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インターロイキン-17A(IL-17A)は、尋常性乾癬、関節リウマチ、自己免疫性あるいは炎症性疾患との関連が示唆されている炎症性サイトカインの一つです。
2016年以降、IL-17AをターゲットとするIL-17A阻害薬がいくつか発売され、従来の医薬品より強力な作用があるとされています。
今回は、IL-17Aとそれに関連する医薬品を取り上げてみました。
目次
IL-17には、A~Fのファミリーが知られており、同様な作用をするとされています。
そのうち、「IL-17A」は乾癬等の疾患に深く関与していると考えられています。
IL-17Aは、ヘルパー細胞であるTh17細胞サブセットによって主に分泌される炎症性サイトカインの一つで、分子量約 21kDaのポリペプチドからなるホモ二量体の糖タンパク質です。Th17細胞の他にも、γδT細胞、CD8+ T細胞、NK細胞および自然リンパ球(ILC)なども活性化してIL-17を分泌させることができます。
IL-17Aは、線維芽細胞や上皮細胞、血管内皮細胞、マクロファージなど広範囲にわたる細胞に作用して、IL-6 や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)といった炎症性サイトカインやケモカインの誘導、好中球の遊走を行うことによって炎症を誘導します。
ちなみに、ファミリーの中でも「IL-17F」は、IL-17A と アミノ酸レベルで 50%と最も相同性が高く、同じTh17細胞から産生され、レセプターも共有し、同様の生理活性を有すると考えられています。
T細胞は骨髄で産生され、胸腺で細胞性免疫に関与するTh1細胞や、液性免疫・感染防御に関与するTh2細胞などの細胞へと分化します。
この2つの細胞から産生されるサイトカインは相互に抑制しあう関係にあり、このバランス(Th1/Th2バランス)が種々の病気に関与しているとされていましたが、この2つの細胞とは別に、IL-17Aを産生するヘルパーT細胞が2005年に発見され、「Th17細胞」と命名されました。
IL-17A受容体は、I型膜貫通タンパク質であり、上皮細胞、線維芽細胞、B細胞/T細胞、および単球細胞上など種々の細胞で恒常的に発現しています。
リガンドと同様に、受容体もファミリー(IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、IL-17RE)を形成しています。
IL-17ファミリーのうちA、C、Fの3種類が乾癬症に関与している(A、C、FはいずれもIL-17RA に結合する)と考えられており、これらが表皮角化細胞に作用すると、種々の炎症性サイトカインやケモカインを誘導して表皮の過形成や皮膚バリア機能の障害を惹起し、乾癬が生じるとされています。
実際、乾癬性皮膚病変では、Th17細胞およびそれらの下流で作用する分子、例えばIL-17AおよびIL-22の増加が報告されています。
また、IL-17A は関節リウマチ(RA)をはじめとする様々な自己免疫疾患、炎症性疾患やアレルギー反応、細菌感染防御に重要な役割を果たしていることが明らかとなっています。
尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、強直性脊椎炎などを効能効果とする、ヒト化抗ヒト IL-17A モノクローナル抗体製剤です。
炎症性サイトカインであるIL-17Aに対するヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、自己免疫疾患の発症に関与していると考えられるIL-17Aに結合して、IL-17Aの作用を中和すると考えられています。
尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬などに効果を有するヒト型抗ヒト IL-17A モノクローナル抗体製剤です。
乾癬の他、強直性脊椎炎や体軸性脊椎関節炎などの治療にも使われます。
セクキヌマブは、ヒト抗ヒトIL-17A モノクローナル抗体で、457個のアミノ酸残基からなる重鎖2分子及び215個のアミノ酸残基からなる軽鎖2分子で構成される糖タンパク質です。
炎症性サイトカインであるIL-17Aと結合し、IL-17AのIL-17受容体への結合を阻害することにより、その活性を中和するとされています。
尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を効能効果とする、世界初のヒト IL-17 受容体 A を認識する医薬品です。
遺伝子組換え完全ヒト型 IgG2 モノクローナル抗体で、442個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ2鎖)2本及び214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本から構成される糖タンパク質です。
ブロダルマブは、ヒト IL-17 受容体 Aに選択的に結合し、IL-17 ファミリーサイトカインの IL-17 受容体 A を介した生物活性を阻害することで、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症の臨床症状を改善するとされています。
以上、今回は「インターロイキン-17」と関連する医薬品について簡単にご説明しました。
次回は「インターロイキン-23」(IL-23)をご紹介します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)