日本・海外の主要PLCメーカーを紹介!業界動向もザックリわかる
製造業における自動化の中核を担う「PLC」(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は、1960年代に登場し、リレー回路を代替する形で普及しました。初期のPLCは単純な制御機能を持つのみでしたが、1980年代にはプログラムの柔軟性が向上し、大規模な生産システムにも対応可能となりました。近年では、3D CADと連携した制御シミュレーションを行ったり、IoTやAIと統合した制御のニーズが高まっています。具体的には、Digital Twinへの対応、遠隔監視、クラウド経由でのファームウェア更新、リモートデータの収集・分析などの機能が求められ、保守やトラブルシューティングの効率化に貢献しています。
また、Technavio (英・Infiniti Research Limited社) の調査によると、PLC市場は2024年から2028年にかけて約38億3,000万米ドル(USD 3.83 billion)に成長すると予測されています*1)。コンパクトオートメーション技術の需要増加、AI技術の進化が市場を牽引しており、スマートファクトリーの発展に伴うクラウド連携やリモートメンテナンスが一層重要視されるでしょう。
本記事ではPLC市場の動向について記述するとともに、ハードウェアPLCとソフトウェアPLCの特徴や用途、主要メーカーについて解説します。
(※PLCの基礎知識については、「3分でわかる PLC(シーケンサ)とは?」をご参照ください。)
目次 [hide]
1.PLCメーカーのシェア率
PLC市場は、欧米系メーカーと日系メーカーの二大勢力が形成されています。
特に、SiemensやRockwell Automationといった欧米系メーカーは世界市場で大きなシェアを持ち、日本国内では三菱電機やオムロンが強い影響力を持っています。
以下に各PLCメーカーの推定シェア率をまとめました。
【表1 PLC市場のシェア率(2024年推定)】
※ハードウェアPLCのみのシェア率であり、IPCなどで制御を行うソフトウェアPLCは含まれていません。
※Technavio、Mordor Intelligence、Straits Researchの調査内容を基に筆者が独自にまとめたものです。
順位 | メーカー | 国 | 市場シェア(%) |
1 | Siemens(シーメンス) | ドイツ | 30~35% |
2 | Rockwell Automation(ロックウェル) | アメリカ | 15~20% |
3 | 三菱電機 | 日本 | 10~15% |
4 | Schneider Electric(シュナイダー) | フランス | 5~10% |
5 | オムロン | 日本 | 5~10% |
6 | Emerson(GE Fanuc) | アメリカ | 3~5% |
7 | ABB(E&R) | スイス | 3~5% |
8 | その他 (キーエンス、富士電機、パナソニックなど) |
- | 10% |
2.PLCの種類(ハードウェアPLCとソフトウェアPLC)
この章ではPLCの種類(大まかな分類)として「ハードウェアPLC」と、近年徐々にシェアを伸ばしつつある「ソフトウェアPLC」について解説していきます。
ここでいう「ハードウェアPLC」とは、国内であれば三菱電機社やオムロン社のPLCのような、従来の専用コントローラ上でプログラムが動くPLCのことを指します。
それに対し、「ソフトウェアPLC」は、専用のハードウェアに依存しない(主に産業用PC上で動作する)制御システムのことを指します。
以下でそれぞれの特徴を見ていきましょう。
(1)ハードウェアPLCの特徴(メリット・デメリット)
ハードウェアPLCは、専用設計されたコントローラ上で動作するPLCであり、高速な制御性能と高い信頼性を持つことが特徴です。
工場の生産ライン、ロボット制御、プロセス制御などの用途に適しており、耐久性にも優れているため、古くから使われています。特に、リアルタイム性が求められるシステムにおいては、ミリ秒単位の制御を確実に実行する能力を持ち、確実な応答時間を保証します。
その一方で、新たな機能を追加する場合は、専用のユニットを増設することが多く、CPUユニットから拡張ユニットまでメーカー依存になりがちです。これにより、システムの柔軟性や拡張性には制約が発生する場合もあります。
(2)ソフトウェアPLCの特徴(メリット・デメリット)
ソフトウェアPLCは、汎用PCや産業用PC上で動作するPLCであり、柔軟性が高く、クラウドやAI技術との統合が容易です。
製造業のデジタル化が進む中で、特にIoTやスマートファクトリーにおいて活用が進んでいます。
また、ソフトウェアPLCはハードウェアの選択肢を広げ、特定のメーカーに依存しないシステム構築が可能なものもあります。これは「ハードウェアの民主化」を促進する役割を果たしているとも言えます。調達の柔軟性が向上し、供給リスクの低減に備えたシステム構築が可能になります。
さらに、新たな機能を追加する場合、ハードウェアPLCが専用の機能ユニットを増設するのに対し、ソフトウェアPLCは、ソフトウェアをPCにインストールすることで対応できるため、システムの拡張が容易です。
ソフトウェアPLCの代表例「CODESYS」
ソフトウェアPLCの代表例としては、「CODESYS」が有名です。
CODESYSは、オープンプラットフォームであり、特定のハードウェアメーカーに依存しない柔軟な制御システムを構築できます。多くの産業用PCやエッジデバイスで動作可能であり、IEC 61131-3に準拠したプログラム開発環境を提供します。これにより、異なるハードウェア間での移植性が高く、統一した開発環境を実現することができます。
3.主なPLCメーカーの一覧
(1)日本の主要PLCメーカーと特徴
【表2 主な国内メーカー】
メーカー | 主な特徴・強み |
三菱電機 | 国内トップシェア、モーターやタッチパネルなどの周辺機器も豊富 |
オムロン | FA制御システムにおいて、PLC以外も含めた統合開発に強み |
キーエンス | 開発環境のユーザビリティ、デバッグの効率化など、使いやすさを重視 |
横河電機 | DCS技術を活かしたプロセス制御分野での強み |
富士電機 | 電力制御やビル管理向けのPLCを提供 |
パナソニック | 小型PLCを中心に、コンパクトな装置向け製品が充実 |
(2)海外の主要PLCメーカーと特徴
【表3 主な海外メーカー】
メーカー | 主な特徴・強み |
Siemens | 世界シェアNo.1、大規模システム統合に優れる |
Rockwell Automation | 北米市場のリーダー、プロセス制御に強み |
Schneider Electric | エネルギーマネジメントと統合されたPLCを提供 |
Beckhoff | PCベース制御の先駆者、柔軟な自動化ソリューションを展開 |
ABB | 産業用PCとの統合技術に優れ、ロボティクスにも強み |
4.これからのPLC
従来のPLCは、設備単体の制御を中心に活用されてきました。
しかし、スマート工場のように、企業全体の生産性向上を目指す環境においては、PLCにさらなる付加価値を加えることが求められています。AIやIoTとの連携を通じ、制御技術自体が付加価値を生み出す時代となりつつあります。そのため、これまでのPLCの使い方にとらわれず、新たな技術と組み合わせた柔軟な制御システムの構築が重要です。
今後もこれらの技術を活用したPLCの進化が求められ、企業の競争力向上を支える重要な要素となるでしょう。
(アイアール技術者教育研究所 I・T)
《引用文献、参考文献》
- *1) PR Newswire(WEBサイト)
Programmable Logic Controller (PLC) Market to Grow by USD 3.83 Billion (2024-2028), Driven by Compact Automation Demand and AI-Redefining the Market Landscape – Technavio