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プラスチックは、日常生活に当たり前のもので、ありとあらゆる製品に使われています。
一方、モノづくりに必要不可欠な材料でありながら、“どのようなものなのか、どのように加工されるのか” 実際には、関係者以外にはあまり知られていないことも事実です。
そこで今回は、プラスチックの材料とは何か?について説明します。
目次
まず、プラスチックとは何か、考えてみましょう。
プラスチックと言う言葉は、英語の ”plastic” から来ており、日本語では、「可塑性」の、すなわち、やわらかくて形を変えやすいという意味になります。陶磁器を作る時の粘土を想像していただければよいでしょう。
今日、プラスチックという場合、常温では固いけれど、熱を加えるとやわらかくて形を変えやすくなる「合成樹脂」を指すことが多いです。
そのため、成形加工がしやすく、しかも電気的絶縁性や断熱性もあり、大量生産もできるので、プラスチックの製品はさまざまな分野で利用されています。
日常生活でプラスチックに接しない日はない、と言っても過言ではありません。
なお「合成樹脂」とは、植物から分泌される「やに状」の物質を指す言葉である「樹脂」(天然樹脂)に対し、化学合成によって作られた同様の物質を指しますが、現在では、単に樹脂あるいは合成樹脂と言った場合、プラスチックのことを意味することが多くなっています。
プラスチックは、幅広い製品に使われている一方で、適切に廃棄処理されない場合、自然界では容易に分解されず、細かく砕かれて(マイクロプラスチック)食物連鎖を通じて人間の体内に取り込まれる危険性も指摘されており、プラスチックの使用を削減する運動も進んでいます。
しかし、もはや私達の生活はプラスチックなしでは考えられず、さらに、現在使われているプラスチックを単純に金属、ガラス等に置き換えると、製造過程等まで考えた場合、環境負荷はむしろ増してしまうという議論もあります。
プラスチックの問題点も認識しつつ有効に利用し、適切にリサイクル、廃棄することに社会全体として取り組むことが、当面の課題です。
プラスチックの原料は石油です。
しかし石油からすぐにプラスチックになるわけではなく、何段階もの化学反応の工程を経由します。
まず、原油を蒸留、精製することで、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などに分けられます。このうちのナフサがプラスチックの原料になります。
ナフサを熱分解することでエチレン、プロピレン、ベンゼンといった単分子(モノマー)の気体あるいは液体が作られ、その後モノマーに重合反応を起こさせることで、固体である高分子化合物(ポリマー)を得ます。
ポリマーに、必要な添加剤、着色剤などを加え、米粒大(3~5㎜)に固めたものをペレットと言い、これが成形加工に使用される原料になります。
【図1 プラスチックの原料】
一般的にプラスチック材料の分類方法の一つとして「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」があり、それぞれ次のような性質があります。
熱可塑性樹脂は“チョコレート”のようなプラスチックで、熱を加えれば溶け(溶融)、冷却すると固まる性質(固化)があり、基本的には何回でも繰り返しが可能です。
熱硬化性樹脂は“たまご”のようなプラスチックで、一回でも熱を加えて固めてしまうと、再び熱を加えても溶けない性質があります。
【図2 熱可塑性と熱硬化性のイメージ】
熱可塑性樹脂は、加熱すると溶けて柔らかくなり、流動的になるため、加圧等により「型」に流し込んだ後冷却すると、「型」の形状通りの固体(成形品)を得ることができます。
加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まることは、何度も繰り返せます。
このように、熱可塑性樹脂は可逆的な性質を持っています。加熱すると分子の熱運動が活発になり柔らかくなり、冷却すると熱運動は次第に不活発になり、やがて固化します。
これは、化学的でなく、物理的な現象によるものです。
熱可塑性ポリマー(高分子)は、長い鎖状 の巨大分子の集合体で、ポリマー分子内では共有結合で強く結合しているのに対し、ポリマー分子間は、ファンデルワールス結合や水素結合、あるいは分子の絡み合いで、ゆるくつながっています。
【図3 分子構造】
加熱しても基本構造は変化しませんが、分子の熱運動がさかんになると、分子間隔が広がって、分子間の結合が弱くなり、温度上昇と共に強度が低下して可塑性を示すようになります。
ペットボトル(ポリエチレンテレフタレート:PET)や、CDケース(ポリプロピレン:PP)などが、代表的な製品です。
熱硬化性樹脂は、ある温度までは流動性を示して成形でき、 更に高温まで加熱すると硬化するプラスチックです。一旦硬化すると加熱しても流動しない為、再度成形することは困難です。このように、熱硬化性樹脂は、不可逆的な性質を示します
この理由は、熱硬化性樹脂は加熱すると化学反応を起こし、橋かけ構造(架橋構造)に変化するからです。
架橋構造は、強固な共有結合であるため、分子の熱運動は制約され、再度 加熱しても流動性を示さなくなり、不可逆性となります。この点が、加熱しても架橋構造にはならない熱可塑性樹脂との大きな違いです。
架橋反応が起こった後の、熱硬化性樹脂の構造イメージを下に示します。
架橋反応が起こる前の各ポリマーは、さほど高分子量ではなく、加熱によって分子の熱運動が活発になって柔らかくなりますが、さらに加熱すると化学反応により架橋結合が形成され、分子の鎖で結合されて熱運動が制限されます。そのため、再度加熱しても流動しなくなるのです。
【図4 熱硬化性樹脂の分子構造】
食器、化粧板(メラミン樹脂:MF)、接着剤(エポキシ樹脂:EP)などが代表的な製品です。
熱硬化性樹脂の成型品は、架橋構造のため表面硬度が高く、耐熱性、機械的強度などの諸点で汎用の熱可塑性樹脂より優れるとされていますが、反面、廃棄製品のリサイクル再成形はできません。
ということで、今回のコラムではプラスチックにかかわる技術者として最低限知っておくべき「プラスチックの基本中の基本」についてまとめました。
(アイアール技術者教育研究所 T・I)