3分でわかる技術の超キホン 光ファイバとフレネル反射
光ファイバ伝送における光損失について、接続損失や結合損失の原因として「フレネル反射」があります。
今回はフレネル反射と、これに関連する”反射減衰量“および”光パルス検出器“について説明します。
1.フレネル反射とは?
「フレネル反射」とは、光が屈折率の異なる媒質中を通過するときにその境界面ではね返る現象です。
図1に光ファイバ同士の接続端面を示します。
光ファイバ1と光ファイバ2の屈折率は等しくn1とします。光ファイバ1と光ファイバ2の接続部には間隙が生じます。実用上、間隙は空気の層となることが多いです。ここでも屈折率n0の空気として説明します。
[図1 光ファイバの接続端面]
光ファイバ1に入射したパワーPtの光は、光ファイバ1の出射端と空気の界面で屈折率が異なることにより反射されます。このときの反射光のパワーをPfとします。
空気と光ファイバ2の入射端においても同様に反射が起こります。このときの反射光のパワーをPfとします。
すなわち、光ファイバ同士を接続した光伝送路に光を入射した場合、その入射光は2回のフレネル反射をすることになります。
また、フレネル反射光の大きさは媒質の屈折率差と入射角に依存します。
ここでは、光ファイバ端面が鏡面であり、かつ光ファイバの長手方向の軸に対して垂直であると仮定します。
すなわち、図2に示すように、入射角θiと反射角θrが等しく、戻り光が最大であると仮定します。
[図2 鏡面での反射]
このときフレネル反射光パワーは以下の式で表されます。
Pf‘ ={(n1-n0)/(n1+n0)}2 Pt ・・・(1)
2.反射減衰量(ORL: Optical Return Loss)
「反射減衰量」(ORL:Optical Return Loss)とは、入射光のパワーに対する戻り光のパワーの比率です。
伝送損失と同様に、2つの量の相対的な関係を比率で表現するため、対数(デシベル)が用いられます。
反射減衰量は以下の式で表されます。
ORL[dB]= -10Log10(Pf‘/Pt) ・・・(2)
ここで、Log10は 10 を底とする対数です。
上図1における光ファイバ1と空気の界面での反射減衰量を計算してみます。
式(1)より
Pf‘/Pt = {(n1-n0)/(n1+n0)}2
であるので、
ORL[dB]= -10 Log10{(n1-n0)/(n1+n0)}2
となります。
光ファイバと空気の屈折率をそれぞれn0=1.0、n1=1.46とすると
ORL[dB]= -10 Log10{(1.46-1.0)/(1.46+1.0)}2 ≒ 14.7
となります。
戻り光は光源側の光素子などを劣化させる原因になることから、反射減衰量を測定しておくことは非常に重要です。また、実際に測定するときは偏光も考慮する必要があります。
3.光パルス試験器
(OTDR: Optical Time Domain Reflectometer)
「光パルス試験器」(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)とは、光ファイバの片端から光パルスを送信し、戻り光を受信して、その受信波形から光接続損失を測定する装置です。
光ファイバ通信においては、伝送路中で光ファイバが損傷した場合に、その損傷した箇所を探査するために使われています。
光ファイバに光を入射すると、コア内でレイリー散乱が起こり、レイリー散乱光の一部である後方散乱光が入射端に戻ってきます。後方散乱光は、入射端から散乱点までを往復する間にも減衰するため、散乱点が遠くなるほど入射端に戻る光パワーは小さくなります。
もし伝送路中で光ファイバが損傷していた場合、入射光は光ファイバの入射端、接続部と同様に、その損傷箇所でフレネル反射します。そのため、戻り光としてフレネル反射光を入射端で受信することができます。
フレネル反射光は、入射端から反射点までの距離に比例した時間を経過して入射端に戻ってきます。
光パルスを送信し、戻り光を受信までの時間から距離を求めたうえで、横軸に光ファイバ長、縦軸に戻り光パワーをプロットすると、フレネル反射が起きた箇所でピークが見られます。
したがって、光ファイバの入射端からフレネル反射が起きた箇所までの距離を測定することで、光ファイバの損傷した箇所を特定することが可能となります。
(日本アイアール株式会社 N・S)