リピータビリティ、トレーサビリティ、そしてマスター管理方式
特性を売り物にする製品の特性を一定に保つことは重要な品質管理項目です。
特性の管理のためには計測が用いられ、この計測の精度の保証が必要となります。
さらに特性変化という品質不具合が発生した場合、不具合品の発生期間と存在場所の特定ができなければなりません。
リピータビリティ(repeatability)、トレーサビリティ(traceability)、そしてマスター管理方式(master control system)は、これらに関係する重要な用語です。
リピータビリティ(repeatability)とは?
検査において得られる測定値によって判断やアクションを行うため、測定値には信頼性が求められます。
同じものを同一条件で測定した場合には、繰り返し測定しても測定値が大きく変わらないということが必要です。
測定値信頼度の確認のために、測定値を統計処理し、繰り返し精度(repeatability)と再現性精度(reproducibility)を評価します。
繰り返し精度では”同じものを測定した時の測定値のバラツキ“を評価し、再現性精度では”測定者、測定するもの、測定日を変えた時の測定値のバラツキ“を評価します。
トレーサビリティ(traceability)とは?
製品はその特性を有しますが、品質保証(不具合時の対象品特定など)のためには、その特性がどのように得られ、検査がされているかという履歴をたどることができなければなりません。
トレーサビリティは、この履歴(足跡)をたどることができることを表します。
また検査における測定値の信頼度の検定の履歴をたどれるかということも表します。
すなわち、測られる物(製品)と測る物(計測器)の両方の素性を追うことができるか、ということを表しています。
マスター管理方式とは?
測定器の計測精度が十分かどうか確認(検定)するために、同じものの測定値を、繰り返し精度(repeatability)や再現性精度(reproducibility)も含め、他の測定器による計測値と比較評価します。
‘他の測定器’とは、より高い測定信頼度が保証された測定器です。ただしこの測定器も、信頼度が維持されているかについて検定が必要です。
その場合に、二つの方法があります。
一つは、更に信頼度の高さが保証されている上位の他の測定器を用いて検定する方法です。
もう一つは、この測定器に検定された複数の下位の計測器を用いる方法です。これら複数の測定器が(信頼度を維持できているという前提で)同一の測定値を示していれば、こちらを正しい測定結果として、上位の測定器の検定・校正が可能になります。
一方、‘同じものの測定値’において、測られるものの方の特性が変化してしまっていたら、測定精度の議論は全く無意味となってしまいます。こちらにも管理が必要で、測られるもの基準器を(製品)マスターと呼びます。製品そのものを使う場合もあれば、特性に関係する部分だけ使う場合もあります。
そして、このマスターにも上位マスターと下位マスターがあります。
上位マスターの変化の管理は、上位測定器の管理と同様です。信頼度の高い測定器による測定で、複数の下位マスターが同一の変化をしていない測定値を示し、上位マスターがそれと異なる測定値を示した場合、その上位マスターの方が変化したとみなします。
このような仕組みで、製品の特性を保証する(ある決められたバラツキ範囲にする)方法を、「マスター管理方式」といいます。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)