光変調器の基本がわかる!光変調の方式や原理など前提知識からわかりやすく解説

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光ファイバー

光通信システムや精密計測には、光を高速かつ高精度で変調する技術が要求されます。
その代表例が「光変調器」(Optical Modulator)です。
本記事では、光変調の基本原理を整理したうえで、代表的な光変調器の種類・構造・用途を解説します。

1.光変調とは?

光変調技術は、光ファイバ通信における情報の伝送、レーザーの光学干渉計や原子時計に使用される「Pound-Drever-Hall法」(PDH法)と呼ばれる手法などに応用されています。

 

光変調のイメージ
【図1 光変調のイメージ】

 

変調とは、伝送したい情報(信号)を、伝送に適した波形(搬送波)に載せる操作のことです。

 

変調/復調のイメージ
【図2 変調/復調のイメージ】

 

光変調方式

変調は電気信号や光信号など、さまざまな波動信号に対して行われますが、ここでは、光波に対する光変調の方式について説明します。
以下は、一般的な光変調方式です。

  • 振幅変調AM: Amplitude Modulation): 光波の振幅を変化
  • 周波数変調FM: Frequency Modulation): 光波の周波数を変化
  • 位相変調PM: Phase Modulation): 光波の位相を変化
  • 偏波変調: 偏波状態(偏波面や位相差)を変化

 
また、光変調は直接変調と外部変調の2パターンがあります。

直接変調」とは、光源の光信号を変調させることです。例えば、半導体レーザーに供給する電流を変化させて出力光強度を変える場合があてはまります。
しかし、この方法は動作速度の限界などがあるため変調精度があまり良くないという欠点があります。この欠点を補うことができるのが、外部変調です。
外部変調」とは、光源の外部に設置した変調器に光信号を入力させて光変調することです。変調器を利用することで、精度の良い高速な変調が可能になるのです。

 

2.光変調の原理

光変調には「位相を変える方式」と「光強度(振幅)を変える方式」があります。なお、強度変調器の多くは干渉を利用し、位相変化を強度変化へ変換することで変調を実現しています。
ここでは、その基礎となるEA効果とEO効果について説明します。

 

(1)EA効果とEO効果

まず、光変調技術の前提となる「EA効果」と「EO効果」について説明します。

 

① EA効果

「EA効果」(Electroabsorption Effect、電界吸収効果)とは、外部の電界の影響を受けて光の吸収特性が変化する現象のことです。EA効果を生み出す素子として半導体があります。その半導体の持つ量子井戸構造に電界が加わると、エネルギーバンド構造が変化して光吸収量が変化する仕組みです。

EA効果は、強度変調器(EA変調器)などに利用されています。
また、EA効果を用いた変調器は、小型で高速変調を実現できるという利点を持つ一方で、信号の品質面で課題があります。

 

② EO効果

「EO効果」(Electro-optic Effect、電気光学効果)とは、外部の電界(電場)によって物質の屈折率に変化が生じる現象です。この現象は主に、誘電体の結晶に電界をかけた際に生じます。この現象を起こすための光学材料として、LiNbO3やGaAsなどが存在します。

屈折率が電界の強さに比例する時を「ポッケルス効果」、電界の強さの2乗に比例する時を「カー効果」と言います。
EO効果を用いると、光の位相変調を行うことができ、それを利用して強度変調も行えます。また、さらに応用すれば周波数変調や周波数シフトも可能です。
EA効果に比べて速度と信号品質の両立に適しているという利点を持っています。

 

(2)光変調の数式表現

EO効果を用いた変調を基に光変調の原理を見ていきましょう。

光変調器は、入力された光波Qの振幅や位相、周波数に変調信号Vに応じた変化を与えて、光波Rを出力します。

 

光変調器のイメージ
【図3 光変調器のイメージ】

 

入力光Qは光振幅、位相、周波数が一定のレーザー光とすると次のように表されます。

入力光Q・・・(1)

