータポンプ、マグネットポンプがあります。絶対に外へ液体を漏らしてはいけない化学液や薬品の移送などに用います。

(※軸封については、本連載コラム「軸封の種類/用途/使い分けを総整理!」で詳しく解説しています。)

 

(3)軸継手(カップリング)

ポンプ主軸と駆動機(モータなど)を結合するための部品です。
リジッドカップリングフレキシブルカップリングがあります。

リジッドカップリングは、ポンプ軸と駆動機軸を一体化する必要がある場合に使用します。立軸ポンプなどでポンプの軸方向荷重(スラスト)を駆動機側の軸受で受ける場合に用いられます。

フレキシブルカップリングは、ポンプ軸と駆動機軸の軸心ズレをカップリングの弾性部で吸収する機能を持つ継手です。軸の撓む横軸ポンプや、軸心位置が熱膨張で変化する高温ポンプなどに用いられます。弾性要素としては、ゴム、ギア、板バネ、ダイアフラムなどが用いられます。

 

2.ポンプ要素部品は保守が重要

3兄弟要素部品のうち、軸受と軸封は消耗部品であり、日常の保守と定期的な交換が必要です。
保守としては、軸受では運転中の温度監視や、定期的な潤滑油脂の補充、軸封では漏れ状況の監視やグランドパッキンの定期的な締め加減調整などの作業があります。
適切な保全と負荷に応じた適切なポンプ特性調整方法の導入により、ポンプの省エネによる環境負荷軽減を図るようにしましょう。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)

 

 

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