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Grignard(グリニャール)反応は、有機合成の実験室ではよく用いられる化学反応です。
副生物が少なく、収率よくアルコール化合物などを得ることができる反応です。
1900年にGrignardによって発表された反応で、多くの研究・報告例がされており、医薬品の製法にも多く応用されています。ただし、非常に水分を嫌う反応ですので、実験器具や溶媒など水分の混入・付着のないように注意が必要な反応でもあります。
今回は、Grignard反応を利用した医薬品などをご紹介いたします。
目次
「Grignard反応」(グリニャール反応)とは、ハロゲン化合物にマグネシウムを作用させGrignard試薬とし、カルボニル化合物を作用させると、アルキル基が導入されたアルコール化合物を得ることができる反応です。
反応機構としては、Grignard試薬が求核剤としてカルボニル化合物と反応します。
Grignard試薬は二酸化炭素と反応してカルボン酸を、ニトリルと反応してケトンを生成します。
この他、求核剤として種々の化合物との反応が報告されています。
Grignardは、もともと数学を専攻していて学位もとっていたのですが、リヨン大学の化学の実験助手の職に就くことになり、化学の道に入り込んだという経緯をもっています。
ここで、Grignardは「バルビエ反応」で有名なバルビエ教授の指導を受けたことが、Grignard反応発見に大きな影響を受けることになりました。
「バルビエ反応」とは、ハロゲン化アルキルとカルボニル化合物の反応で、第二または第三アルコールを得る反応です。
Grignard反応と似ていますが、バルビエ反応がワンポット反応であるのに対して、Grignard反応は”Grignard試薬”を調整した後カルボニル化合物との反応を行うなどの違いがあります。
また、Grignard反応はカルボニル基が求電子剤として働くのに対して、バルビエ反応は通常、求核付加反応であることから、水溶媒中の反応が可能となっています。
Grignardは、バルビエの指示でハロゲン化アルキルとカルボニル化合物の反応を検討していました。
当初亜鉛を用いていましたがうまくいきませんでした。
特にジアルキル亜鉛は空気に触れると発火するなど取り扱いが難しく、反応性も低かったためです。
この検討は、一時中断などしていましたが、Grignardは、マグネシウムを用いること、さらにマグネシウムとハロゲン化アルキルを反応させた”Grignard試薬”を調整したのちに、カルボニル化合物との反応を行うことを見出し、さらに一般的な合成法として確立させました。
Grignardは、1912年にノーベル賞を受賞しています。
Grignard反応が用いられた報告をいくつかご紹介いたします。
フルコナゾールは、深在性真菌症治療剤で、カンジダ属及びクリプトコッカス属による種々の感染症(呼吸器真菌症、消化管真菌症、尿路真菌症等々)に用いられています。
フルコナゾールの製法は、いくつか報告がされていますが、グリニャール反応を用いた報告もされています。
グリニャール試薬を形成し、1,3-ジクロロアセトンの添加による抗真菌剤フルコナゾールの中間体を連続合成する方法(フローケミストリー)の報告で、従来のフルコナゾールに比べて、短時間・高収率でフルコナゾール中間体が得られたとしています。
iPrMgCl・LiClは、「ターボGrignard試薬」と呼ばれ、金属-ハロゲン交換もしくはMg挿入反応が加速され、しかもGrignard試薬の低温調製が可能、副反応の抑制などの特性があるとされています。
1当量の塩化リチウム(LiCl)を添加することで、iPrのアニオン性が向上するためと考えられています。
ベラプロストナトリウムは、経口投与可能な安定プロスタグランジン誘導体として始めた実用化された、慢性動脈閉塞症などの難治性動脈血流障害に治療効果のある薬として知られています。
ベラプロストナトリウムの基本骨格であるシクロペンタベンゾフランの合成に、ブロモフェノキシシクロペンテン誘導体のグリニャール試薬による金属ハロゲン交換反応を利用した環化反応の報告がされています。
タクロリムス中間体の製法にもグリニャール反応が検討されています。
ビタミンKの中間体合成にもグリニャール反応が検討されています。
アルキル側鎖を有するジエンエポキシドに対して、塩化鉄触媒の存在下、選択的に置換反応が進行し、ホモアルコールを得ている報告があります。
家庭用殺虫剤や農薬として用いられているピレスロイド系化合物の中間体 3-クロロ-2-メチルビフェニル の工業的生産の検討の報告があります。
J-PlatPatを用いて、Grignard反応を検索してみました。
(※いずれも2020年10月における検索結果です)
以下、いくつか特許に記載されているGrignard反応の例をご紹介いたします。
高コレステロール症に用いられるスタチン化合物の中間体を得る製法特許です。
グリニャール試薬を調製した後、トリメトキシボランとグリニャール反応させて、アラルキルボロン酸を得ています。
うつ病などに用いられる(エス)シタロプラムの中間体の合成にグリニャール反応を用いています。
JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」を用いて、Grignard反応を検索してみました。
この検索結果の内容としては、ビオチン(ビタミンB7)に関する製法研究や、医薬品の中間体として用いられるデカヒドロイソキノリンの合成に関する文献などが見受けられました。
ご興味のある方は、ぜひご自身で検索して確認してみてください。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)