ただし、E0は入力光の電場振幅、ω0は入力光の角周波数、ϕ0​は初期位相です。
また、光周波数f0(Hz)と角周波数ω0の関係は、

入力光の光周波数 f0=ω0/2π と表されます。

一方で、光出力Rは次のように表されます。

光出力R・・・(2)

ただし、E(t)は光出力の振幅、φ0は光出力の位相、Kは変調器内での光の損失や位相変化を表す係数です。
ここで、入力光Qと出力光Rの周波数変化は次のように位相変化の微分で表されます。

周波数変化・・・(3)

一般的に光波は、振幅位相周波数といったパラメータで記述できます。
また、周波数f(t)は、ある時刻tでの周波数を指しており、「瞬時周波数」と呼ばれています。

 

(3)位相変調

結晶は、通常、a軸、b軸、c軸の3つの軸で表現されます。
ここで、次の図のような空間座標系(x軸、y軸、z軸)を考えてみます。

 

c軸、z軸、印加電界の向きの一致
【図4 c軸、z軸、印加電界の向きの一致】

 

図4のように、結晶軸(c軸)と印加電界、および光波の電界がすべて平行のとき、EO効果が最大になります。
このとき、屈折率変化Δniは次のように表されます。

屈折率変化・・・(4)

ただし、niは屈折率、rijは電気光学効果の大きさ、Ejは印加電界を表しており、添字1, 2, 3は、それぞれx軸, y軸, z軸方向を示しています。
実際には、時間的に変化する変調信号を印加します。そこで、図4のときに印加される電界をF(t)、電界を印加していないときの屈折率をn0とすると、屈折率は次のように表されます。

屈折率・・・(5)

屈折率・・・(6)

ここで、光速をcとした時に結晶中を伝播する光の速度はc/nになり、結晶内を光波が伝播する距離をLとすると、光波が結晶内を伝播する時間t伝播は次のようになります。

光波が結晶内を伝播する時間・・・(7)

結晶への入力光に対して出力光は遅れるので、式(7)、(8)を用いて、出力光Rは式(2)を用いて次のように計算されます。ただし、以下では、結晶内での光損失をKwとしています。

出力光・・・(8)

式(2)と式(8)の各項を比較すると、次のことが重要になります。

  • E(t)=E0となることから、理論的にはEO効果は光波の振幅(強度)は変化しない。しかし、実際には、光損失によって影響が与えられる場合もあることは注意しなければならない。
  • Kwは位相変調器の透過率を表している。
  • Φから、EO効果による屈折率変化Δn(t)によって位相が変化する。

つまり、結晶内の屈折率変化によって、光波の伝播に遅延が生じて位相がずれることがEO効果を用いた光位相変調の原理です。

 

(4)振幅変調と強度変調

EO効果を使用した振幅変調/強度変調には、マッハツェンダー変調器を用いるのが一般的です。
マッハツェンダー変調器の構造は次のようになっています。

 

マッハツェンダー変調器の構造
【図5 マッハツェンダー変調器の構造】

 

図5における光位相変調器1、2では、先に説明をしたように、変調信号によって位相差を発生させ、光信号同士を干渉させて光を出力します。
つまり、2つの光の位相差が0のときは強め合い、位相差がπのときは打ち消し合うため、この干渉を利用して出力光強度を変調できます。

では、もう少し詳しく数式で説明していきます。
光位相変調器1,2に印加した変調信号をそれぞれV1(t),V2(t)とすると、光位相変化ν1(t),ν2(t)は次のように表されます。
 

ν1(t)=K1V1(t) (光位相変調器1の位相変化) ・・・(9)

ν2(t)=K2V2(t) (光位相変調器2の位相変化) ・・・(10)

 
ただしK1,K2は各光位相変調器における位相変化係数(位相感度)です。
このとき式(2)から、光出力は次式となります。

 
光出力・・・(11)
 

