【医薬品製剤入門】製錠・打錠の基礎知識(打錠障害の種類など)
医薬品の錠剤は、医薬品と添加物の混合物またはそれらを顆粒等にしたものを製錠・打錠することによって製造されます。錠剤はよく見かける剤形といえますが、実に様々な種類がありますね。
今回は、医薬品製剤工程のうち「製錠」「打錠」についてまとめてみました。
目次
1.製錠・打錠とは?
医薬品の中で最も多い製剤として、錠剤が挙げられます。
錠剤を製造する操作を「製錠」といい、特に圧力を加えて錠剤を製造することを「打錠」といいます。
製錠とは、医薬品と添加物の混合物またはそれらを顆粒等にしたものを圧縮する(打錠)または湿潤練合物を型に充填・乾燥することにより製剤を得ることです。
口腔内崩壊錠(OD錠)のいくつかは、湿った粉体を打錠し、乾燥によって製造されるもので、「湿性錠剤」と呼ばれる製剤です。湿性錠剤は、成形(打錠)後に乾燥するため、内部に多くの細孔を有する(多孔構造)錠剤となり、服用により水分が速やかに浸透し、崩壊します。
2.製錠・打錠の目的
製錠・打錠は、主に下記のような目的のために行われる工程です。
- 取り扱いが容易になる
- 成分含量均一な製剤品が得られる
- 製法が容易で、経済的である
- 味のマスキング、腸溶性などの機能を付加できる など
3.錠剤の基本知識
製錠・打錠によって得られる錠剤の基本的な知識は、当連載の錠剤の基礎知識の回にまとめています。
- 錠剤のメリット・デメリット
- 錠剤の種類
- 錠剤に必要な製材特性
- 錠剤の製造方法
- 錠剤の製剤試験法
などの概要については、このページをご参照ください。
4.製錠・打錠機
製錠・打錠に用いられる機械としては、下記のようなものが用いられます。
- 単発式打錠機
- ロータリー式打錠機
一般的な打錠工程は、医薬品混合部を臼に充填し、杵により圧縮、上杵を挙げて抜圧、下杵で錠剤を排出、というプロセスで成り立っています。
5.主な打錠障害の種類と原因
打錠障害は、製造の際に錠剤が欠けたりする等の現象で、製剤設計やスケールアップ時に起きやすいとされています。
打錠障害には下記のようなものがあります。
(1)キャッピング
キャッピングとは、錠剤の上側または下側が剥がれる現象をいいます。
粉末等が乾燥し過ぎていたり、結合剤が足りない場合、圧力不足の場合に起きるとされています。
(2)スティッキング
スティッキングとは、錠剤の表面の一部が剥がれて、杵に付着してしまう現象です。
水分が多過ぎたり、結合剤が過剰の場合が考えられます。
(3)バインディング
バインディングとは、錠剤側面に傷が入る現象です。
臼との摩擦が原因と考えられます。水分、結合剤が多い場合に起こると考えられています。
(4)ラミネーション
ラミネーションとは錠剤の中間部が層状に剥がれる現象をいいます。
キャッピングと同様な原因が考えられます。
打錠障害を回避するには、添加剤の選択、造粒方法や打錠機の運転方法等を検討する必要があります。
6.製錠・打錠に関する特許・文献の調査
(1)製錠・打錠に関する特許検索
J-Platpatを用いて特許を調査してみました。(調査日:2021.10.27)
① キーワードによる検索
単純なキーワード検索のみでは、2000件以上の件数がヒットします。
医薬品製剤関する分類「A61K9」とAND演算した件数すると1300件程度になりました。
- 製錠/CL + 打錠/CL ⇒ 2119件
- [製錠/CL+打錠/CL] * A61K9/00/FI ⇒ 1304件
② 特許分類(FI)による検索
製剤・打錠に関する特許分類(FI)として、A61K9/20[特別な物理的形態によって特徴づけられた医薬品の製剤 ・丸剤,ひし形剤または錠剤]がありますので、このFIによる検索もしてみました。
- A61K9/20/FI * [製錠/CL+打錠/CL] ⇒ 1264件
③ Fタームによる検索
製錠のFタームとして4C076GG14[医薬品製剤 製法 ・固形製剤の製法 ・・成形法 ・・・製錠]があります。
- 4C076GG14/FT ⇒ 3129件
これらの調査結果の中には、「錠剤の製造方法および打錠障害の低減方法」「アジルサルタン含有湿製錠剤及びその製造方法」「打錠障害を生じない錠剤製剤」「高速直接打錠による錠剤の製造方法」等々多数の特許が検出されました。
(2)製錠・打錠に関する文献調査
J-STAGEを用いて文献調査を行ってみました。(調査日:2021.10.27)
- 全文検索: 製錠・打錠 ⇒ 1253件
- 抄録検索: 製錠・打錠 ⇒ 20件
- 全文検索: 製錠・打錠 * 医薬 ⇒ 753件
- 抄録検索: 製錠・打錠 * 医薬 ⇒ 11件
文献タイトルとして、「イブプロフェンを用いた錠剤のスティッキングに及ぼす打錠条件の評価」「創薬段階における微量粉体試料による打錠特性の予測とその検証」「トロンビンの製錠化における薬剤学的特性と臨床試用に関する研究」「錠剤のスティッキングに及ぼす打錠圧力及び臼壁面圧力の影響」「コンプライアンス向上と打錠障害防止を目的とした酸化マグネシウム錠の開発」などが見受けられました。
特許・文献の具体的な内容にご興味のある方は、ぜひ実際に検索して確かめてみましょう。
ということで今回は、医薬品製剤技術のうち「製錠・打錠」に関する基礎知識をご紹介しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)