3分でわかる技術の超キホン 崩壊剤とは?主な種類と選択のポイント[医薬品添加物の解説②]

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医薬品添加物「崩壊剤」の解説

例えば、錠剤を飲んだ後に、胃や腸で錠剤そのままの形でいると、医薬品成分が閉じ込められた状態となり、当然薬としては効かないことになります。

消化管内で錠剤の形が崩れ、細かくなって、成分が溶けだすようにする必要がありますが、そのために配合される添加物が「崩壊剤」です。
今回は、その崩壊剤についてまとめてみました。

1.崩壊剤とは?

錠剤は水とともに服用された後、胃内でその形状を崩し、有効成分が溶け出(溶出)すことによって、消化管から吸収されるようになります。

このとき、固形の錠剤が水分を吸収して、崩れやすくする作用をもつものを「崩壊剤」といいます。

したがって、水を吸って膨潤し、錠剤を崩壊させ、有効成分の溶出を容易にする性質のあるものが、崩壊剤として使用されることになります。
 

2.崩壊剤の作用機序

崩壊剤は、水分を吸って膨張し、錠剤を崩壊させますが、その崩壊パターンは膨潤(swelling)毛管現象(wicking)の2つに大きく分けられます。
 

(1)膨潤型(swelling)

「膨潤」とは、崩壊剤粒子が吸水により膨潤し、その膨潤力により錠剤のマトリックス構造を破壊して、錠剤を崩壊させる機構をいいます。

カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウムなどが、この膨潤型と考えられています。

膨潤量(どのぐらい吸収することができるか)、膨潤速度(錠剤を強力に破壊できるか)という2つの性質のバランスによって使い分けられています。
 

(2)毛管現象、導水型(wicking)

崩壊剤を通して、錠剤内部にまで水分を吸収・膨潤し、粒子間の結合力を低下させて、崩壊させる機構をいいます。
導水型(wicking)の場合、膨潤性よりも水を錠剤中に吸い込む性能が求められます。
ポイントとしては、水を吸いあげる量と、ぬれの速さが挙げられます。

一般的には、錠剤表面に均一に崩壊剤が存在している必要があるため、膨潤型(swelling)の崩壊剤よりも添加量が多くなる傾向があるようです。

結晶セルロース、カルメロースは、導水型と考えられています。
比較的水溶性の乏しい薬剤に使ったほうか効果的とされています。
 

3.主な崩壊剤

崩壊剤としては、主にセルロース誘導体、デンプン類が挙げられます。
デンプン類は、化学的に修飾されたデンプンと非修飾のデンプンがあります。

以下、代表的な崩壊剤をご紹介します。
 

低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)

ヒドロキシプロピルセルロース

少量のヒドロキシプロポキシ基をグルコース環に導入したもので、白色~帯黄白色の粉末又は粒です。
非イオン性で、薬物との相互作用を起こしにくく、安定性があります
最大使用量は経口投与で 1.4gとなっています。

ヒドロキシプロポキシ基(-OCH2CH(OH)CH3)を5~16%を含むものを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)と称し、低置換度にすることにより、アルコールには不溶となり、水に不溶で膨潤する性質(吸水性膨潤性)となり、これら物性を応用し、現在、広く医薬品の錠剤や顆粒剤の製造に用いられており、固形製剤の主に崩壊剤として使用されます。
L-HPCには、種々の置換度、粒子形状をもつタイプがあり、粒子の大きさや形を変えると結合性が変化しますので、用途に合わせて使い分けがされます。

崩壊剤の他、可溶(化)剤、結合剤、コーティング剤、分散剤、賦形剤としても使用されます。
 

カルメロース(カルボキシメチルセルロース・CMC)

カルボキシメチルセルロース

セルロースのカルボキシメチルエーテルで、白色の粉末で、吸湿性があります。
水を加えると膨潤して懸濁液になります。崩壊剤としての添加量は、通常2~20%程度です。
カルメロースは、典型的な導水型(wicking)に属する崩壊剤です。

この崩壊剤は、どちらかというと比較的水溶性の乏しい薬剤に使った方が効果的とされています。
また、一般的には、顆粒外添加のほうが、顆粒内添加よりも優れた崩壊性を示すようです。
 

