細胞株培養・開発を成功させるためのヒント|良質な細胞株が切り拓くバイオ医薬品の未来

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ザルトリウス・ジャパン・細胞株培養の解説

細胞株コラム挿絵

動物細胞、ウイルス、そしてバクテリアなどの生物によって生産される、抗体などタンパク質を主成分としたバイオ医薬品。遺伝子組み換えや細胞の大量培養など、多様なバイオテクノロジーを駆使し、ガンや自己免疫疾患など多くの病気の治療薬に活用されています。
バイオ医薬品は分子量が大きく、大変複雑な構造をしており、製法の確立には高い技術が必要であることも特徴の一つです。

なぜバイオ医薬品なのか?それは薬効が高い上に副作用も少なく、適用できる病気に広い範囲で利用できるというメリットがあるから。
とはいえ、これまでの低分子医薬品とは異なり化学合成ではなく、生物を用いて製造するので、有効成分の安定した品質と安全性の確保が難しく、製造価格も高いという課題があることも事実。

このコラムでは、バイオ医薬品の開発に興味をお持ちの方に向け、バイオ医薬品の現在と未来、そしてそれに不可欠である「細胞株」について取り上げます。

そもそも、細胞株とは

生体や生物組織から、特定の細胞を分離し、ある目的を達成するため何らかの手を加え、一定の性質を保ったまま、長期間にわたって安定的に増殖・培養できる状態にしたものが「細胞株」です。

抗体医薬などのバイオ医薬品の多くは、細胞株を用いて製造されています。

この細胞株を使って、化合物の活性や選択性などのスクリーニング・試験を行います。さらに細胞株は動物実験などの前臨床試験に基づいて選抜された開発化合物や、上市後のバイオ医薬品の大スケールでの実製造まで担っています。

このように、細胞株はバイオ医薬品の探索と開発、そして製造に必要不可欠な存在となっています。

 

バイオ医薬品の7割以上を占めるCHO細胞

こうした細胞株は哺乳動物由来のもの、いわゆる「CHO系細胞」と言われるものが、バイオ医薬品の開発などでは7割以上も使用されています

「CHO細胞」とは、Chinese hamster ovary:チャイニーズハムスター卵巣細胞のこと。その歴史は古く、今からさかのぼること半世紀以上前の1957年に、CHO細胞が初めて実験に使われたのでした。

 

CHO細胞が主流なわけ

バイオ医薬品の代表的な存在である抗体医薬は、糖鎖などで修飾された複雑な構造を有するタンパク質であるため、大腸菌などの下等真核生物では生産できない場合が多く、実質的に動物由来の細胞である必要があります。

また、細胞株は安定的に増殖し、製造や実験、試験に活用できなければ意味がありません。均一で良質な細胞株が、開発をはじめ、実験や試験の性能を担保するからです。

そういった観点からCHO細胞は、ほかの細胞類に比べ、効率よく安定して培養できることが長年の研究から明らかとなり、広く使用されるようになりました。

効率よく培養がされるようになれば、広がる世界もまた違ってくるものです。
現在はヒト由来の細胞の培養技術も日進月歩で進化を遂げていますが、その特定の細胞株を培養する培養元としてCHO細胞が使われているという事もあります。

こうした点から、CHO系細胞はバイオ医薬品には欠かせないものとなっているのです。

 

安定的とはいえ、リスクもある《CHO細胞とコンタミ問題》

ほかの細胞類に比較して効率よく培養することができ、安定性もあるとされたCHO細胞ですが、それでもリスクはあります。その一つがコンタミネーション(略称「コンタミ」、混在・混入の意味)の問題です。

コンタミとは異質物が混入することを示します。コンタミは培養された株の品質を低下させ、それを基に行った試験や実験、製造の結果が芳しいものではないことは想像に難くありませんよね。

細胞株のコンタミは目で見て判断できるものでしょうか。細菌などの混入などは一見してわかるのですが、何の細菌が混入して希望の細胞株の質を落としているのかを目視で瞬時に判断することはもちろん不可能です。細胞株のコンタミを判断するためには、コンタミの発生から何が混在してしまったか、いつコンタミが発生したのかを事細かに追うことに加え、遺伝子解析など別途マンパワーや作業も必要となります。

ですから、コンタミを前提にして、これらをいかに少なくするか、もしくはリスクマネジメントをしっかりと行い、起こりうるリスクを回避することが一番の近道と言えるでしょう。

なぜそのリスクが起こったかを検証するのは細胞株培養の研究者や技術者には必要な情報ではあるけれど、実務的には知識レベルで知っておくことが大切なので、できればそうしたストレスのない環境下でターゲットとする細胞株が欲しいものですよね。

 

現代に求められる細胞株培養とは

現代社会に求められるのは、やはり何と言ってもスピード感と言えそうです。さらに省力化と自動化なども挙げられるでしょう。

例えば新型コロナウイルスのように変異も激しい上に感染力もスピードを増すようなものに対して、いまのところ特効薬の無い私たちができることは、対応したワクチンの製造を質も量も徐々に増加させつつ加速し、変異の素早さに対応・対抗すること。

そのためには、品質の管理も効率的に行われることや、マンパワーを省略して対応するなど、さまざまな視点での効率化の模索が求められます。

また、細胞株培養の現場は専門会社があるほど分業制が進んでいます。
どの世界でも、小ロットで作業を依頼すれば、おおむね、高くつくものです。作業を分化すればその分、別の意味でのリスクも発生します。

現代社会はあらゆる面で失敗や渋滞などが許されないほど、時間的に猶予が無くなってきています。考えられるリスクも含めての技術開発や要素研究などが求められ、予算と納期に組み込まれるため、研究者や技術者は本当に大変な状況にあると考えています。
予算と納期は、研究・技術のモチベーションのブースターになる一方、当事者に大きな負のストレスになりかねない、”もろ刃の剣“と言えるのです。
 

 

リスクを回避し、マネジメントするものが技術を制す

人々はそうしたリスクにも技術力で対抗し、克服してきました。
細胞株培養からその品質のチェックまで、定量的に良いものだけを製造し、抽出するようなものが次々に開発され、多くの人に使われ洗練されることでさらにその性能を上げていくという事実もあります。

今回ご紹介するザルトリウス・ジャパンのウェビナーは、こうした細胞株培養に関して技術的に中級レベル以上の知識を有する方を対象にしていますが、初級者でも知っておくべきリスクなどが学べます。
欧米における細胞株培養の現状や、現場におけるリスク回避など、日本語字幕付きで紹介しています。実用事例や実験結果をはじめ、実践的な内容を盛り込んでいることから、細胞培養やバイオ医薬品の幅広い分野に関わる技術者の皆さまに受講いただくことをおすすめします。

 

(アイアール技術者教育研究所 M・I)
 

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ザルトリウス・ジャパン・細胞株培養の解説

 
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