3分でわかる 生石灰と消石灰の違いと覚え方

石灰関連の用語に「生石灰」と「消石灰」があります。紛らわしいですね。
両者にはどんな違いがあり、また両者はどんな関係にあるのでしょうか?
1.生石灰と消石灰
まず、生石灰は「せいせっかい」、消石灰は「しょうせっかい」と読んで区別してください。
これに石灰石を加えた石灰系3者を比較したのが表1です。
3者を理解する上では、エネルギー含量という概念が有効です。
図1は、エネルギー含量の観点から3者の関係を表したものです。
【表1 生石灰・消石灰・石灰石の比較】
| 名称 | 生石灰 | 消石灰 | 石灰石 |
| 読み | ○ せいせっかい × しょうせっかい △ きせっかい |
しょうせっかい | せっかいせき |
| 物質名 | 酸化カルシウム | 水酸化カルシウム | 炭酸カルシウム |
| 化学式 | CaO | Ca(OH)2 | CaCO3 |

【図1 エネルギー含量から見た生石灰・消石灰・石灰石】
生石灰CaOは、石灰石CaCO3を約1400℃の高温で焼成して二酸化炭素CO2分を除去することにより得られるエネルギー含量が高い物質です。この生石灰が水と反応すると消石灰Ca(OH)2になります。そしてこの時に大きな発熱があります。
“エネルギー含量が大きくて生きの良いのが生石灰“、”水をかけられてエネルギーを失い消沈したのが消石灰“と覚えましょう。
消石灰を加熱して、即ちエネルギーを付与して水分を除去すれば、生石灰に戻すことが出来ます。
2.土壌改良剤としての生石灰と消石灰
生石灰と消石灰に共通の用途として土壌改良剤があります。
土壌改良剤とは、建物や道路をつくるのに不適な軟弱土壌に加えて土壌を固化・強化する材料のことであり、現代社会において必要不可欠な存在です。
生石灰と消石灰とでは土壌改良剤としての機能に差があります。
生石灰の方がエネルギー含量が大きくて、水分と反応すると発熱して消石灰になると前項で述べました。これが差を生みます。
生石灰では土壌中の水と反応しますので、
- 1)土壌の含水量が減ります。また
- 2)発熱により土壌の温度が上昇し、固化反応が促進されます。
生石灰のこの特性は冬季作業時に特に有効と評価されています1)。
3.生石灰とCO2排出量との関係
生石灰CaOはセメントの主成分でもあります。
石灰石は、上述の通り、石灰石CaCO3を約1400℃で焼成する工程を経て製造されています。
このためセメント生産では下記の二重の意味で大量のCO2が排出されます。
- 1)高温を維持するのに必要な燃料燃焼からのCO2
- 2)石灰石から放出されるCO2
このためセメント業界はCO2排出量が多い業界とみなされ、環境意識の高まりの中で、対策が求められています。同業界では、この状況の下、コンクリートのリサイクルを低セメント量で実施する新技術の開発に取り組んでいます。この点に関心のある方は下記の別コラムをご参照ください。
[※関連記事:次世代のコンクリートリサイクルとは?|CO2排出量の大幅削減に繋がる注目技術 ]
注目の「化学蓄熱」
一方で生石灰は、未利用の産業排熱を有効活用することで、燃料燃焼に伴うCO2排出を削減する技術にも応用されています。長期の蓄熱も可能な「化学蓄熱」と呼ばれる分野の技術です。
図1中の生石灰と消石灰の関係をもう一度ご覧ください。300-400℃程度の未利用の熱源があっとたします。
- a) この熱源からの吸熱により消石灰Ca(OH)2から水分を除去して生石灰CaOに転換すると、熱を蓄積したことになります。
- b) 生成した生石灰を、熱源が必要な別の場所に移動させ、そこで水を添加してCa(OH)2とすれば放熱ができます。
住友重機械(株)ではこの生石灰系の化学蓄熱システムを開発中です。実験結果を2022年に報告しており、今後実用化に向けて検討を進めるとしています2)。
産業界における上述の取り組み念頭において、生石灰と消石灰を識別してください。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 小関宣裕 他, 石灰および石灰複合系固化材による地盤改良, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan, 12(319), 512-515 (2005)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate2000/12/319/12_319_512/_article/-char/ja/ - 2) 西村宗樹 他, 酸化カルシウムを用いた化学蓄熱技術の開発, 住友重機械技報 No.206, 17-22(2022)
https://www.shi.co.jp/tech/tech_report/pdf/206_08.pdf






































