自動化設備を導入する際の評価法とは?専門家が3つの評価法の考え方と注意点を解説
自動化設備の導入においては、その方法を評価することも大変重要です。設備導入を検討する際に、どのような設備が自社の条件に適うかを判断するには、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、要求される機能をその設備がどれだけ満たすか、また、導入設備の規模や範囲をどのように決めたらよいかを評価する方法を紹介します。
1.コストとベネフィットを比較する -費用・便益分析法
新しく導入する候補となっている自動化設備と自動化しない場合の設備の比較の指標として、比較的わかりやすい判断指標となるのは、コスト(費用)とベネフィット(便益)という観点です。費用・便益分析法は、ある設備を基準として、自動化が行われる場合と行われない場合のそれぞれについて、一定期間のコストとベネフィットを計算し、自動化した場合のコストとベネフィットの増分を比較することによって分析・評価を行う方法です。
自動化に伴うコストとしては、設備の初期投資や新たに必要となるメンテナンス費用があります。自動化によるベネフィットとしては、作業の省力化により労務費を低減することに加えて、ヒューマンエラーによるミス・事故が減ること、製品の品質や生産数量がアップすること、労働環境が改善することや、それらのベネフィットの結果で実現した事業の拡大など、さまざまな面から考慮できます。
それらのベネフィットのうち、特に次の項目についてのベネフィットを算出し、比較します。
①作業時間の短縮
②段取り替え時間の短縮
③不良品の減少
④製品事故の減少
⑤製品品質の向上
【注意点】
設備導入を進める担当者としては、これから導入する自動化機器に期待する分、ベネフィットが過大評価されやすくなることに注意が必要です。
例えば、これらには生産量の予測値なども含まれてしまいますが、この設備を導入したとしても、様々な要因によって必ずしもこの生産量が実現するとは限りません。リアリティある予測値を算出することは大変重要です。
2.共通する観点から比較する -点数評価法
自動化を予定する設備それぞれに、様々な性能などの共通の評価項目を設定し、点数をつけて優劣を比較する方法が点数評価法です。各項目に対して、その要求の満足度を5段階などで評価し、点数をつけて、その合計点を評価します。なお、その性能が5段階中3段階目の評価を全項目が満たせば、総合点が100点(満点)=合格、となるようにすることがポイントです。
【注意点】
評価項目は、例えば、設備の安全性、短縮できる加工時間、製品歩留りなど、状況に応じていろいろなものが考えられます。重要なポイントがもれないようにしっかりと洗い出しましょう。
各項目の評点基準は、システムの性能への影響度、要求の達成度、実施の難易度などを考慮して設定します。項目ごとのバランスが崩れると適切な判定ができませんので、全体のバランスを考えて設定します。また、初期の設定で固定せず、実施しながら見直していくことも重要です。
3.条件を満たさない方法を消去する -消去法
複数の設備や方法を比較するときに、それぞれがさまざまな条件を満たすか満たさないかを判断し、満たさない方を消去する消去法もわかりやすい評価方法のひとつです。消去法を行うには、条件そのものをよく吟味します。過剰に厳しい条件によって安易に消去してしまわないように、「この部分はこうすれば問題を解決できる」とか「この機能はなくても我慢ができる」といった具合に、条件を減らしていくことも大切です。
【注意点】
本当に「消去」するとした判断は正しいのでしょうか?ベネフィットの見積もり同様、それぞれの条件に対する考察が甘いと、本来最も考慮すべき条件を見逃して、最適な設備や方法を候補から外してしまうことも考えられます。製品や生産ラインへの深い理解が重要になってくるのです。
4.どの評価法が最適かを決めるのはあなた!
様々な評価方法は、自動化設備の導入においては、単純に生産量が上がる・人件費が減る、という一面的な判断基準では不十分であることを気づかせてくれます。
どの評価方法が他の方法よりも優れている、ということはありません。適切な判断ができるかどうかは、結局のところ、製品や生産ライン、市場環境に対する知識や理解次第といえます。評価法は、その理解を深めるために用いるツールであると考えることもできます。様々な評価方法を知り、活用してみてはいかがでしょうか。
(竹内技術士事務所 所長 竹内 利一 講師 の寄稿に基づき、アイアール技術者教育研究所が編集)