ここで、図6の光位相変調器が材料吸収や構造による損失のないバランスの取れた理想的なマッハツェンダー構造であれば、入力光Qの振幅は1/√2倍に分配されて、合成の時にも1/√2倍となります。これは、光エネルギー的に見ると等分配されていることになります。よって、入力から出力での振幅変化は1/2となります。

 

光波の振幅変化
【図6 光波の振幅変化】

 

また、Push-Pull(プッシュプル)となる条件は、ν1(t)、ν2(t)の大きさが等しく、かつその符号が逆であるときなので、ν2(t)=-ν1(t)=g(t)、K1=K2=K/2とすると、式(11)は次のようになります。

プッシュプル(オイラーの公式を使用)・・・(12)

式(2)と比較すると、E(t)=E0cos[g(t)]となり、入力光の振幅に対してcos[g(t)]の振幅変調がなされていることが分かります。

 

3.光変調器の種類・構造・用途

実際に使用されることの多い光変調器の種類と、それらの構造・用途について簡単に紹介します。

 

(1)電気光学変調器 (EOM)

EOMの基本構造および原理は、上述の位相変調で説明した通りとなっています。
用途については位相変調が主な使い方ですが、実は、EO結晶に対して偏光を45°ほど傾けて入射して強度変調という使い方もできます。

 

(2)音響光学変調器(AOM)

AOMは主に、光の周波数シフトをして強度変調をする際に用いられます。
AOMの構造を図7に示します。ピエゾ素子等の圧電素子により超音波を励起すると、音響光学媒体中に周期的な屈折率変化(音波による回折格子)が形成されます。その際に、粗密波による回折格子構造ができて、入射光に角度が付き、高次光が発生します。

 

AOMの構造
【図7 AOMの構造】

 

 

(3)空間光変調器(SLM)

SLMは、図8のように、読み出し光の位相・偏波面・振幅・強度・伝播方向の分布を書き込み情報によって変調させるデバイスです。
動作は、アドレス部に入る書き込み情報によって光変調部の光学的特性が変化されて、その変化に伴い読み出し光が変調されます。つまり、出力光は、書き込み情報が反映された読み出し光になっています。

 

SLMの構造
【図8 SLMの構造】

 

 

(4)疑似振幅変調(ホログラム)

三次元空間の情報を記録したデバイスを「ホログラム」といいます。
よくSF映画などでも登場しています。図9に簡単な原理を示します。

 

ホログラムの原理
【図9 ホログラムの原理】

 

ホログラムは、物体からの反射光と参照光の干渉縞の強度分布(位相/振幅の情報が含まれている)を記録材料に記憶させたものです。記憶させた後に、同じ参照光を当てることで、記憶した情報を元に三次元の物体を平面で再生することができます。

実際のホログラムの研究では、ある光源からビームスプリッター等で光を分けて、片方を物体に、もう片方を参照光として利用することが多いです。

また、先に説明したSLMと合わせて使うこともあります。SLMは位相情報を細かく制御できるので、記憶の精度を向上させることができます。

 

(5)マッハツェンダー変調器

マッハツェンダー変調器の原理については、上述の振幅/強度変調で説明しましたので、ここではエネルギーに関して少し補足をします。

2つの光波が合成波となる際に、位相がずれていると打ち消し合う部分が出てきて干渉部分は見えなくなり、光出力は弱くなります。この光のエネルギーは周りに放射されていることになります。

 

4.まとめ

本記事では、光変調とは何かという基本的な考え方から出発し、EA効果およびEO効果を中心に光変調の原理を整理しました。さらに、電気光学変調器や音響光学変調器、マッハツェンダー変調器など、代表的な光変調器の構造と用途について紹介しました。

光変調は、位相・強度・周波数といった光の性質を制御する基盤技術であり、光通信や精密計測をはじめとする多くの分野で重要な役割を担っています。本記事を通じて、光変調技術の全体像を理解する一助となれば幸いです。

 

(アイアール技術者教育研究所 Y・F)

 

 


《引用文献、参考文献》


 

 

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