カルメロースカルシウム

カルメロースカルシウムは、別名、「カルボキシメチルセルロースカルシウム」「CMC カルシウム」「繊維素グリコール酸カルシウム・などとも呼ばれています。

水不溶性と水和能をもたらすCa のキレート構造を含んだ化学修飾されたセルロースであって、急速に膨潤に必要な水を吸収し、その結果、良好な短い崩壊時間を示すとされています。
カルメロースとは異なり、膨潤(swelling)型の崩壊剤です。また、増粘剤や結合剤としての機能もあります。

添加量は、通常2~20%程度で、最大使用量は、経口投与 2.5g、舌下適用 15mgとなっています。

医薬品製剤の処方としては、生薬である百草末を用いた錠剤調整を検討した文献では、カルメロースカルシウムを用いることにより崩壊性が確保できたとの報告がされています。
 

トウモロコシデンプン

トウモロコシを原料にとした純度の高いデンプン(コーンスターチ)をいいます。
白色、無臭で、水またはエタノールにほとんど溶けず、化学的安定性が高くて安価であるという利点があります。

流動性、圧縮成形性が低いため、湿式造粒で使用されることが多いようです。
緩和な崩壊剤であるため、速崩壊性は期待できません。

配合量としては、通常5~30%で、直接打錠処方において、崩壊性不足の場合は、トウモロコシデンプンを使用すると崩壊性が良好となる場合がある。
最大使用量は経口投与で 19gです。崩壊剤の他、滑沢剤、結合剤、分散剤、賦形剤、流動化剤、コーテイング剤などとしても使用されます。
 

部分アルファー化デンプン

トウモロコシデンプンを水と常圧下又は加圧下で加熱することにより、でんぷん粒を部分的にアルファー化(糊化・こか)したものを乾燥したものです。
白色~帯黄白色の粉末で、無味無臭です。水を吸して膨潤し、白濁した液(糊状)になります。
化学的安定性が高く、吸湿性があります。

部分アルファー化デンプンの成形性は、結晶セルロースに比べるとやや劣る傾向があるものの、自重の約4倍の水を速やかに吸収する特徴を示し、食感についても比較的滑らかな舌触りであるとされています。

崩壊剤の他に、結合剤、コーティング剤、賦形剤としても使用されます。
最大使用量は、経口投与で、1500mgとなっています。

 

4.スーパー崩壊剤とは?

膨潤(swelling)型の崩壊剤の中でも、特に強力な吸水、膨潤機能をもつものを「スーパー崩壊剤」といい、その代表的なものとして、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンが挙げられます。

少量で崩壊させることができることから、多くの製剤に用いられており、特に口腔内速崩壊錠に多く用いられています。
 

クロスカルメロースナトリウム

セルロースの多価カルボキシメチルエーテル架橋物のナトリウム塩でもあります。
白色~帯黄白色の流動性のある粉末です。大量の水を吸収して膨潤します。

添加量としては、2~8%が適しているとされ、最大使用量は、経口投与300mgです。
崩壊剤の他に、賦形剤、崩壊助剤としても使用されます。
 

カルボキシメチルスターチナトリウム (Na-CMS)

カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(SSG)ともいいます。
デンプンのカルボキシメチルエーテルナトリウム塩で、白色の粉末、特異な塩味を呈します。

添加量としては、2~8%が適しているとされ、最大使用量は、経口投与 320mです。
 

クロスポビドン、ポリビニルポリピロリドン、PVPP

ポリビニルポリピロリドン

N-ビニル-2-ピロリドンの架橋ホモポリマーで、架橋の多いポリビニルピロリドンです。
ポリビニルピロリドン(PVP、ポビドン)が水溶性であるのに対して、クロスポビドンは水に不溶となります。
クロスポビドンは、水を吸収し急速に膨張する性質となり崩壊剤になります。

タイプA及びタイプBの粒度に依存する 2 種類のタイプがあります。
最大使用量は、経口投与120mgとなっています。

 

