3分でわかる技術の超キホン 光ファイバ通信における多重化(WDM、OFDM)
もはや毎日の生活にかかせないインターネット。
音声、画像のみならず動画を瞬時にダウンロードすることも当たり前になってきました。
これも高速大容量の光回線のおかげでできるようになったことです。
光回線は光ファイバを介してデータが送られています。
では、光回線の利用が増えるとともに光ファイバを敷設していく必要がでてくるのでしょうか?
今回は光ファイバ通信で用いられる多重化について解説します。
1.多重化とは?
光回線が登場する前から、通信システムにおいてより多くの情報を速く送る技術は存在していました。
その一つが多重化です。多重化とは1つの伝送路に対して複数の信号をまとめて伝送する方式をいいます。
アナログ情報を多重化する方式としては、周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)や時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)が使用されてきました。
FDMでは、複数ある信号の周波数をそれぞれ変えることで伝送路での信号を区別しています。
TDMは、複数の信号を時間軸上重ならないよう順番に伝送することで信号を切り分けています。
2.波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplex)
伝送路が光ファイバの場合には、主に波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplex)方式が用いられます。
WDMとは、1本の光ファイバ内を多数の波長の光が伝送する方式をいいます。
(波長の数が132であるTbit/s光伝送システムが実用化されています。)
現在光通信で使用可能と考えられている波長帯は1000nm~1675nmです。
WDMでは「粗密度波長分割多重」と「高密度波長分割多重」と呼ばれる2種類が定められています。
粗密度波長分割多重(CWDM: Wavelength Division Multiplex)では、1270nm~1610nmの波長帯が使用されます。20nmの間隔で分割した最大18波長を伝送できます。
CWDMは主に通信距離が中距離(50km程度)のメトロネットワークで使われています。
高密度波長分割多重(DWDM:Dense Wavelength Division Multiplex)は、CWDMに比べると狭い波長間隔をとることができます。長距離伝送が前提とされており、伝送により劣化する光信号を増幅しやすい波長帯で使用されています。
DWDMは光の周波数で間隔が定められていて、波長間隔が約0.8nmで40波長の場合には100GHzになります。100GHzと200GHz(波長間隔が約0.4nm、80波長)の2種類の規格があります。
DWDMは通信の基幹となるコアネットワークで使われています。近年では光アンプをはじめとするDWDM用デバイスのコストダウンにより、メトロネットワークにおいても適用できるようになってきました。
なお、WDMは先に述べたTDMと組み合わせて使われています。
3.直交周波数分割多重
(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplex)
WDM以外にも直交周波数分割多重 (OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplex)という方式があります。
OFDMは、データを波長の異なる複数の搬送波(キャリア)に分割して同時に送信する方式です。
広い意味では「マルチキャリア伝送」と呼ばれることもあります。
周波数変調をかけた各搬送波の位相を90°ずらすことで、狭帯域でより多くの情報を送ることが可能です。そのうえ干渉や分散の影響を抑えることができます。
元々無線LANで採用されている方式を光信号において当てはめたことから、光通信におけるOFDMは「光OFDM」と呼ばれることもあります。
4.多重化でさらなる大容量通信へ
光ファイバ通信においては、本コラムで紹介した多重化が行われることにより、少ない光回線でもより通信回線数を増大させています。
多重化についてはファイバの特性との兼ね合いもありますが、今後も新たな方式が開発されることで、さらに大容量通信が可能になることが予想されます。
(日本アイアール株式会社 N・S)