【早わかり電子回路】オペアンプとは?機能・特性・使い方など基礎知識をわかりやすく解説

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オペアンプ

電子回路を構成する部品に、「オペアンプ」(OPアンプ)があります。

オペアンプ(Operational Amplifier、演算増幅器)とは、微弱な電気信号を増幅することができる集積回路(IC)です。アナログICとしては、最も基本的なICです。
また、オペアンプは、アナログ回路あるいはデジタル/アナログ混在回路のなかで最も基本的な構成要素の一つといえます。装置や機器の中で、CPUなどによりデジタル処理される部分が多くなっても、入力される信号が微小なアナログ信号ならオペアンプが使用される場合がほとんどです。
例えば、携帯型音楽プレーヤーで音楽を人間の耳に聞こえる音量まで増幅するのに使用されていたりします。

今回は、オペアンプの基礎知識について詳しく見ていきましょう。

1.オペアンプの機能

まず、オペアンプの働き(機能)には、大まかに次のような例があります。

  • 増幅:入力された信号を大きく増幅することができます。
  • フィルタリング:入力信号からノイズを除去することができます。
  • 信号変換:電流や周波数の変化を電圧の変化に変換することができます。
  • 信号処理:信号の合成や微分、積分などができます。
  • 発振:いろいろな波形の信号を繰り返し生成することができます。

 
次に、オペアンプの基本性能についてみていきましょう。図1に、オペアンプの回路記号を示します。
図1のように、オペアンプには2本の入力端子(反転入力、非反転入力)1本の出力端子があり、入力端子間の電圧の差を増幅し出力するのがオペアンプの基本的な性質といえます。

オペアンプの回路記号
【図1 オペアンプの回路記号】

 
理想的なオペアンプは、二つの入力ピンの電圧差を無限大倍に増幅します。また、出力インピーダンスは、ゼロとなり、入力インピーダンスは、無限大となります。周波数特性も、無限大の周波数まで増幅できます。
出力インピーダンスが低いということは、次に接続する回路に影響を与えにくくなります。入力インピーダンスが高いということは、入力側に接続する回路動作に影響を与えにくいということになります。

オペアンプは、正電源と負電源を用いて使用しますが、最近は、単電源(正電源のみ)で使用するICも多くなっています。単電源の場合は、負電源は、GND端子になります。
オペアンプは、2つの入力端子、+入力端子と-入力端子を持っています。
+入力が-入力より大きい電圧の時には、出力電圧Voは、プラス側に振れます。
反対に、-入力が+入力より大きいときには、出力電圧Voは、マイナス側に振れます。
差を増幅しているので、差動増幅器といえます。
 

2.オペアンプ(IC)の電気的特性

オペアンプはICなので、電気的特性があります。ここでは、特徴的なものを紹介します。

(1)入力オフセッ卜電圧

理想的なオペアンプでは、入力端子を両方ともグラウンド電位にすると、出力電圧は0Vになります。
しかし、実際のオペアンプでは、0Vにはなりません。これは、オペアンプ内部の差動卜ランジス夕の平衡が完全にはとれていないことに起因します。
逆に、出力電圧を0Vにすると差動入力の間にある程度の直流電圧が残ります。これを「入力オフセッ卜電圧」といい、普通は数mV位です。この誤差電圧を打ち消すために補償回路を付加することがあります。汎用のオペアンプには零調整端子があり、これに可変抵抗器を接続して出力電圧を0Vに調整することができます。これを「零調整」、あるいは「オフセッ卜調整」といいます。
入力オフセッ卜電圧は、温度によってわずかながら変化し(温度ドリフト)、その値は数μV℃位です。
 

(2)入力バイアス電流

理想的なオペアンプの入力インピーダンスは無限大であり、入力電流は流れないことになります。
しかし、現実のアンプは動作させるためにわずかな入力電流が流れます。この電流を「入力バイアス電流」といいます。
差動入力段にバイポーラトランジスタを使用している場合は、比較的大きな電流が流れ(数十nA、ナノアンペア)、FET入力段タイプのオペアンプではこの値は非常に小さくなります(数十pA、ピコアンペア)。
 

