3分でわかる技術の超キホン クロスカップリング反応とは②(電子材料分野での利用例)
クロスカップリング反応は、いろいろな分野で活用されています。
具体的に各分野のクロスカップリング反応の利用例を取り上げてみます。
1.液晶ディスプレイ
液晶ディスフレイは、ガラス基板の間に液晶分子が封入されており、液晶の画素ごとに備わっているトランジスターにより電圧制御されています。
電圧により液晶分子の向きが変えられることにより、バックライトの光量が調節され、カラーフィルターを通して色彩が変化することにより、ディスプレイとして表示されます。
液晶材料の合成に、鈴木・宮浦反応が用いられています。例えば、VA用液晶材料は次のように合成されます。
液晶材料は、高純度の製品を大量に製造する必要がありますが、鈴木・宮浦反応は、ホウ素の毒性が低く、安定性が高く、比較的温和な条件で、高収率で反応を行うことができることから、工業化が容易になりました。
2.有機ELディスプレイ
有機ELディスプレイは、有機材料を用いてできエネルギーを光エネルギーに変換させる発酵現象を利用しています。
自発光型のため、カラーフィルターやバックライトが不要であり、薄型化、省電力が実現できる利点も有します。
有機ELディスプレイの主要構成材料としては、電子輸送材料、発光材料、正孔輸送材料が挙げられますが、例えば、トリアジン系電子輸送材料は、鈴木・宮浦クロスカップリング反応が採用されています。
その他の材料もクロスカップリング反応が多く用いられています。
3.半導体製造
半導体の製造は、シリコンウェーハに回路の素材となる酸化シリコンやアルミニウムを製膜し、さらに、レジスト材料(感光材料)が形成されます(リソグラフィ工程)。
これにフォトマスクを介して光があてられ、薬液洗浄により露光部分が除去され、さらに露光部分の金属酸化物を除去し、最後に非露光部のレジストを取り除いて回路パターンが転写され、半導体が製造されます。
ここで、レジスト材料は、感光性ポリマーであり、光照射によりアルカリ可溶のポリマーに構造が変化します。
レジスト用モノマーは、熊田・玉尾クロスカップリング反応によって合成されます。
得られたレジスト用モノマーをリビング重合させて上記の感光性ポリマーが合成されます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
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