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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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目次
通信技術やコミュニケーション手段、あるいは「情報記録技術」の進歩は、情報の洪水を作り出すことに成功しました。
また、情報の洪水の中から、課題を解決するために必要な情報を抽出(検索)するための技術も飛躍的に進歩しています。
しかし、我々はそうした進歩に目を奪われ、情報やその処理技術を、肝心の「課題を生み出す」ために活用する努力を怠ってきたといえるかもしれません。それどころか、一つの情報それ自身が持つ価値にばかり注目し、価値ある情報を「見つけ出す」ことを、課題を「生み出す」ことと「錯覚」さえしていたのです。
確かに情報には、それ自体が「課題」として直接、役に立つものもあります。
しかし、そういった情報に「たまたま出会う」ことばかりを期待していてはダメなのです。
いま我々が課題を解決するために活用している「情報処理技術」を、課題を生み出すために活用することも考えなければならないのです。
つまり情報の「構造化・再構造化」を如何にして効率的に行うか、そしてまた、構造化した情報をいかにして効率よく解析し、活用するかを考える必要があります。
課題を産み出すに役立つ情報は、自身が情報に手を加え「構造化・再構造化」することが重要です。
情報を「分類・整理(意識して)」するのに、我々はよく「表」を用います。
多くの場合、表は複数の分類欄を持っています。また、表は、分類して蓄積された情報と、設けた分類欄やその名前などが設けられています。
つまり表は、その構造に大きな意味と価値を持っているのです。
ここでは情報を分類するための表をつくることを「構造化」と呼び、その表の構造を作り変えたり欄の名前を替えたりすることを「再構造化」と呼ぶことにします。
そして、情報を、出来た表を用いて分類することを「情報の構造化」と呼び、また、すでに分類されている情報を、表の再構造化に追随させて変更することを「情報の再構造化」と呼ぶことにします。
表に構造化された情報は、その人が その時点で、そこに蓄積されている情報をもとに持つ創造力そのものと言えます。
なお、ここで、構造化された情報は “その時点での”創造力であることを強調しておく必要があるでしょう。
同じ情報でもそれを見る「視点」は、同じ人でも時間の経過や状況の変化によって変化するのです。
また、新しい情報が入れば、別の見方が生まれてきます。つまり、人の創造力は常に変化(進化)するものです。
だから、構造化された情報が、”いつの時点でも”創造力であるためには、その時点での視点で情報が再構造化される必要があるのです。
既にあるテーマの場合、未存要素(ここでは、正確には自分たちが持っていない、知らない要素というべきですが)がハッキリしています。
だから、必要な情報を探し出す(検索する)力が十分備わっていれば、存在するすべての情報(初期情報)を対象として、その中から探しだすことが可能です。
つまり、課題解決のためには、存在する初期情報の全て(現実には、全てというのは勿論不能だが)を対象として、必要な情報を探し出すことが出来るのです。
課題解決の時代には、構造化された情報は必要ありませんでした。
便利な商用データベース等があれば十分でした。
いまは情報が氾濫している時代です。課題さえあれば、それを解決するための情報を、氾濫する情報の中から、コンピューターを使って自身の机上で簡単に行えます。
入手可能な情報が、たとえ外部に氾濫していても、いま課題が無いときは、どんな情報が必要かが解らないのです。
必要な情報が何か解らなければ、外部の初期情報は活用できません。
つまり商用データベースは、課題解決のためには有用ですが、課題を生み出すためには、そのままでは無力です。
情報が、課題を生み出すために活用されるためには、それが入手されたあと記憶され、整理されている必要があります。
課題を生み出す力を高めるには、構造化された情報を増やす努力するしかありません。
何時でも入手できるたくさんの情報を、それがあたかも、コンセプトを生み出すために使える情報だと誤解し、情報を自身で構造化する努力をしていない人があまりにも多いと感じます。
いくらクリエイティブな素質を持った人間でも、十分に構造化された情報を持たなければクリエイティブではあり得ないのです。
それぞれが構造化した情報を、グループで活用する必要があります。
そのためには、グループメンバー全員が、効率が良い、しかも共通のデータとツールを使用する必要です。
ここで言う、「共有」 の意味は、通常我々が「情報を共有する」という時の 「共有」 とはレベルが違います。
従来の意味の「共有」なら、構造化した情報を「流通」 させれば良いのです。
ここでは、創造力の「流通」 と 「共有」 について区別しておきます。
創造力の 「流通」 とは、ある人が作った表を、それを欲しいと思う人が入手できる状態です。
入手した人が、それを自分のもつ表に合体して融合することは含まれていません。
入手した表はあくまでも、原型を保って活用されます。
それに対して創造力の 「共有」 とは、「流通」 している表を入手し、それを自身の持つ表と合体して一つに融合することを言います。こうして融合された表は、元のいずれの表よりも優れたたものになり、それが自身の新しい創造力となります。
こう区別したとき、我々が良く言う 「情報の共有」 のほとんどは「情報の流通」に相当するものです。
この連載でいう創造力の「共有」 とは、複数の人間が持つ、複数の表を合体して、一つの表に纏めることをいいます。
(日本アイアール 知的財産活用研究所 N・Y)
※この連載コラムは、1997年4月に実施した、久里谷美雄先生(故人)による若手技術者向け研修のテキストを基に作成しています。