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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故は、運転者の操作ミスによるものですが、電子制御における制御暴走(制御エラー)による意図しない挙動への対応技術の話をしてみたいと思います。
技術分野としては、フェイルセーフ(fail safe、装置あるいはシステムが故障した場合に、安全サイドに作動を移行させる)、あるいはフォールトトレランス(fault tolerance、故障時に、多重化などにより機能維持を行う)に関するものです。
目次
故障発生時の挙動を、時間順に分解し、その時の危険度の変化パターンを表すと以下のようになります。
(A)~(F)は、以下のようなケースを表しています。
目標とするのは、(F)のパターンですが、上図①~④に示すような時間軸ベースの変化に関して、以下項目についての考慮、検討及び評価が必要となります。
制御暴走時に、システムの運転者または操作者に期待できることは何でしょうか?
車の例で説明すると、意図しない挙動の代表的なものに意図しない加速(UA、unintended acceleration)というものがあります。
制御暴走が起こり、意図しない急な加速が発生した時を想定して色々な制御上の対応策が導入されますが、制御暴走時に「システムでの対応」以外に、「運転者による対応」としてまず期待することは、ブレーキペダルを踏んでもらうことだと思います。
一方、そのような期待をする場合には、ブレーキペダルを踏む反応速度が最も遅く、踏み方が最も甘い場合を想定しなければなりません。
自動車等に用いるシステムの安全設計においては、最悪のケースを想定しなければなりませんので、結局は、運転者によるブレーキ操作は期待できない(あてにしてはいけない)ことになります。
実際に起きている事故においても、プロのドライバーであるバスの運転手が体の具合が悪くなってブレーキを踏めなくなったり、高齢者のドライバーが、ブレーキを踏めずに誤ってアクセルを踏んだりしています。
(これらの事例では、制御エラーが起きた時の対応ではなく人災ですが)
自動運転システムにおいても、非常ボタンを付けておくことは、情報展開の面でも良いことかもしれませんが、その操作をあてにしての安全設計はしてはいけないと考えましょう。
多くのセンサを備え、多くの複雑なフィードバック制御を行い、更には複数の制御を連動させる協調制御と呼ばれる制御を行う複雑なシステムがあります。
システムの制御に対しては常時故障診断をしなければなりませんが、重要なセンサに対しては、さらにセンサの故障に対する診断も必要です。
かつてドイツで、安かろう悪かろうの品質の悪いクルマを調査するため、アウトバーン(ドイツの高速道路)で止まってしまっているのはどんな車かが調査されていました。
ところがある時期に、最新鋭の高級車の事例が多く見られるようになったことがあります。
その原因は、搭載され始めた複雑な電子制御の車両で、故障診断自体のエラーにより、安全サイドへの対応、すなわち車両の停止が頻繁に行われたことによるものでした。(安全設計においては、機能維持性よりも安全性が優先されます)
システムが複雑になるということは、故障モードも複雑になり、さらに故障診断も複雑になります。
それでは同じような高度の機能を達成しながら、システムをシンプル化する方法はあるのでしょうか?
その一つとして挙げられるのが、センサの数を減らすことができる、モデルベース制御の活用です。
安全性と機能維持性を両立するには、フィードバック制御、フィードフォワード制御、そしてモデルベース制御をうまく組み合わせることが重要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)