(3)同相入力範囲

オペアンプが動作できる入力電圧Vin+、Vin―のそれぞれの範囲です。一般に電源電圧の内側に限られます。
また、単電源用オペアンプは、負電源側が電源電圧いっぱいまで動作可能に作られています。
 

(4)同相除去比(CRMM)

オペアンプは、理想的には差動入力電圧Vin+ ―(引く)Vin-によって動作し、同相電圧(それぞれの入力に共通に加わる電圧)の影響を受けません。
しかし、現実には若干の影響を受けるので、その除去能力を同相除去比CRMM(Common Mode Rejection Ratio)として規定しています。この値が大きいほど外来ノイズに影響されにくいと言えます。
 

(5)開ループゲイン

理想的なオペアンプは、差動入力電圧Vin+ ―(引く)Vin-を無限大に増幅します。これを「開ループゲイン」と呼びます。
実際には、一般的な汎用オペアンプで、1万から10万倍(80~100dB)の大きな増幅率を持っています。
開ループゲインが不足すると、理想の動作からの誤差が大きくなります。
 

(6)周波数特性とGB積

理想なオペアンプは、無限大の周波数まで増幅できることになっていますが、実際のオペアンプで増幅できる周波数には限界があります。
負帰還(負フィードバック)をかけずオペアンプ入力電圧を一定にしておき、周波数を変化させたときの増幅度の変化を「開ループ周波数特性」といいます。

図2のグラフは、開ループ周波数特性の例を示します。
直流から低周波では、オペアンプのゲインは大きく平坦ですが、周波数が高くなるに従ってゲインが小さくなります。これを、「オペアンプの周波数特性」と呼びます。

図2において、周波数が1kHzのときのゲインは、60dBで、10kHzの時は、40dBというように周波数が10倍になるとゲインが1/10になっていきます。このように一定の割合でゲインが減る区間では、帯域幅とゲインの積が一定となり、この値を「利得帯域幅積(GB積)」といいます。また、ゲインが0(l倍)となる周波数を「ユニティゲイン周波数」といいます。

周波数特性とGB積
【図2 開ループ周波数特性】

 

(7)スルーレー卜

スルーレート」は、1μsあたりに変化できる出力電圧の最大値を表します。これは、入力信号の変化に対して出力電圧が迫随できる度合いを示したもので、オペアンプの使用できる周波数帯域内にあっても、大振幅信号を取扱う場合は、この影響を受けるので考慮が必要です。

図3のように、入力電圧がステップ的に変化したとき、出力電圧は、台形になります。
波形がずれるのは、入力があってから出力するまでに時間がかかるためで、出力するまでに要する時間を表すのにスルーレートが用いられます。

スルーレー卜
【図3 波形のずれ(台形の出力電圧)】

 

3.オペアンプの使い方

オペアンプの基本的な使用法についてみていきましょう。

(1)反転増幅器

反転増幅器は、オペアンプの最も基本的な回路形式です。反転増幅器は、入力 Viを増幅して符号を逆にしたものを出力 Voとする回路です。
図4は、反転増幅器の動作を説明するための図です。

反転増幅器の動作
【図4 反転増幅器の動作1】

 

図4において、数字の順に考えてみます。

  • (1)入力Viが正の方向で入ったとすると、
  • (2)A点には、R1経由で小さい正の電圧がかかります。その結果、A点(―入力端子)が、+入力端子に対して正になります。
  • (3)オペアンプの―入力端子が正になると、オペアンプの増幅作用により出力電圧は、大きい負の値になります。
  • (4)この大きい負の値がR2経由でA点に戻ります。

オペアンプは、大きな増幅率を持っているので、入力端子間電圧は、ほとんど0でよいです。したがって、負帰還されているオペアンプ回路では、入出力端子間電圧が0となるように出力電圧Voが決まります
負帰還がかかっているオペアンプ回路で、結果的に入力電圧差が0となることを、「仮想短絡」(imaginary short)と呼びます。

