【早わかりポンプ】ポンプの効率と省エネ化

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1.ポンプ省エネルギーの重要性

昨今、地球温暖化に起因すると考えられる気候変動がもたらす異常高温や記録的大雨による被害が深刻化しています。
人類の活動によって排出される、大気中の二酸化炭素濃度が増加していることが、地球温暖化の原因と考えられており、二酸化炭素を多く含有する化石燃料由来のエネルギー源を減らすとともにエネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量を大幅に削減すること(省エネルギー)が、地球環境維持と持続可能な人類活動のために喫緊の課題とされています。

ポンプは、各種産業プロセス、建築設備(事務所、マンション、ホテル、学校、病院、などの給水システム)、工場設備、農業など幅広い分野で使用されており、ポンプを駆動するために消費される電力(モータ動力)はエネルギー需要のうちのかなり大きな割合を占めています。
(統計データなどによればポンプ運転のために消費される動力は、電力消費量の約10%と推定されます)

したがって、ポンプの省エネ化を図ることは地球環境保全のためにも大変重要なことです。

 

2.ポンプの効率と動力

ポンプの流量をQ(m3/min)全揚程をH(m)ポンプが扱う液体の密度をρ(kg/m3)としたとき、ポンプが行う有効な仕事を水動力と呼び、次式で計算されます。

ポンプ水動力=0.1634 xρx Q x H/1000 (kW)

一方、ポンプが上記の有効仕事(出力)をするために消費する動力を軸動力L(kW)と呼び、水動力の軸動力に対する百分率をポンプ効率と呼びます

ポンプ効率η=0.1634ρQH/1000Lx100 (%)

例えば、水動力が80kWのポンプで、軸動力が100kWであれば、ポンプ効率は80%となり、軸動力と水動力の差100-80=20kWは、ポンプ内部における流れの乱れ、衝突、摩擦、漏れ、あるいは軸受や軸封などの部品における機械的損失などによりムダに消費されるエネルギーとなります。効率90%のポンプがあれば消費動力は80/0.9=88.9kWとなり10kW以上の省エネを図ることが可能となります。従って、出来るだけ高効率のポンプを選定することがまず重要となります。

近年はCFD(Computational Fluid Dynamics)技術の進歩により流れの乱れや衝突による損失を最小化した高効率ポンプや、材料技術の進歩により摺動隙間を狭めて内部漏れ損失を最小化したポンプが実用化されています。
また経年ポンプは表面の錆びや摩耗により効率が低下していることがあります。
定期点検整備による効率回復を図るとともに、羽根車など主要部品、またはケーシングを含む全体の更新により抜本的な効率向上を行うこともポンプの省エネを考えるうえで重要なことです。(適切な保全)

 
BEPと運転点,システムヘッドカーブ

 

3.ポンプ特性の変更による省エネ化

システムヘッドカーブは、管路損失や実揚程、あるいは流量に余裕を見込んで計画することが多く、ポンプを運転した時に流量が必要量より出過ぎになることがあります。その場合は、ポンプ出口配管上に設置される吐出弁(バルブ)の開度を絞って所定流量に調整します(バルブ制御)が、バルブで絞るということは抵抗をつける、すなわちその分だけ損失を増やすことに他ならず、ムダとなるエネルギーが増大することになります。それに対して何らかの方法でポンプ特性を変更して、実際に必要とされる運転点に合わせることができればエネルギーのムダをなくし大きな省エネになります。

ポンプ特性変更の方法としては、回転速度変更(回転数制御)、羽根車直径の変更(羽根カット…主に遠心ポンプに適用)、段数の変更(段抜き…多段ポンプに適用)といった方法があります。

プラントの操業負荷により、あるいは季節や時間帯により必要流量が変化する用途の場合には、ポンプ駆動モータをインバータなど可変速仕様とすることで、負荷に応じた回転数制御を行い、低負荷運転時の大きな省エネルギーを実現することができます。図の例では、流量を定格の60%まで低減して運転する場合に、回転数制御を導入することで、バルブ制御の場合に比較して約50%の動力削減が得られています。

可変速ポンプQHとシステムヘッドの例

適切な保全と負荷に応じた適切なポンプ特性調整方法の導入により、ポンプの省エネによる環境負荷軽減を図るようにしましょう。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)

 

 

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