情報を制する者が戦いに勝つ|「孫氏の兵法」から研究開発を考える

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情報を制する者が勝つ(情報の重要性)

情報は、重要な経営資源である

情報の価値について、1970年代に米国で発表されたレポートの記載をご紹介します。

“経営者やリーダーは、情報を効率よく、かつ創造的に使うべきである。つまり情報マネジメントを新しい面から見られるように訓練・教育されるべきである。情報は創造性を生み出す資源である。情報を活用することが売上げ、利益を開拓する。そして競争上、優位になることが保証される“

一方、日本では、情報の価値に対して鈍感であることが許されました。
それは、国土の狭さや、アメリカほどの多民族国家ではないことに関係しているのかもしれません。
情報収集
情報収集は、まず世の中で公にされている関心情報の収集からスタートするのが常套手段です。ネットなどによる情報収集は、簡便で「そこそこ」の情報は得られます。運よく情報発信の源流に辿り着けば、ことの本質に出会えることもあるでしょう。
しかし、実際に約立つ情報にたどり着くには、自分の足を使い、目で見て、耳で聞いて、真偽を問うてみることも大事です。

企業活動で考えれば、競合の会社がいまどんな参入障壁を持っているか、その元は何か、あるいは参入障壁の移動はあるのか、その可能性が見て取れるなら今後どのよう変わっていくのかを知るために、ネットで調べるだけではなく、図書館で文献を確認したり、関係者やその道の専門家に尋ねたりするといったことが必要となってきます。

因みに研究・開発は、アメリカでは「R&D (Research and Development) 」と呼ばれています。
文字通り、その出発点はリサーチにあり、自分が今から取り組もうとしている開発テーマについて、世界の過去の実績と現状を調べることから始まります。リサーチは文献(論文や特許等)による調査研究がメインとはいえ、直接に話を聞く、自分の目で確かめる、というも重要になってきます。

 

孫子の兵法から学ぶ:情報を制する者が戦いに勝つ

孫子の兵法が読まれる理由は、人間が生きていくに避けられない戦いの基本原則を説き、いかなる時代であっても応用できるという面白さがあるからだと思います。
そこで孫子の兵法から「基本原則」を抜き出して応用すれば「戦略(事業・研究・販売等)」の答えが見えてくるのではなかろうかと考えています。

兵法や戦略は、戦いのノウハウです。基本的には「理詰め」であり論理的になっています。論理的であるということは、前提条件が同じであれば、推論の結果、答えは同じとなります。戦略は、共通する前提条件を合わせる抽象的なものです。だからこそ自分の頭で考え、独自の答えを出していく応用力が求められるのです。

戦いに勝つためには、事前に敵の情報を掴むことが大事です。即ち先に知ることが、戦いを制する掟です。
情報活動は、優秀な人材が関わってこそ正確な敵情が掴めるのです。
相手より先を知るためには、神様に伺っても「ダメ」、想像で推測しても「ダメ」、占っても「ダメ」です。必ず(優秀な)人を介して敵情を知るべきなのです。

 

孫子いわく”彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず”

相手を知り自分を知るならば負けることはなかろう。
 
この場合の相手は目の前にある敵だけではありません。孫子が、敢えて「敵」と表現せず「彼」と表現しているのは、敵を含む周辺の敵、全てを想定しているからだと伝えられています。つまり、孫子は“彼や己の何を問題として、何を知るべきかが課題となる”と説いています。

 

孫子いわく“彼を知らずして、己を知るものは、一勝一負す”

相手のことを知らなくても自分のことを知っていれば戦いは五分五分である。
 
相手を知れば、そのぶん優位に立てます。先ずは自分を知るために自分を分析する必要があります。闇雲に相手の情報を集めても自分と比較する対象が「ボンヤリ」としていたのでは目的地(比較する物)に辿り着くことはできません。それは羅針盤の無い航海に出るようなもので、情報の大海で間違いなく漂流します。
企業活動における情報分析の基本は自分(自社)と他人(他社)の比較です。
したがって、まずは「自分情報(自社情報)」をきちんと分析することが必要である、そのうえで「他人情報(他社情報)」の分析をするということになります。
 

情報は「どのように使うか」が重要

新聞もテレビもない時代、人々は口伝えで情報を得ていました。
情報の質や量が注目されますが、情報はどのよう使うかが大事です。

『徳政令』(岩波新書、笠松宏至著)という本には、鎌倉時代の永仁5年(1297年)3月初めに立法された徳政令が、どれだけの速さで諸国に伝わったかが書かれています。御家人が一般の人に売った土地は無償で取り戻せる、というのが徳政令であったから、土地を買った者とすれば大変な法律だったでしょう。

『幕末維新の民衆世界』(岩波新書、佐藤誠朗著)という本には、異人の登場で主に商人たちがどんな動きをしたかが書かれています。英語を学び始める者、絹の輸出に望みをかける者、牛肉を売りに横浜へ行く者がいたり、旺盛な活動をしていることが読み取れます。江戸と大阪で、ほとんど毎日、お互いの状況を知らせる早飛脚も飛んでいたようです。さらに京都の政治的な動きも記されており、横浜のビジネスのことも的確に触れられています。

開国か攘夷かでしのぎを削っている時に商人たちは盛んに伝聞や直接の情報を取り混ぜて、自分の商売の先行きのために必死になって動いている様子が分かります。乱世では、情報を早く正確に掴んだ者が勝ちます。孫子いわく”情報を制する者は戦いに勝つ”ということです。
人々は無意識に諜報活動に血道をあげ、全国にビジネスを求め歩いており、現地の武士に道中の情勢などを訊ねられています。商人は、市中にあって庶民に接し、かつ取引先の中には大名もいます。これら「大小のゴッタ煮情報」を掴んで、自分たちが生き抜ける道を探していたのです。
情報戦略(武将)
鎌倉の人々や幕末維新の頃の人々も、情報こそが自分の「生き死に」の糧だということは知っていました。
伝達手段が限られていた時代、必死さにおいては現代の比ではなかったと推察できます。

一方では「ガセネタ」に振り回されて、痛い目にあった人もいたはずです。
現代に生きる我々が同じ過ちを犯していないと断言できません。
もしかすると大量の情報に慣れすぎて、その中から生き抜く糧を見つける情報分析力は、先人より劣っているのかもしれません。

[※次回「情報との付き合い方を考える」に続く]

 

(日本アイアール 知的財産活用研究所 N・Y)
 

 

 

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