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LTspiceで学ぶシグナル・パワーインテグリティ設計・解析の基礎(セミナー)
2024/12/12(木)10:00~17:00
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電子回路部品の一つである「電気二重層コンデンサ」(「電気二重層キャパシタ」とも呼びます)は、当連載の「コンデンサの基礎知識」の回でも紹介しましたが、通常のコンデンサと二次電池との中間的な性格をもつ特殊タイプのコンデンサです。
身近なところでは、電子機器のメモリーバックアップ用電源として用いられています。
例えば、ハードディスクレコーダーが、一時的な停電があっても予約録画情報が消えないのは、電気二重層コンデンサの働きなのです。
今回は、電気二重層コンデンサの基本についてみていきましょう。
バッテリは化学反応によって電荷を蓄えるのに対して、電気二重層コンデンサは、電解液に浸した活性炭電極の表面にイオンを吸着させ、電気二重層(Electric Double Layer)を形成することで電荷を蓄えます。
このため、バッテリでは数時間を要する充電も、電気二重層キャパシタは数秒で実現します。
また、充電回数が有限であるバッテリと異なり、電気二重層キャパシタは原理的に無制限です。
図1(a)(b)(c)は、電気二重層コンデンサの原理を示す図です。
【図1(a)充電時】
図1(a)は、充電時を示す図です。電気二重層コンデンサは、活性炭電極と電解液で構成され、対面電極のコンデンサ構造をしています。
電解液の中で、プラスイオンはマイナス電極に、マイナスイオンはプラス電極に移動します。
【図1(b)充電完了時】
充電完了時には、図1(b)のように、各電極の界面に電気二重層が形成されます。
電気二重層は、2つの異なる物質が接する界面には、どちらかの物質中で荷電粒子が移動可能であれば必ず形成されます。
例えば、固体として活性炭、液体として電解液を用いて、それらを接触させるとその界面にプラス、マイナスの電荷が極めて短い距離を隔てて相対的に分布します。
【図1(c)放電時】
放電時は、図1(c)のように、負荷を接続して電荷を放電するとイオンは電極を離れます。
充電電圧の低下に従って二重層に蓄積された電荷は拡散し、初期の状態に戻ります。
電気二重層コンデンサの充放電は、二次電池のように化学反応を利用していないので、充放電による劣化は発生せず充放電回数の制限はありません。
図2は、電気二重層コンデンサの性能を他の蓄電デバイスと比較した表です。
電気二重層コンデンサ | アルミ電解コンデンサ | リチウムイオン電池 | |
バックアップ能力 | 〇 | △ | ◎ |
使用温度 | -40~85℃ | -40~125℃ | -20~60℃ |
充電時間 | 数秒 | 数秒 | 数時間 |
充放電回数 | 100000回以上 | 100000回以上 | 数1000回 |
充放電時の制限 | 無し | 無し | 有り |
【図2 電気二重層コンデンサ/アルミ電解コンデンサ/リチウムイオン電池の性能比較】
電気二重層コンデンサは、図2のように、バックアップ能力としては、アルミ電解コンデンサとリチウムイオン電池の中間程度です。具体的には、アルミ電解コンデンサの1000倍程度で、リチウムイオン電池の1/100程度になります。
また、リチウムイオン電池のように、充放電時の制限がないので、充放電用の回路を用意しなくて済みます。他にも、充放電サイクル数が特性劣化に殆ど影響しない、電池のような規制(回収、廃棄)の対象外などの特徴があります。
電気二重層キャパシタには、静電容量が1F以下の小型製品から、2000Fを超える大型製品まで幅広いバリエーションがあります。形状も表面実装型からネジ端子形までいろいろあります。
小型製品と大型製品では用途も大きく変わってきます。
以前から市場を確立している小型・中型の製品では、携帯電話やスマートフォン、AV機器、玩具やゲーム機などに広く使用されており、その用途はリアルタイムクロックやメモリのバックアップ電源用が中心になっています。OA機器のプリンタやプロジェクタ向けでは、高速起動や省エネ化など、性能向上を目的とした補助電源用としても使われています。
一方の大型製品は、主に電力の貯蔵と安定化、電力アシスト、バックアップ電源、エネルギー回生などに使われており、特にエネルギー問題への意識の高まりから、電気二重層キャパシタの特徴を活かした「省エネ型機器」の開発が各分野で進められています。例えば、風力発電や太陽光発電にも、二次電池との組み合わせにより特性を補完し合う事例が見られるようになってきました。
今後も電気二重層コンデンサは、性能の向上と共に利用範囲が拡大していくと思われます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)