ばね定数とは?計算式・求め方をわかりやすく解説 [ばね設計の基礎②]

ばね設計に関する前回の記事「ばね設計はなぜ重要か?ばねの役割・種類を理解する」では、ばねが機械において果たす役割と、圧縮ばね・引張りばね・ねじりばねという代表的なばねの種類について解説しました。
ばね設計の第一歩は、用途に応じて適切な種類を選ぶことですが、それだけでは実際の設計には十分とは言えません。設計者には「ばねに加える力と変位の関係」を定量的に明らかにすることが要求されます。その中心となる指標が「ばね定数」です。
今回は、ばね定数の基本的な考え方と、設計計算の基礎についてわかりやすく整理します。
目次
1.ばね定数とは何か
ばね設計において最も基本となるのが、「ばね定数」(spring constant)という概念です。
ばね定数を理解せずにばねを選定すると、動作不良や過負荷、さらには早期破損につながる恐れがあります。
本章では、ばね定数の意味と役割を明確にします。
(1)ばね定数の定義
「ばね定数」とは、ばねを一定量変形させるために必要な力、またはトルクを示す値です。
圧縮ばねや引張りばねでは「N/mm」、ねじりばねでは「Nmm/deg」または「Nm/rad」などの単位が用いられます。
ばね定数は、ばねの「こわさ(剛性)」を数値化した指標とも言えます。
ばね定数が大きいほど硬いばね、小さいほど柔らかいばねとなります。
また、ばね定数は機構の操作感、応答性、安定性を左右するため、ばね設計の出発点となる重要な設計指標といえます。
(2)フックの法則とばね設計
弾性範囲内では、加えた力と変位は比例関係にあります。
力をF、変位をx、ばね定数をkとしたとき、F = kx の関係があります。
この比例関係は「フックの法則」として知られています。
[※関連記事:フックの法則とは?公式と考え方、応力・ひずみとの関係等をわかりやすく解説 ]
一方で、弾性範囲を超えて使用すると、ばねは塑性変形を起こし、元の形状に戻らなくなります。
この状態での使用は性能劣化や破損の原因となるため、設計では必ず弾性範囲内で使用されるよう条件を設定する必要があります。
2.圧縮ばね・引張りばねのばね定数と計算の考え方
圧縮ばねと引張りばねは、いずれも軸方向の変位によって軸方向の力を発生させるばねです。そのため、ばね定数の考え方や設計計算の基本は共通しています。
本章では、代表的なコイルばね(円筒コイルばね)を中心に、ばね定数の算出方法と設計上の着眼点を整理します
(1)ばね定数に関する公式
一般的に多く使用される円筒コイルばね(圧縮ばね)のばね定数kは次式によって求めることができます。

- G: ばねに使用する材料の横弾性係数 [N/mm2(MPa)]
- d: 線径[mm]
- Na: 有効巻き数(コイルの総巻き数から両端部の座巻き数を引いた値)
- D: コイルの平均径[mm]
この式から分かるように、ばね定数は線径dの4乗に比例し、コイル平均径Dの3乗に反比例します。
つまり、線径のわずかな変更でもばね定数は大きく変化するため、設計上きわめて重要な寸法要素となります。

【図1 コイルバネのばね定数を決定する要素】
直列ばねと並列ばね
ばね定数
と
の2つのばねを直列に配置した場合の合成ばね定数Kは、
、
の場合は
となります。

【図2 直列ばね】
ばね定数
と
の2つのばねを並列に配置した場合の合成ばね定数Kは、
、
の場合は
となります。
つまり、同じばねを2つ並列に配置すれば合成ばね定数は単純に2倍となります。

