設計・開発

KPIで差をつける!競合に勝つ製品開発企画の実践法

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KPI

本記事では、新規製品を開発したり、現行の製品ラインナップを見直して改良するための製品目標企画を行うときの手法として「KPI」を用いる方法について説明します。

1.KPIとは

KPI」(Key Performance Indicator)は、定められた目標を達成するための要素を分解し、その各要素の目標と達成度が分かるようにする指標です。

図1は、KPIの考え方を模式的に表したものです。KPI①~KPI③が選ばれたKPIです。

 

KPI
【図1 KPIの考え方】

 

必要な要素A、BおよびCに関するKPIがあって、各KPIにおいて必要な達成度と現状レベルを示しています。これにより必要達成度と現状レベルの差が分かります。要素CにおけるKPI③では、目標レベルを達成済みですが、要素BにおけるKPI②では、必要達成度に対して大幅未達ということを表しています。

 

2.KPIツリーとは

KPIは目標達成のための要素(手段)を分解したものですが、さらに分解された各要素で見てみると、その要素で必要なレベルを達成するためのキーとなる指標があります。すなわち”KPI達成のためのKPI“です。
図2のようにして、KPIを分解していきキーとなる要素をまとめたものを「KPIツリー」と呼びます。

 

KPIツリー
【図2 KPIツリー】

 

3.KPIとレーティング

KPIは、言葉による表現や数値を用いて表します。なるべく目標を数値として表し、客観的な評価が可能なようにしておくことが有効です。
一方で、単純な計測値では表現できなかったり、数値では達成レベルが分からないような場合があります。このような場合には、「レーティング」という考えを用いて、レベルの表現を行います。

図3にレーティングの例を示します。
製品のKPIを分解していって、ある部品の目標特性で耐久劣化度というKPIが出てきたときに、摩耗量などのような数値とともに、その摩耗量が市場要求値に対してどのようなレベルにあるのかをランク分けします。
この例では、レーティングの各定義に対応して1~6のレーティングの数値を設定しています。

[※関連記事:製品開発における耐久性の評価とレーティングの活用方法

 

レーティング
【図3 レーティング】

 

4.競合製品との比較(KPIを用いた競争力比較)

次に、KPIを製品開発企画に活用する方法について説明します。
新製品の投入や、現在の製品の改良により、市場シェア獲得やシェア拡大を目標とする場合、これを達成するためのKPIを分解します。この際、新規参入でもシェア拡大でも、競合製品とKPIを用いた比較を行うことは、検討や議論のベースとして有効です。

図4に示す例は、自社製品の現状KPIレベルを、競合㋐~㋓に対して、要素A~Eについて比較して表にしたものです。

 

KPIを用いた競争力比較
【図4 KPIを用いた競争力比較】

 

5.KPIを向上するための検討

関係者が認識を同じにして活動を行うためには、見える化したり、分かり易い図表を用いて議論することが有効です。KPIを用いた図表はこれに役立ちます。

基本的なターゲットを決め、製品コンセプト企画や仕様変更計画の策定のために、図5のような表形式で現状レベルと開発目標レベルを並べます。これを用いて、限られた開発資源をどの要素のポテンシャル向上のために重点的に投入していくのかを確認できます。

 

現状レベルと開発レベルの比較
【図5 現状レベルと開発レベルの比較】

 

図6は、開発目標をレーダーチャート(スパイダーチャート)を用いて見える化した例です。
各開発段階で現状値をトラッキングすることにより、達成度の進捗管理をすることもできます。

 

レーダーチャート
【図6 レーダーチャート】

 

開発企画においては、何をKPIとして選ぶかも重要な検討であり議論です。

 

6.KPIの他分野での利用

野球の大谷翔平選手が作成したことで有名な目標達成シート目標達成マトリックスマンダラチャート)は、目標(ゴール)達成のためにキーとなる要素を分解しており、KPIツリーのマトリックス版です。
KPIに繋がる日々の活動を積み重ねていくことにより、大きな目標にたどり着けます。

自己開発では、個人的成長のために活動を行いますが、一方、組織でも、組織力強化と組織目標達成のためにメンバー個々の競争力を育成向上させなければなりません。そのための教育計画と進捗管理においてもKPIの活用が可能になります。

同様な考えで、組織が目標を掲げて活動を行うようなQMS活動やEMS活動でもKPIを用いることができます。
KPIは目標を掲げて進めていく全ての活動への応用が可能です。

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)
 

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