図4では、回路のループがわかりにくいので、キルヒホッフの法則(*)を使いやすいように書き換えて、図5に示します。

(*)キルヒホッフの法則:任意の閉回路において、それを構成する抵抗の電圧降下、起電力(同一方向に測定)の総和はゼロである。

反転増幅器の動作-2
【図5 反転増幅器の動作2】

 
 
図5において、D点を出発点に時計回りに電圧をたどります。
キルヒホッフの法則により、
 Vi―V1―V2―Vo=0

また、オームの法則により、
 V1=I×R1、V2=I×R2

これらの式から、Iについて整理すると、
 I=(Vi―Vo)/(R1+R2)

A点の電圧VAは、
 VA=Vi―I×R1=Vi―R1×(Vi―Vo)/(R1+R2) 
ここで、仮想短絡によりVA=0なので
 Vi=R1×(Vi―Vo)/(R1+R2) 

Voについて整理すると、
Vo=―Vi×R2/R1 が得られます。

すなわち、反転増幅器の出力Voは、入力Viに ―R2/R1倍を乗じたものになります。
 

(2)非反転増幅器

「非反転増幅器」は、入力信号と出力信号の極性が同じ極性になる増幅回路です。
交流を入力した場合は入力信号と出力信号の位相は同位相になります。
図6は、非反転増幅器の動作を説明するための図です。

非反転増幅器の動作
【図6 非反転増幅器の動作】

図6において、数字の順に考えてみます。

  • (1)入力Viが正の方向で入ったとすると、
  • (2)オペアンプの+入力端子に対して正の電圧なので、出力電圧Voは、大きな正の電圧になります。
  • (3)出力電圧Voが抵抗R2とR1で分圧されて、オペアンプの―入力端子に同じ極性で戻ってきます。

―入力端子の電圧が上昇すると、オペアンプの入力端子間電圧差が小さくなる方向なので、この回路は負帰還となります。オペアンプの出力電圧Voは、入力端子間電圧差が0になるまで、上昇します。
結果的には、出力電圧VoのR1とR2の分圧点が入力電圧Viに等しくなります。

従って、その関係は、
 Vo×R1/(R1+R2)=Vi
すなわち、
 Vo=Vi×(R1+R2)/R1
が得られます。

R1とR2の取り方によって、電圧増幅率を変えられることがわかります。
非反転増幅回路のゲインは1以上にしか設定できません。
つまり反転増幅回路と違い、入力信号を減衰させることは出来ません
また、非反転増幅回路の入力インピーダンスは非常に高く、ほぼオペアンプ自体の入力インピーダンスになります。
 

(3)ボルテージフォロワー

ボルテージフォロワー」は、入力電圧と同じ電圧を出力する回路です。入力インピーダンスが高くて、出力インピーダンスが低いという特徴があります。

図7は、オペアンプを用いたボルテージフォロワーの回路を示しています。

オペアンプを用いたボルテージフォロワーの回路
【図7 オペアンプを用いたボルテージフォロワーの回路】

図7のようにボルテージフォロワーは、オペアンプの+入力端子に信号を直接入力し、オペアンプの出力端子と―入力端子を直接接続した形をしています。仮想短絡により、+入力端子、―入力端子と出力端子の電位がすべて等しくなるので、Vo=Viとなります。
ボルテージフォロワーは、回路と回路を接続する際、お互いに影響を及ぼさないように回路と回路の間に挿入されるバッファとしてよく使用されます。反転増幅器のように入力インピーダンスが低くなるような回路を後段に複数段接続する際に、ボルテージフォロワーを挿入して電圧が低下しないようにすることが多いです。

 

以上、今回はオペアンプに関する基本的な知識を解説しました。
オペアンプは、アナログ信号を処理する場合に様々な活用をされ、必要不可欠なICとなっているのです。

次回は、増幅回路以外のオペアンプの応用回路(フィルタリング/信号変換/信号処理/発振)を解説します。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)

 

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