3分でわかる技術の超キホン 「ヒューズ」の必須前提知識・ミニマムまとめ解説
今回は、電子部品「ヒューズ」について説明します。
現在、家のAC100Vのコンセントから電源をとっている電子機器の殆どにヒューズが内蔵されています。
ヒューズは、電子機器が故障、または電気の使い過ぎなどで電子機器に大きな電流が流れたときに、安全のために電源を遮断する部品です。
では、このヒューズについての基本知識を確認していきましょう。
1.ヒューズとは?(ヒューズの基礎)
ヒューズとは、電気回路に過大電流が流れたとき、自ら溶断して回路を遮断して、機器を保護する部品です。
図1(a)に一般的なヒューズの外観のイメージを示します。
また、図1(b)は、ヒューズの回路記号です。
【図1 ヒューズの外観と回路記号】
一般的なヒューズは、図1(a)のように、硬質ガラス管の中に可溶体であるヒューズエレメントを入れ、これを外部接続するために黄銅にニッケルメッキした口金を取り付けた構造になっています。
ヒューズエレメントと溶断
ヒューズエレメントには、融点の低い金属を使用しています。その金属に流れる電流によってジュール熱が発生し、金属の温度が上昇することによって溶融して異常電流を遮断します。
ヒューズエレメントは、鉛、スズ、ビスマス、カドミウム、銀、銅などを組み合わせた合金で、組成の配合により、融点を70~100℃間の値にもたせることができます。
図2は、ヒューズエレメントが電流によって溶断に至る過程を示した図です。
【図2 ヒューズエレメントの溶断】
図2(a)は、定常電流の時の様子で、熱はエレメントに均等に伝わります。
(b)で、過負荷になって電流値が増えると、エレメントの中央から熱が上昇し広がります。
(c)で、溶断する電流に達すると、熱でエレメントが溶断してしまいます。
ヒューズは、このように温度上昇(異常温度)を検知して動作しますので、ヒューズエレメントの構造(発熱量、熱時定数)によって溶断特性は変わります。
2.ヒューズの電流値の定義
図3は、ヒューズの電流値と溶断時間の関係を示した図です。
【図3 ヒューズの電流値と溶断時間】
ヒューズの仕様書には、様々な電流値が規定されていますが、電流値の定義は下記の通りです。
(1)遮断電流
ヒューズが破壊することなく、安全に遮断できる電流です。
この電流値を超える場合、亀裂が生じたり、ひどい場合にはヒューズが破壊する可能性があります。
そのため、ヒューズに流れる電流がこの遮断電流を超えるような場合、1ランク上の遮断能力を持つヒューズに変更する必要があります。
なお、ヒューズが破壊すると、ヒューズエレメントが飛び散るため、安全規格上では不合格となります。
この遮断電流は遮断定格電流、定格遮断電流、定格遮断容量、許容電流とも呼ばれています。
(2)溶断電流
ヒューズが溶断特性に従って溶断する時の電流です。
流れた過電流値によって、切れる時間が変わってきます。
ヒューズの仕様書にある溶断特性を参考にしてください。
(3)定格電流
ヒューズに表示されている電流値です。
例えば、ヒューズに0.5A/250Vと表示されていれば、0.5Aがヒューズの定格電流となります。なお、250Vは定格電圧を示します。
ヒューズに定格電流を流しても溶断しないことに注意してください。(定格電流を流すと溶断すると勘違いする方が多いです)
ヒューズの定格電流は、その値の電流までは絶対に切れないことを表します。
定格電流を超える電流が流れると、ヒューズの溶断特性により、ある時間経過後にヒューズが溶断します。
(4)定常電流
通常時にヒューズに流れる電流です。
定常電流は定格電流に対して、定常ディレーティングと温度ディレーティングを掛けた値以下にする必要があります。
式で表すと以下のようになります。
定常電流≦定格電流×定常ディレーティング×温度ディレーティング
例えば、定格電流2Aのヒューズにおいて、定常ディレーティングが0.8、温度ディレーティングが0.9の場合、通常時に流れる電流は、
2×0.8×0.9=1.44[A]
以下にならなければなりません。
3.ヒューズの選定
ヒューズの溶断特性は既定の電流値を超えた場合の遮断性能を示し、ヒューズによって異なります。他にも接続端子に耐熱加工がされたものや、耐久性を高めてヒューズ本体の寿命を延ばしたものなどがあります。
誤った選定をしてしまうと、異常電流が流れ続けて危険性が高まります。
そのため、回路の電圧や定常電流、取り付け方法、使用環境、溶断特性などを基準に、適切なものを選ぶことが必要です。
また、通常使用時には溶断しないことが重要で、通常使用時の異常な状態(電源オンオフ時の突入電流等)も考慮に入れて選ぶことが必要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)