《蓄熱材料の注目技術》蓄熱による電力蓄積に高まる期待|再生可能エネルギーの有効活用へ

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蓄熱による電力蓄積

太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入が今後ますます進行すると見込まれる中、気象条件で変動しがちな自然エネルギー由来の電力を一旦蓄積し、出力を平滑化する必要性が高まってきました。

このため高効率の電力蓄積法の開発が重要な課題となっています。

 

1.主な電力蓄積法の課題と蓄熱の可能性

これまでにも各種の電力蓄積法が検討されてきました。
代表例を表1に示しますが、それぞれ課題を抱えています1)

【表1 従来の電力蓄積法】

電力蓄積法

課題

揚水発電 経済的・コスト的に優れているが立地が限定
圧縮空気貯蔵 地下空洞の存在が前提なため、立地に制約
蓄電池 立地に制約はないが、高コスト

 
その中で、電力を一旦熱に変換して蓄積した後に再度電力に戻す「蓄熱発電」は、[電気→熱→電気]の部分は低効率であるものの、蓄熱の貯蔵コストが20$/kWhと電池の600$/kWhよりはるかに小さいというメリットを有します。

図1は蓄熱と電池のコストを比較した試算結果であり、横軸の購入電力コストで蓄電し、縦軸の価格以上で売電すれば経済的に成り立つことを表わしています。蓄熱で電池より低いトータルコストが期待できること、特に購入電力が低価格の際にそれが顕著であることが図1から分かります。

蓄熱による電力蓄積はまだ開発途上ですが、低コストの電力蓄積を実現する可能性を持つ技術と言えます。

 

蓄熱および電池の損益分岐点
【図1 蓄熱および電池の損益分岐点(η:効率) ※引用1)

 

 

2.電力蓄積用の蓄熱材料

蓄熱材料としては多種多様なものがこれまでに報告されています。

蓄熱の種類(方式)が「顕熱蓄熱」「潜熱蓄熱」「化学蓄熱」に大別される中で、電力蓄積の実用化に向けてドイツのシーメンス社火山岩を用いた顕熱蓄熱に取り組んでいます2)
2019年6月から130 MWh分の電力蓄積と5.4MWの放電が可能な実証プラントを稼働中です。蓄熱材は旧来型材料に属する火山岩ですが、コスト低減に有効だとしています。

また米国ではベンチャー企業のマルタ社溶融塩を用いた顕熱蓄熱によるシステムを開発中です3)

日本では愛知製鋼(株)らが下式の反応による化学蓄熱材を開発しています4)
 [蓄熱]Ca(OH)2 + 熱 → CaO + H2O  @400℃以上
 [放熱]CaO + H2O → Ca(OH)2 + 熱
工場内の廃熱利用を主目的とした開発ですが、蓄熱発電も視野にあるとみられます。電力蓄積用の蓄熱にも利用可能な技術です。

 

金属の潜熱蓄熱材に関する研究例

また日本では金属の潜熱蓄熱材(Phase-Change Materials=PCM)の研究が進んでいます。
高温で使用可能であり高い熱伝導率を備えているという金属の長所を利用するものです。中でも、融点が660℃と適度である等の理由で、アルミニウム(Al)が有望視されてきました。しかしAlには下記の欠点も指摘されていました。

  • 固体→液体時の熱膨張がやや大きいので、その変動幅を装置設計に見込む必要があり、望ましくない。
  • 潜熱(kJ/kg)がより高いことが望ましい。

この状況で北海道大学の秋山教授らはAl-Si系の潜熱蓄熱材を開発しました5)
表2に示すように、融解時に体積が収縮するSiと合金化することにより、体積膨張率を低下させると同時に潜熱の増加も達成しています。

 

【表2 秋山教授らによるAl-Si系の潜熱蓄熱材5)
秋山教授らによるAl-Si系の潜熱蓄熱材

 

さらに近年では、新潟大学の郷右近准教授から、Cu-Ge(Ge40~60wt%)合金の潜熱蓄熱材が報告されています6)
熱伝導率は高いものの体積膨張率が大きいCuの欠点をGeで補うという設計思想に基づくものであり、Cu-Geは融点644℃・潜熱550kJ/kg・体積膨張率ほぼゼロだとしています。

 
これらの技術の進捗により、蓄熱による電力蓄積は、再生可能エネルギー由来の電力を有効活用する手段として今後成長していくものと期待されます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


 

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