- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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機械を設計する上で、各部品に使用する材料を適正に選択することは非常に重要なことです。
設計者は、機械の用途や機能に見合う材料を適切に選定できるための材料知識を持つ必要があります。
今回は機械材料として、最も広く用いられる材料である炭素鋼の代表的な3つの鋼種について解説します。
鉄鋼材料は鉄(Fe)を主成分として、原材料である鉄鉱石に元々含まれるか、製鋼過程で添加する5種類の元素(5大元素)が入ったものです。
5大元素とは、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、の5種類です。
このうち、C, Si, Mnは鉄鋼材料の機械的性質を向上させる上で有用な成分です。
Siは降伏点と引張強さを増す効果があります。
Mnは靭性を高める効果があります。
P,Sは機械的性質を劣化させる有害成分(不純物)です。しかし製鋼過程である程度の混入を避けることができず、極力少なくすることで鉄鋼材料の品質維持を図っています。
純鉄(Fe)は軟らかくて強度が低いため、そのままでは機械構造部品として使用するのに適しません。
5大元素の中で、鉄鋼材料を様々な用途の機械材料として使うために、欠かすことのできない重要な役割を果たすのが炭素(C)なのです。
0.02 %~2.1%の範囲内でCを含有させたものを「炭素鋼」と呼び、機械構造部品用材料として広く使用されています。炭素鋼はさらに「軟鋼」と「硬鋼」に分類され、C量0.02%~0.3%のものを軟鋼、0.3%~2.1%のものを硬鋼といいます。
C量の低い軟鋼は、焼き入れによる硬度上昇効果はありません。一方、C量が0.3%を超える硬鋼は、溶接による入熱で割れやすくなる(焼割れ)ので、溶接構造品には向いていません。
(※焼き入れなど熱処理については、別コラム「炭素鋼とその熱処理」をご参照ください)
一般的に、C量を増やすほど強度が高く(引張強さが向上)、硬度も上がります。硬度が増すと硬いために加工性は低下します。
以下、汎用性が高く広く使用されている3種類の炭素鋼種について見ていきます
厚さが0.4~3.2mmの薄板です。家電製品の筐体などに広く使用されています。
炭素量は0.15%以下と炭素鋼の中では最も低く柔らかい材料です。柔らかく加工性が良好で、曲げ加工やプレス加工に適しています。溶接する場合は、連続溶接ではなくスポット溶接が適します。
一般用の”SPCC”と、絞り加工用の”SPCD”、深絞り用の”SPCE”の3種類があります。SPCDとSPCEは炭素量上限値を抑え、引張強さの規定を設けています。
薄板を折り曲げることで断面二次モーメントが大きくなるので同じ力が加わるときのたわみ量を数百分の1にすることができます。(片側折り曲げより両端折り曲げの方が、断面二次モーメントが大きくたわみが少ない)
筐体などある程度剛性を持たせたい場合は、SPCの曲げ加工性を活かして折り曲げ形状の設計にすると良いでしょう。
板材、丸棒、型鋼など汎用材として広く使用されています。
SSに3桁の数字がつきますが、これは引張強さを表します。
SS400は保証引張強さが400MPa(400N/mm2)以上であることを示しています。
他にSS330 ,SS490などがありますが、汎用性の点でSS400を使用することが大半です。
炭素量が低い軟鋼であり溶接性や加工性に優れ、特別な強度を必要としない通常の一般的構造物(フレーム、ケーシングなど)に使用します。
熱処理を施さないため、表面加工量が多い場合、内部応力の釣り合いが崩れて変形することがあるので、出来るだけ表面加工しないで、定尺物をそのまま構造部材に用いるように設計するのがうまい使い方です。
これも汎用性の高い鋼種で、SとCの間には、炭素含有百分率を百倍した数字が入ります。
例えば、S20Cは炭素含有量0.2%、S45Cは炭素含有量0.45%であることを示します。
S20CはSS400とほぼ同等の炭素含有量で軟鋼に属します。
S-C材としての有用性が高いのは硬鋼に属するS35C以上であり、なかでも最も広く使用されるのがS45Cです。
S45Cは、焼入れ焼戻し後の引張強さが685MPa以上と機械的性質に優れることから、軸など引張、圧縮、曲げ、捩り荷重を受ける部品に適用します。(熱処理が焼ならしの場合は、引張強度570MPa以上)
ただし、C量が0.45%と高い硬鋼であり、溶接部材への適用には適しません。
S-C材の加工性は特に問題ありませんが、熱処理後の加工量が多いと歪が発生するので、精度を要求する場合は、[切削加工⇒熱処理⇒研削仕上げ]の加工手順とすることもあります。
S-C材は、化学成分が規定された材料であり、化学成分規定の無いSS材よりも品質の高い材料です。したがって、SS400よりも価格は高くなります。
このように、各炭素鋼の特徴を知って、部材の用途や要求品質、価格あるいは加工や溶接の有無によって、炭素鋼を適切に使い分けることが肝要です。
次回の連載コラムでは、「鋳鍛造」の基礎知識について解説いたします。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)