日本人の創造力とドライコミュニケーション技術

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日本の技術者と創造力

創造のプロセス

能動的あるいは受動的に入手された情報は我々の「関心」というフィルターにかけられます。
ここで情報は、シーズ(手段)とニーズ(目的)で構成されます。

こうしてフィルターにかけられて頭に入った関心情報は、構造化されて記憶されます。
一旦構造化された情報は、思考の過程で再構造化が繰り返され、その構造は次第に秩序だったものになっていきます。こうして構造化された情報が、コンセプトを生み出すための資源となるのです。

再構造化が繰り返され、秩序だった「ニーズ」群の中から幾つかの組み合わせ、つまり「目的コンセプト」が作り出され、それに合わせていくつかの「手段コンセプト」が生まれます。
その逆もあるし、それが同時に進行することもあるでしょう。

生まれた「目的コンセプト」と「手段コンセプト」はそれぞれが照合され、可能性の低いものは排除され、可能性の高いものが採用されます。
もし採用できるものがなければ、採用へ可能性が高いものが生まれるまで「構造化・抽出」が繰り返され、さらには関心情報の補充が行われます。

筋の良いコンセプトは、構造化されている情報の再構造化の繰り返しの結果生まれるものであるから、一定期間に何回繰り返せるかによって大きく影響を受けるということになります。
 

創造のプロセス
[図1. 創造のプロセス]

 

不足している創造力とドライ技術の活用

創造力の要は、情報の活用力です。

このような前提を置いたとき、人の創造力に影響を及ぼす因子の代表的なものを図に示してみました。

  • 記憶力
  • 技術
  • 時間
  • 緊張感
  • ニーズ

ここでいう「技術」とは、情報の検索・処理・生産・展開のことです。
むしろ、情報を活用して創造力を発揮する際に必要な「記憶力」と「時間」を補う技術として捉えたえた方が適切かもしれません。

この前提で、日本企業とアメリカ企業の両方で、実際に勤務した経験を基に日米を比較してみると、同じ情報でも「活用」における差はあまりにも大きいです。

造像は情報の活用(日本とアメリカの比較)
[図2. 情報の活用(日本とアメリカのイメージ)]

 

日本の創造力の根源は?このままでは日本の創造力は衰退へ?

アメリカの広い国土をうらやましがっても仕方がなく、それに起因したドライビングフォースは、日本では期待することができません。
逆に、日本の国土の狭さに起因するニーズを追求すれば良いのです。つまり、それが日本の創造力です。

小さな国には、大きな国ほど多様なニーズはありません。大きな国には必要でも、小さな国に不必要なものはたくさんあるのです。
逆に、小さな国にあるニーズ、つまり小さな国で必要なものは大きな国でも受け入れられます。小型自動車や、軽くて小さな電気・電子機器等も当てはまるでしょう。

密度と深さが日本の創造力の源といえると思います。
そして、日本のこの独創性の根源は、日本では情報が類まれに十分に共有できてきたからです。
つまり、日本が地理的に隔たれ、物理的に狭くて、高密度で均質な国であるということが、日本の独創性の根源と考えられます。

それに加えてもう一つ、「日本語」という存在も重要です。
日本語は、英語などと異なり、日本人(と日本語を習得した少数の外国人)だけが理解できる言語です。
日本語によるコミュニケーションは、(ほぼ)日本人の間だけの特権ともいえるものでした。
日本語は、日本という国を、知識・情報を発信することがないブラックホールにしていたのです。
 

日本はドライ技術を使うのが苦手?

いま人類は、大変都合の良い「インターネット」という道具を手に入れています。
ドライコミュニケーション技術の飛躍的な進歩によって、個人や組織間での情報の交換が容易かつ安価に行えるようになりました。

また、通信網で結ばれた無数のコンピューターに蓄えられた情報(ビッグデータ)に、どこからでも誰でもアクセスすることができます。国が広く人種の坩堝であるアメリカが、そのデメリットをIT技術で「あっと」いう間に克服してしまいました。
ということは、日本が持っていたメリットが、もはやメリットではなくなりつつあるともいえます。

日本の過去の発展は突き詰めれば、孤立した国土とその狭さ、そして概ね均一的な人種による、ウエットコミュニケーションがもたらしたものです。

いま日本はこのメリットを失い、逆にデメリットだけを背負っています。
アメリカは、そのデメリットを克服し、メリットを享受しています。

この差はあまりにも大き過ぎます。
過去の日本は情報の共有と伝承と面では、あらゆる点で恵まれていたのです。
我々には、いま起こっている事態の重大性が認識できているのでしょうか。
 

ドライ技術を使えば、生産性は飛躍的に上がる

日本は国土が狭いからウエットコミュニケーションによる商売ができます。
しかもどこに行ってもコンビニエンスストアはあるし、欲しいものが簡単に手に入れることができる大変便利な国です。

アメリカは多民族の集まりで、しかも国土がとてつもなく広いため、ウエットコミュニケーションが取りにくい国です。しかも、欲しいものがすぐに手に入るほど便利さは、日本ほどは無かったかもしれません。
だから、ドライコミュニケーション技術のインターネットが猛烈な勢いて進化していきました。

日本も、ドライコミュニケーションの便利さと効率の良さに気づいているはずです。
これまでのウエットコミュニケーションの良さを混ぜ合わせた「日本特有のネットビジネス」の発展が期待できるのでしょうか。

一方で、アメリカは日本が最も得意とするウエットコミュニケーションの効果に気づき、技術化させる研究が進んでいます。

ウェットコミュニケーションとドライコミュニケーション

 

(日本アイアール 知的財産活用研究所 N・Y)
 

※この連載コラムは、1997年4月に実施した、久里谷美雄先生(故人)による若手技術者向け研修のテキストを基に作成しています。
 

 

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