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「エリスリトール」はカロリーがゼロの甘味料として知られています。
本稿ではエリスリトールに焦点をあてつつ、これを含む糖アルコールについて解説します。
「糖アルコール」はショ糖やグルコース(ブドウ糖)等の糖類が持つカルボニル基を還元して得られる鎖状の多価アルコールと定義されます。
原料となる糖類の構造を、グルコースを例に、確認してみましょう。
図1は水溶液中でのグルコースの平衡状態を示したものです。
【図1 水溶液中でのグルコースの平衡状態 ※画像引用1)】
グルコースには高い反応性を持つアルデヒドの状態が僅かながら存在し、これが安定性を損なう要因にもなります。従って、グルコースを還元して官能基としてはアルコール基のみの状態、即ち糖アルコールに転換すれば安定性が高まります。
還元によって得られる糖アルコールには、原料の糖と比べて下記の特徴があることが知られています。
表1は糖アルコールの中でグルコースを原料とするものについて、その性状を比較したものです。
【表1 糖アルコールの性状の比較2)】
表1でエリスリトールはカロリーがゼロとなっています。厳密にはゼロではなく0.2kcal/gなのですが、糖よりも低いだけではなく、他の糖アルコールと比較しても低い値です。エリスリトールが糖アルコールの中で甘味料として特に高い評価を得ている要因となっています。
これは図2に示すように、エリスリトールは摂取された90%以上が胃で吸収され、吸収された後そのまま尿中へ排泄されるためです。
【図2 体内に摂取されたエリスリトールの代謝 ※画像引用3)】
融解潜熱についても、エリスリトールは糖アルコール中で高い値を持つことが表1から分かります。
328J/gという値は水の334J/gに匹敵する高い水準です。エリスリトールの融点は120℃ですから、氷水蓄熱より高温での潜熱蓄熱材料として利用できる可能性があります。
図3に示すように、(株)神鋼環境ソリューションはエリスリトールを蓄熱材として用いて、200℃程度の廃熱を利用して蓄熱して、放熱時には90℃以上の温水を生成するシステムの試験を実施しています4)。
【図3 エリスリトールを用いた熱輸送システム ※画像引用4)】
エリスリトールは甘味料としてだけではなく、ユニークな特性を持つ工業材料としても活躍の場を広げるものと予想されます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》