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LTspiceを活用したEMC設計基礎から設計応用(セミナー)
2025/9/17(水)10:00~17:00
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本記事では、IC(集積回路)のうち、マイコンICの基礎知識について解説します。
目次
「マイコン」は、「マイクロコントローラ(MCU: Microcontroller Unit)」の略であり「マイクロコンピュータ」と呼ばれることもあります。ただし、厳密には「マイクロコンピュータ」は汎用的なCPUを搭載するシステム全体を指す場合もあり、用途や文脈により意味が異なることがあります。
マイコンは、最近のほとんどの電気機器に組み込まれていて、その電気機器を制御するためのICです。
例えば、冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、電子レンジ、掃除機などの家電を制御するために使われています。他にも、ロボットなどの産業機器、体温計や時計、そして、自動車にも使われていて、自動運転には無くてはならないものになっています。
マイコンは、今や日常生活に必要不可欠といっても過言ではありません。
マイコンは、多数の抵抗やコンデンサ、トランジスタなどの電子部品を超小型にして集積化した集積回路です。
以前は多数の電子部品を用いて機器が作られていたため、電子回路部分が巨大化していましたが、マイコンを用いることで電子回路部分を集積化できるため、機器の小型化につながりました。
部品の集積化により、さらに多くの部品を詰め込むことができます。
機能の追加は機器を巨大化させてしまうのが通常ですが、マイコンを用いることで機器に多くの機能を詰め込むことができるようになり、多機能化や高性能化にもつながりました。
またマイコンはソフトウェアによって動作を変更できる特長があります。
かつては動作変更のためには集積回路を作り直す必要があり、多くの時間が必要でした。しかし、マイコンを用いることで柔軟に処理を変更できるため、制御回路やICの設計・開発にかかる時間を短期化することができ、様々な用途に対応できるようになりました。
図1にマイコンの大まかな構成を示します。
【図1 マイコンの基本的な構成】
マイコンはボタン入力やセンサ入力など外部からの信号を受け取る入力部、情報を処理する処理部(演算部)、温度制御出力やモータ制御出力など外部に信号を出力する出力部から構成されています。
マイコンの動作は、たとえば図のように、押しボタンやセンサ入力を受けて、内部で処理をし、温度制御信号やモータの制御信号を出力します。
そして、処理自体をソフトウェアによって柔軟に変更できるという特徴も持っています。
【図2 マイコンの構成をさらに詳細なブロックに表した図】
図2は、マイコンの構成をさらに詳細なブロックに表したものです。
ブロックは、大まかに言うと、メモリ(コード用)、メモリ(データ用)、CPU、周辺回路に分かれています。それぞれについて説明します。
次に、マイコンの動作の流れを(1)~(4)で説明します。
ほぼすべてのマイコンにはリセット端子が備わっており、この端子をHighまたはLowレベルに設定することで、マイコンシステムの初期化が行われます。プログラムカウンタ、CPUほか、周辺回路の初期化が行われます。ほとんどの場合、メモリは初期化されません。また、メモリ(コード用)には、書き込み装置などを用いて、あらかじめプログラムコードを書き込んでおきます。
プログラムカウンタは、メモリ(コード用)のアドレスを指定します。初期状態では、プログラムの開始番地が指定され、メモリ(コード用)は、最初に実行するプログラムコードをCPUに対して出力します。
CPUは、最初に実行するプログラムコードを読み出し、そのコードの解釈を行います。また、解釈した結果に基づいて各種制御を行います。プログラムコードの制御内容は、以下の3種類程度に分けられます。
CPUの指示に基づき動作し、周辺回路の制御を行います。周辺回路には、いろいろな回路が搭載されていて、様々な機能を実現します。
マイコンを選ぶ際は、用途や性能に応じて適切なものを見極めることが重要です。
目的によって必要なマイコンの仕様が異なります。
以下のポイントを考慮して最適なものを選定しましょう。
タスクの複雑さに応じたクロック周波数やコア数が必要です。具体的にはCPUの性能によって決まります。
CPUの性能は、以下の項目に着目してください。
プログラムとデータの格納に必要なフラッシュメモリやRAMサイズを検討しましょう。
多くのマイコンはフラッシュメモリとRAMの2種類を内蔵しており、どちらも必要なメモリの容量は開発するプログラムに依存します。そのため、一概にどのくらいの容量が必要なのか定義することが難しいので、まずは大きいメモリの評価ボードを使ってプログラムを開発されることをおすすめします。
フラッシュメモリとRAMについては下記の通りです。
接続するセンサやアクチュエーターに対応した入出力を確認しましょう。
マイコンでは多様な機能を保有している製品があります。基本的にはマイコンに接続するデバイスや信号によって異なるため、接続デバイスとどのように通信するのか都度確認を行った上で決めていく必要があります。
ここでは、マイコンでよく使う代表的な機能を説明します。
バッテリー駆動の場合は低消費電力モデルが有利です。
必要な時だけ動作し、不要な時はスリープモードに入るなど、効率的な電力管理機能を備えている低消費電力型のマイコンもあります。
マイコンは、私たちの身の回りにある電子機器の多くに用いられています。携帯電話やテレビはもちろん、冷蔵庫や洗濯機、自動車や産業機械などの機械類、あるいは子供向けのおもちゃにもマイコンが用いられています。特に近年は、AI機能の搭載や低消費電力化など、新しい技術トレンドへの対応も進んでいます。
今後も技術の進化とともに、マイコンの活用範囲はさらに広がると思われます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)