デザインレビュー(DR)の質を高めるためのヒント
DR(デザインレビュー、Design Review)の質を向上することは、製品の競争力を高めたり、市場不具合を未然防止したりするためだけでなく、技術の伝承のためにも重要です。
今回のコラムでは、DRの質の向上のためのヒントをいくつかご紹介したいと思います。
目次
1.開発ステージごとのDRの主眼
DRの呼び方や分け方は様々ですが、各開発ステージに対応する4つのDR(①~④)におけるDRの主眼について確認したいと思います。
図1は、DR①~④のタイミングを、製品の開発・市場展開における品質マネジメントの流れに対応させて示したものです。
【図1 DRと品質マネジメントシステムとの関係】
開発ステージに応じた各DRでの主眼は以下のようになります。
DR①(開発初期のDR)
製品に反映すべき顧客要求、過去のトラブルに関する改良、社内で企画された製品競争力向上のためのアイデア、これらに関する開発目標項目ができる限り数値化されているかを協議・確認しなければなりません。
DR②(開発中のDR)
机上検討(シミュレーションなど)や実験評価により確認されたことや、新たに分かったことを協議して、当初の計画を更新します。データベースでの議論が重要です。
DR③(製品市場投入前のDR)
各開発目標項目に対して、理論的検証と実験的検証が充分できているかを協議します。
不足していると思われる項目については、量産開始までに最低行わなければならない活動や、リスクについて討議しなければなりません。
このような討議をベースにして市場投入の決心を行います。
DR④(量産開始後のDR)
DR③で行った仮説に対しての検証や、市場で想定外のことが起きていないかの確認・議論を行います。
製品に盛り込んだ過去トラブルへの対応策については、効果を確かめます。
2.DRの参加メンバーの選び方
DRには開発当事者、関係部署メンバー、マネジメントメンバーなどが参加しますが、予定される討議に応じて実際に議論を行うエキスパートに加え、経験の浅いメンバーも参加させることが有効です。
DRでどのような資料が用いられ、どのように説明され、どのような議論が行われたかを知ることは、貴重な体験となります。
3.DRにおける説明と討議のあり方
図2は競争力のある製品を生むために、エンジニア本人と関係者がどのようにコミュニケーションを行わなければならないかをDRに限らずまとめたものですが、DRにおいては、この図で表した全ての要素が関係していることが分かると思います。
DR資料の説明者は、参加者に現状や討議のポイントを充分に理解してもらえるように、討議データの見える化をしなければなりません。
実験データの例で言えば、生データそのものを紹介することが有効な場合もある一方で、解析・整理したビジュアルな資料でなければ参加者が理解できない場合もあります。
【図2 エンジニアの活動と競争力のある製品】
そして重要となるのが、オープンな会話です。
DRの参加者には、開発実務者とともに他部門も含め、開発の方向性などの戦略決定を行うメンバーも含まれます。そのようなメンバーの参加により、広い知見や技術的知識に基づき、開発当事者とはべつの視点での考えや、潜在的リスクについての討議を行うことが可能になります。
一方、DRにおいて遠慮の無いオープンな議論ができないような雰囲気が有ると、いくら知見のあるメンバーが参加しても、悪いデータを出すこと自体に消極性が発生します。
悪いデータを分かりやすく見える化して、オープンな議論を行うためには、参加者が信頼し合え、風通しの良い関係であることが必要です。
4.開発目標値の更新
DR①の段階で、開発目標はなるべく具体的な数値にしておかなければなりません。
その一方で、開発を進めていかないと目標に関係する、あるいは目標を保証するための設計変数や工程変数が分からない場合もあります。
製品に対する要求値がシステムの開発目標値から定められる場合には、システムの開発初期においては製品に対する要求値を全て詳細に定めることができず、システムの開発評価が進んだ段階で初めて製品への要求値が数値化できる場合もあります。
分解された開発目標値の更新を適切に行ってフォローをしていかないと、分解された目標を達成したとしても、大元の目標が達成できないという事態が生じる可能性が高まります。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)