【図3 並列ばね】
弾性エネルギー
ばねが自然長からx変位した状態で静止保持されているとき、ばねが保有するエネルギーEは、
で表されます。
ばねは一定量変位した状態で静止しているので運動エネルギーは変化せず、ばねをx変位させるために加えられた力がエネルギーとしてばねに蓄えられることになります。
これをばねの弾性エネルギーといいます。
(2)設計の基本的な流れ
- 使用条件の整理: ばねの使用環境と条件を明確にします。具体的には、ばねに作用する最大荷重と最小荷重、必要な変位量、繰り返し使用の有無、使用温度や腐食環境などを整理します。
- 必要荷重の設定: ばねに必要な荷重を設定します。ばねを用いる機構が確実に機能するために最低限必要な力と、許容できる最大荷重の範囲を定義します。
- 必要変位の設定: ばねの変形範囲を設定します。初期変位、動作中の変位、最大変位を整理し、使用範囲を明確にします。変位が不足すると機能不良が発生し、過大な変位は密着や塑性変形の原因となるため、余裕を持った設定が求められます。
- ばね定数の算出: 必要荷重と必要変位が定まったら、それらの関係からばね定数を算出します。ばね定数は、設計全体の基準値となるため、単一条件だけでなく、使用範囲全体で妥当な値になっているかを確認することが重要です。
- 概略寸法の検討: 算出したばね定数をもとに、線径、コイル径、巻数といったばねの諸元を検討します。規格品の適用可否や製作性、コストも考慮し、実際に入手可能なばねとの整合を取ることが現実的です。
- 応力と余裕の確認: 諸元が決まったら、ばねに発生する応力を確認します。最大荷重時の応力が材料の許容範囲内に収まっているか、繰り返し使用を考慮した場合に余裕があるかを評価します。この段階で問題があれば、ばね定数や寸法条件を見直します。
[※関連記事:応力とは? 引張応力/圧縮応力/せん断応力/曲げ応力の概要と求め方 ]
(3)実使用を考慮した検討
- ① 製造誤差の影響
線径、コイル径には公差が存在します。特に線径はばね定数への影響が大きく、わずかな寸法差であっても、実際のばね定数に無視できない差が生じる点に注意が必要です。 - ② 取付け条件の影響
実機では、ばねは必ずしも軸方向荷重だけを受けるとは限りません。傾きや偏心、接触部の摩擦などにより、ばねの変位や発生荷重が変化する場合があります。 - ③ 使用環境による変化
使用温度や腐食環境も、ばねの挙動に影響を与えます。高温環境では材料の横弾性係数が低下し、ばね定数が変化することがあります。また、腐食が進行すると、応力増加や疲労寿命の低下につながります。
①~③にのべた要因を考慮した設計が不可欠です。具体的には、安全率を十分に確保すること、使用範囲に余裕を持たせること、が必要です。誤差要因や環境要因を正しく理解し、それを織り込んだ設計を行うことが重要です。
3.ねじりばねにおけるばね定数の考え方
(1)トルクと回転角度
ねじりばねでは、ばね定数は回転角度あたりに発生するトルクとして定義されます。
トルクを T、回転角度を θ、ばね定数を k とすると、弾性範囲内では T = kθ の関係が成り立ちます。
回転角度が大きくなるほど発生トルクも大きくなりますが、過大な回転角度で使用すると応力が増加し、疲労寿命の低下や破損の原因となります。そのため、設計では使用角度範囲を明確にし、弾性範囲内で使用されるように条件を設定する必要があります。
(2)設計計算の注意点
① 脚部の影響
ねじりばねでは、脚部の形状や取付け条件がばね特性に大きく影響します。特に脚部の曲げ形状や接触位置によって、実際の有効巻き数が変化し、ばね定数や発生トルクが理論値からずれる場合があります。
また、脚部が固定される構造では、取付け誤差や拘束条件によって応力状態が変化するため、設計時には取付け状態を含めて検討することが重要です。
② 応力集中
脚部の曲げ部やコイル端部には応力集中が生じやすく、疲労設計が重要になります。応力集中を考慮せずに設計すると、計算上は問題がなくても早期破損につながることがあります。
そのため、ねじりばねでは最大応力(特に最大曲げ応力)の評価に加え、応力集中部の形状や仕上げ状態も含めて検討する必要があります。
ねじりばねは、ばね定数の理論計算だけでなく、脚部形状や取付け条件を含めた実機状態での評価が不可欠です。
4.ばね定数の設計でよくある失敗例
ばね定数の設定を誤ると、機構全体にさまざまな問題が発生します。
実務でよく見られる失敗例を通じて注意点を整理します。
(1)ばねが硬すぎる場合(ばね定数が過大)
- 操作力の増大: 必要以上に硬いばねは、操作性を悪化させます。
- 部品への過負荷: 周囲部品に過大な力がかかり、破損の原因になります。
- 疲労寿命の低下: 応力が高くなり、疲労寿命が短くなります。
(2)ばねが柔らかすぎる場合(ばね定数が過小)
- 機能不足: 必要なばね力が得られず、機構が正常に動作しません。
- 振動やガタの発生: 保持力不足により、振動や異音の発生につながります。
ばね定数は「硬すぎても、柔らかすぎても問題が生じる」ため、単一条件ではなく使用範囲全体で最適値を検討することが重要です。
5.ばね定数設計の位置づけと次の検討事項
ここまで、ばね定数の基本概念と設計計算の考え方について解説してきました。
ばね定数は、ばね設計の中心となる指標であり、必要な荷重と変位の関係を定量的に決定する重要な設計要素です。ばね定数の設定は、機構設計全体の方向性を左右する基礎条件となります。
第2章(1)で紹介した圧縮ばねのばね定数公式に含まれる横弾性係数 G は、ばね材料に固有の特性値です。しかし、ばね設計では横弾性係数だけでなく、強度、疲労特性、耐熱性、耐食性など、使用環境に応じたさまざまな材料特性を考慮する必要があります。
すなわち、ばね定数の検討は設計の出発点ではありますが、それだけで設計が完結するわけではありません。材料特性や使用条件を総合的に評価して、はじめて実用に耐えるばね設計が成立します。
次回は、ばね設計において重要となる「材料」に焦点を当て、ばね用の各種材料の特徴や、使用条件・使用環境に応じた適切な材料選定の要点について解説します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)






