5.崩壊剤選択のポイント

製剤設計を行う上で、崩壊剤を選ぶひとつの基準としては、例えば、薬物との相性、錠剤の崩壊性を考慮して、異なるタイプの崩壊剤を用いた錠剤の崩壊性から崩壊剤のタイプを選択することが考えられます。

また、崩壊速度を決定する要因としては、どのくらいの吸水量であるかより、どのくらいの速さで吸水できるか、すなわち、ぬれの速さが重要になります。

なお、崩壊剤のような不溶性物質を多く含有する錠剤、特にOD錠は、服用者がざらつき感を感じる可能性があるため、不溶性物質の含有量は最小限に調整すべきと考えられます。

 

6.崩壊剤に関する特許・文献を検索してみると?

(※いずれも2020年7月時点での検索結果です)

(1)崩壊剤に関する特許検索

j-Platpatを用いて崩壊剤の特許を調査してみました。

  • キーワード検索: [崩壊剤/CL] ⇒ 3302件
  • [崩壊剤/CL]*[A61K/FI] ⇒ 2978件

この2948件の内容をざっとみたところ、各種医薬品製剤の組成物、口腔内崩壊錠の特許が多数見られました。

崩壊剤には、Fターム4C076FF06があります

  • Fターム検索: [4C076FF06/FT] ⇒ 4106件

この4106件を年代別グラフにしてみると、次のようになります。
4106件を年代別グラフ

また分野別にみてみると、やはり医薬分野が圧倒的に多いです。(2001年以降)

分野(FI) 件数
A61 2985
C07 308
A23 175
C08 74
C12 50
B01 40

 

《崩壊剤別の件数》

上記の崩壊剤が請求範囲に記載されている特許を調べてみました。

  • 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)
[4C076FF06/FT]*[低置換度ヒドロキシプロピルセルロース/CL+L-HPC/CL] ⇒ 346件

  • カルメロース(カルボキシメチルセルロース・CMC)
[4C076FF06/FT]*[カルメロース/CL+カルボキシメチルセルロース/CL +CMC/CL] ⇒ 1086件

  • カルメロースカルシウム
[4C076FF06/FT]*[カルメロースカルシウム/CL] ⇒ 159件

  • トウモロコシデンプン
[4C076FF06/FT]*[トウモロコシデンプン/CL] ⇒ 179件

  • 部分アルファー化デンプン
[4C076FF06/FT]*[部分アルファー化デンプン/CL] ⇒ 62件

  • クロスカルメロースナトリウム
[4C076FF06/FT]*[クロスカルメロースナトリウム/CL] ⇒ 567件

  • カルボキシメチルスターチナトリウム(Na-CMS)
[4C076FF06/FT]*[カルボキシメチルスターチナトリウム/CL+Na-CMS/CL] ⇒ 164件

  • クロスポビドン
[4C076FF06/FT]*[クロスポビドン/CL] ⇒ 611件

医薬品組成物、錠剤の製法、口腔内崩壊錠などの特許が多数ありました。
このように崩壊剤に関する特許は多数ヒットします。
実際の調査では、目的によってさらなる絞り込みが必要と思われます。

 

(2)崩壊剤に関する文献検索

文献データベース「J-STAGE」を用いて文献検索を行ってみました。

  • 全文検索: 崩壊剤   →299件
  • 全文検索: 崩壊剤 * 医薬   →209件
  • 全文検索: 崩壊剤 * 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース  →15件
  • 全文検索: 崩壊剤 * カルメロース   →9件
  • 全文検索: 崩壊剤 * トウモロコシデンプン   →17件
  • 全文検索: 崩壊剤 * 部分アルファー化デンプン   →8件
  • 全文検索: 崩壊剤 * クロスカルメロースナトリウム   →11件
  • 全文検索: 崩壊剤 * カルボキシメチルスターチナトリウム   →3件
  • 全文検索: 崩壊剤 * クロスポビドン   →34件

文献のタイトル・キーワードとして「崩壊剤の膨潤効果」「崩壊機構」「崩壊性の向上」等々の文献がヒットしました。
具体的な内容について興味がある方は、ぜひ実際にデータベースを検索して確認してみてください。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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