3分でわかる エチレンとエタノールの違いと覚え方

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エチレンとエタノールの違い

新聞記事や会話の中で「エチレン」あるいは「エタノール」という化学用語が出てきたとしましょう。
その意味を瞬時に理解できる方もおられる一方で、類似の他の用語と区別がつかず混乱してしまう方もおられるかもしれません。

今回は、エチレンとエタノールの違いを出来るだけわかりやすく解説します。

 

1.エチレンとエタノールの違い

エチレン (ethylene)」も「エタノール (ethanol)」も、化学の分類上はC2化合物に属しています。
“C2”というのは2個の炭素原子が隣り合った構造で構成されている化合物群のことです。英語表記の“eth”の部分がC2化合物であることを表しています。
代表的なC2化合物を、比較しやすい形で、表1にまとめてみました。

 

【表1 代表的なC2化合物】
代表的なC2化合物(エタン/エチレン/エタノール/エチレングリコール)の化学式・構造式・分類・相状態・沸点・主用途

 

この中でエチレンとエタノールに関しては、次のように覚えておくと混乱が防げるかもしれません。

“エチレンは「ポリエチレン」というポリマーの原料になる。ポリエチレンは、下式のように、エチレンが重合により多数連結した構造を有している。従って、エチレンは連結するための手(結合)を内部に抱えている。即ち、炭素間の二重結合を持つ。”

 
エチレン 重合 ポリエチレン
 

“エタノールはお酒の成分である。お酒が水割りされるように、エタノールは水との親和性が高くて水によく溶ける。これは、下式のように、エタノールが水と同じくO-H結合を有するためである“

 
エタノール 高い親和性 水

 

2.植物ホルモンとしてのエチレン

エチレンは石油化学工業の中核をなす生産物です。石油化学は米国で1920年に世界で初めて、日本では1958年に商業生産が開始された近代産業ですので、工業製品としてのエチレンの歴史はそれほど長くはありません。
しかし、エチレン自体は太古の昔から存在し、人類に大きな影響を与えてきた化合物です。ご存じの方も多いと思いますが、エチレンは果実の成熟等を促進する植物ホルモンでもあります。オーキシン等の他の植物ホルモンとは異なり、気体という特徴を有しています。
エチレンは植物内で式1のルートで合成されるとされています1)

 
メチオニン エチレン
 

植物ホルモンとしてのエチレンの作用機構は完全には解明されていませんが、エチレンの持つ炭素間二重結合への金属イオンの配位が重要な役割を果たしているのは確実のようです2)
重合によりポリエチレンになるケースとは異なるものの、ここでも二重結合がカギを握っています。

二重結合の存在により高機能を発揮するのがエチレンだと覚えましょう。

 

3.エタノールとバイオエタノール

エタノールは、穀物等に由来する糖成分を酵母によって発酵させることにより得られます
従って、エタノールと言えばバイオ系のエタノールがもともと主流なのですが、近年「バイオエタノール」という用語が登場するようになりました。これはエタノールが酒類成分や消毒用薬剤としてだけではなく、自動車燃料にまで用途を広げたことに伴うものです。

[※関連記事:バイオ燃料とは?主な種類と原料、処理工程、課題と可能性などの要点まとめ解説

二酸化炭素排出量を削減するためのバイオ燃料として、エタノールは既に大きな役割を果たしています。
エタノールは米国ではエタノールの形でそのままガソリンに混合され、日本では式2に示す反応により、「ETBE」(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)という物質に転換した上でガソリンに混合されています3)。これはETBEの方がエタノールよりもガソリンとの親和性が高いためです。

 
ETBE

 

エタノールからポリエチレンを得る?注目の「バイオポリエチレン」とは

エタノールに関して最近注目されているのは、式3のようにエタノールを脱水してエチレンとし、これからポリエチレンを得るプロセスです。石油系原料を使用せずにポリエチレンが得られるため「バイオポリエチレン」と呼ばれており、既に工業的に生産されています。ただ石油系よりもかなり高価格とされています。

 
エタノール 脱水反応 エチレン
 

以上のように、エチレンとエタノールは識別が必要な一方で、同じC2化合物として切り離せない密接な関係にあることをご理解下さい。
 

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


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