【センサのお話】知りたいモノと計測するモノ(PMセンサで考える)

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PMセンサーの解説(排ガスとPM2.5)

現在、PMセンサと呼ばれている量産のセンサは、PM(Particulate Matter)の量を計測していません。
センサでは、知りたいものと実際に計測するものは異なり、計測する物理量との相関関係を用います。
このためセンサの原理設計にあたり、環境耐性とともに、必要精度(設計目標精度)がキーになります。

 

PMセンサの目的

現在、車両に搭載されているPMセンサの目的は、OBD規制(on-board diagnosis;新車時の排ガス規制への適合だけでなく、ユーザーの使用中に規制値を超える劣化を故障診断し、故障ランプで表示できなければならない)への適合です。
車両におけるセンサの別の使い方としては、センサ検出値をフィードバック制御に用いるという場合がありますが、PMセンサについてはそのような適用例はありません。

OBD規制対応としてPMセンサに必要な精度としては、OBDで表示が義務付けられている規制値越えレベル(例えば規制値の1.4倍)を判別できる精度が必要になります。

現在のOBD規制値レベルにおけるPMセンサの使われ方としては、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)の故障診断を行い、DPFの故障レベル(焼損・捕集効率低下レベル)と、排出PM悪化の相関からPM低減機能の故障診断を行い、故障ランプで表示するというものです。

 

PMセンサの原理

現在自動車用で適用されているPMセンサは、上述のような目的で使用されているため、PMの量を直接計測するものではありません。
自動車用として量産されているPMセンサの例では、センサの抵抗体に付着した排ガスによって電流が流れやすくなり、この電流レベルがある閾値を越える時間を計測しています。
すなわち知りたいものと実際に計測するもの相関関係は、以下のようになっています。

‘ほぼ’と表現しているところが、相関性の精度に関係しているところです。

  • 知りたいモノ:排出PMがOBD規制値を越えたかどうか
  • →排出PM濃度は、DPFの焼損率にほぼ比例する
  • →実際のPMの成分には、サルフェートやHCなどもあるが、PM濃度は、ほぼスート(すす)濃度に比例する
  • →PMセンサに付着するスート濃度と抵抗体の抵抗低下はほぼ比例する
  • →抵抗低下により電流が流れやすくなって、ある閾値以上になる時間はスー濃度とほぼ逆比例する

実際のセンサの設計にあったては、上記の相関にノイズとして影響を与える因子を分析して、知りたいモノを正しく知ることができるか検証しなければなりません。
PMの規制値の単位は、g/km(乗用車)又はg/kWh(トラック)、すなわち距離当たり排出重量又は出力・時間当たり排出量です。規制値及びOBD規制値が、厳しくなった場合には、センサの精度のレベルを上げるか、センサ原理を変えなければなりません。

 

PNセンサの原理

PM10やPM2.5と呼ばれるPMの10や2.5は、ミクロンμm単位で、PM粒子最大径を表しますが、呼吸により肺にとどまる有害なPMは粒子径の小さいPMです。
PM規制ではPMの排出重量を規制していますが、同一排出量でもより小さい重量のPMを規制しようと導入されたのが”PN規制”Particulate Number、PM粒子の数の規制)です。
PM粒子数が多いほどPM粒子の大きさは小さいという考えです。

欧州では既に2014年から導入済みですが、レベルがさらに厳しくなるまでは、PMの排出量を大幅低減することで、数の規制値の方もクリアできます。PM及びPNの規制が厳しくなった場合には、いよいよPMの量や数そのものの計測が必要となります。
現在開発中のPNセンサの原理の例としては、PM粒子をコロナ放電により放電されたプラスイオンにより荷電し、その動きにより発生する電流を高感度電流計により検出し、PMの数を検出するというものがあります。

センサのほとんどの例では、知りたいモノと電気的特性の計測値の相関を用いていますが、ノイズ因子が多い場合にはそもそも知りたいモノは何で、知りたいモノと相関の強いノイズに対してロバスト(頑健)なセンサ原理は何だろうか?と考え、センサ原理の考案・設計をしなければなりません。
 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
 


☆各種センサ技術に関する特許調査・技術情報調査は日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。


 

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