3分でわかる アスタキサンチンとアントシアニンの違い

アスタキサンチンとアントシアニンは、いずれも天然に存在する色素で、健康食品などにも利用されています。名称が似ているため混同されがちですが、化学構造・特性・含有食品・生産方法など、実際にはまったく異なる化合物です。
本記事では、両者を比較しながらその違いをわかりやすく解説します。
1.アスタキサンチンとアントシアニンの比較
(1)化学構造の比較
まずアスタキサンチンとアントシアニンの化学構造を表1に示します。
両者は属する分類も異なる、全く異種の化合物です。
なおアントシアニンは表1に示した骨格部分のみでは不安定のため、実際には糖類と結合しています。
【表1 アスタキサンチンとアントシアニンの構造】

(2)特性の比較
表2は両者の特性を比較したものです。
【表2 アスタキサンチンとアントシアニンの比較】
| アスタキサンチン | アントシアニン | |
| 色相 | 赤~橙 | 紫(中性) 但しpHにより変化 |
| 含有食品 | 微細藻類やカニ・サケ等の海洋生物 | ベリー類、ブドウ等の植物 |
| 溶解性 | 油溶性 | 水溶性 |
| 生体への効果 | 抗酸化(極めて高い)、紫外線防御等 | 眼精疲労改善、抗酸化等 |
アスタキサンチンは条件によらず赤~橙色を呈します。
一方、アントシアニンは中性では紫色であり、アントシアニンと言えば紫色を思い浮かべる方が多いと思います。但しアントシアニンはpHにより色が変化します。例えば強酸性では赤色を呈します1)。
アスタキサンチンとアントシアニンはどちらも食品中に存在します。
アスタキサンチンが微細藻類等の海洋生物に含まれているのに対して、アントシアニンはベリー類等の植物に含まれています。
またアスタキサンチンが油溶性であるのに対してアントシアニンは水溶性です。この点でも対照的です。
両者は抗酸化性を有する点で共通していますが、アスタキサンチンは特に高い抗酸化活性を示すことで知られています。
2.食品中の含有量
では、両者は具体的に何にどの程度含まれているのでしょうか。
表3は主要な海洋生物や植物中の含有量をまとめたものです2)。
アスタキサンチンでは、微細藻類のヘマトコッカスが著しく高い含量を有しており、最大で8%に達すると報告されています。エビ・カニやサケ等に含まれているアスタキサンチンは、微細藻類由来のものが食物連鎖を通じて、これらの体内に蓄積されたものです。
一方、アントシアニンは各種ベリー類に1%前後の高濃度で含まれていることが分かります。
【表3 アスタキサンチンとアントシアニンの含有量】
| アスタキサンチン含量 % | アントシアニン含量 % | ||
| ヘマトコッカス (微細藻類) |
1~ 8 | チョークベリー | 1.5 |
| ファフィア酵母 | 0.003~0.8 | エルダーベリー | 1.4 |
| エビ・カニ | ~0.04 | ブルーベリー | 0.39 |
| オキアミ | 0.0045~0.013 | ブラックベリー | 0.25 |
| サケ | 0.0003~0.004 | ブドウ | 0.12 |
| ニジマス | 0.0001~0.001 | プラム | 0.02 |
3.生産法の開発
(1)アスタキサンチンの生産
微細藻類のヘマトコッカスを用いた、培養槽での商業生産が既に行われています。
一方で化学合成法も商業的に実施されています。化学合成法による生産量は全体の70%を占めていますが、健康食品向けには認可されていません。
生産法間の優劣にご関心のある方は下記別コラムをご参照ください。
[※関連記事:微細藻類による化学品生産の優位性は?《アスタキサンチンの例で考察》]
(2)アントシアニンの生産
アントシアニンでは、近年、遺伝子組み換え(GMO)技術による紫色トマトの開発が注目されています。
発端になったのは2008年に英国のJohn Innes Centreから発表された論文でした3)。
多年草であるキンギョソウ由来の2つの転写因子をトマトで発現させたところ、ブラックベリーやブルーベリーのアントシアニン濃度に匹敵する濃度を有する紫色のトマトが得られたと報告されました。(遺伝子組み換え前後のトマトの写真は、下記文献3)に掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください。)
これを受けて米国で開発が進み、遺伝子組み換え技術に賛否両論ある中で、2024年2月には紫色トマトの種子が園芸家向けに米国で発売されました。販売は好調であったと報告されています4)。
両者の特徴を比較すると、由来・化学構造・性質のすべてに明確な違いがあることが分かります。
今回の整理が、それぞれの色素を正しく理解するうえでお役に立てば幸いです。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 中川裕子 他, 生理活性植物因子アントシアニンの色と構造, 色材協会誌79(3), 113-119(2006)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/79/3/79_113/_pdf - 2) 下記情報から作成
・西田康宏, 藻ヘマトコッカスによるアスタキサンチンの生産とその利用, オレオサイエンス12(10), 525-531(2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/12/10/12_525/_pdf/-char/ja
・X. Wu et al., Concentration of Anthocyanins in Common Food in the United States and Estimation of Normal Consumption. J. Agric. Food. Chem., 54, 4069-4075 (2006)
https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/80400525/articles/jafc54_4069-4075.pdf - 3) E. Butelli, etc., Enrichment of tomato fruit with health-promoting anthocyanins by expression of select transcription factors. Nature Biotechnology 26, 1301–1308 (2008)
http://www.nature.com/nbt/journal/v26/n11/abs/nbt.1506.html - 4) John Innes Centre, US gardeners rush to snap up purple tomatoes pioneered in Norfolk
https://www.jic.ac.uk/news/us-gardeners-rush-to-snap-up-purple-tomatoes-pioneered-in-norfolk/





































