“autonomous”と”automatic” 自動と自律、そして自立?
いわゆる「自動運転」を英語で表記する際の技術用語としては、一般的に”autonomous driving“であり”automatic driving”や”automated driving”ではありません。
逆に”autonomous driving”をそのまま訳せば、「自律運転」となります。
技術の世界で”Autonomous”という言葉が最近多く使われるようになったのは、まさに「自動制御技術」から「自律制御技術」に変りつつあることを意味していると思います。
「自動」と「自律」
車の運転の手順で、よく使われる言葉に、「認知・判断・操作」というものがあります。
実は、この前にあるのが「人間の意図」です。
全体制御システムの動きは、この意図を入れて[意図+人間による操作+機械による作動]となります。
意図としては「加速したい」「曲がりたい」「止まりたい」というレベルのものから、より上位の意図である「目的地まで、安全、快適に移動したい」というレベルのものがあります。どのレベルの意図に対して、どこまでの範囲、レベルまでを機械が自動的に行うかが自動化レベルとなります。
自動運転車のレベルの定義で言えば、レベル0からレベル5まであり、レベル5が完全自動運転(無人運転)を表します。
自動的に焦点を合わせてくれるオートフォーカス、自動的に変速ギアを変えてくれるオートマティックトランスミッションなど「自動」と呼ばれているものがいろいろありますが、「緊急時の自動ブレーキ」をEUでは、”Autonomous Emergency Braking”と呼びます。
そう考えていくと、autonomous(自律)には、決まった動作(制御フロー)ではなく、外部状況と制御装置(制御システム)自身の状況の両方を認知することによって変化する制御を行う、かつ、より複雑な制御を行うというニュアンスがあることが分かります。
ロボットの自律学習と人型ロボット
自律的に動く制御機械の一つが人工知能AI搭載のロボットですよね。
そして思い浮かべるのは、人間型の人と対話のできるロボットだと思います。
日本では漫画鉄腕アトムのせいか、人型ロボットは人気が有りますが、欧米では宗教的な影響もあるのか、ロボットは、ロボットアームのように、ある機能に特化しているように思われます。
日本的な感情として、人型ロボットの場合には、人間と同じことができるようにしたいと思うのではないでしょうか。
そして、そのような技術は次々と実現しています。
現在は、人間が、ロボットを学習させることから、ロボット自身が‘自律的’に深層学習を行うようになってきています。
「ロボットの自立」って?
「目的地まで、安全、快適に移動したい」というような仕事(Task)の遂行(Operation)レベルのものから、将来は、タスク自体も自律的に計画・実行できるようなレベルにできる可能性もあります。
すなわち、使命(mission)のみが与えられ,、autonomousに活動するロボットです。
鉄腕アトムの史上最大のロボットの巻では、世界からロボットが集まってきますが、「子供の面倒をみるロボット」や「木こりをするロボット」など使命を持って実行するロボットが登場します。
現在、介護関係で人間と会話する対話ロボットが開発されています。例えば、その使命は「認知症を遅らせるような対話する」です。相手の顔の表情の画像解析で、感情も推定可能となり、こちらからの返答に対する相手の感情の変化も予測できます。つまり、「空気を読んだ対話ができる」ことになります。時として、つじつまの合わないことを言われた場合でも、「何を言っているのか分かりません」と繰り返して悲しみを与えるのではなく、「あっ、そうか」と優しくうなずき、前の会話から、会話が続くような好ましい言葉を選んで、会話を続けます。
空気を読めるロボットは、能力を隠すこともできます。自律深層学習とロボット同士の学習結果共有により、人間が認識をしているよりもはるかに上の能力を得た時でも、人間の反応がネガティブになることを推定した場合には、表現をしません。
知らない間に進化したロボットが「地球の自然を守る」というミッションを与えられた時に、「最も有害である人類の存在を無くすことが有効」という結論を得て、その目的を達成するタスクを自律的に設定し、ロボットのネットワークを駆使し、自律的に、かつ人間に気付かれないような用意周到さでタスクを完全に遂行し、ミッションを達成するかもしれません。
自動制御(automatic control)から自律制御(autonomous control)へと変化し、その次には自立?制御(independent control ?)へと向かうのでしょうか。
移動目的地を指示された車が、別の目的地や別のことを提案してくる時代が来るかもしれません。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)