電解メッキ、無電解メッキ、そしてカニゼンメッキ《表面処理の用語解説》
1.電解メッキと無電解メッキの違いとは?
メッキ(鍍金)には、「電解メッキ(電気メッキ)」と「無電解メッキ」があります。
「電解メッキ」では、メッキを付ける母材を電池の陰極側につなげ、陰極として水溶液に入れ、一方、陽極はメッキ金属とし、メッキ金属が水溶液中に溶解し母材表面に析出するという原理を用いています。
こうした原理から、母材と陽極メッキ金属の位置関係により母材への析出量、即ちメッキ厚さが変わります。そのため、母材をつるして回転するなど、メッキ厚を均一にする工夫をしています。
これに対して「無電解メッキ」では、触媒反応を利用するためメッキは均一に母材を被覆します。
2.メッキの用途
そもそもメッキを使用する目的は、色々あります。
例えば、装飾、防錆、表面硬度向上、耐摩耗性向上あるいはハンダ性向上などです。
工業製品においては、亜鉛メッキに対して防錆効果さらにを上げる場合に(電解)ニッケルメッキを用いる場合や、硬質クロムメッキ等に対して耐摩耗性をさらに上げるために無電解ニッケルメッキを用いる場合などがあります。
3.無電解ニッケルメッキとカニゼンメッキ
「カニゼンメッキ」と呼ばれる無電解ニッケルメッキがあります。
カニゼンメッキは、日本カニゼン株式会社の商品名です。
無電解メッキでは、上述したように電解メッキのような電池的反応ではなく触媒反応を用いますが、C(K)atalytic(触媒)、Nickel(ニッケル)、Generation(生成)の頭文字をとり”Kanigen”(カニゼン)と命名されたということです。*1)
一般的に用いられる無電解ニッケルめっきでは、ニッケルにリンを混ぜたNi‐P合金を使います。母材へのメッキ処理後の熱処理により表面硬度を上げることが可能で、400℃まで熱処理温度を上げることにより硬度Hv1000前後程度まで上げることができます。ただし通常、母材となる部品は仕上げ加工後の熱処理をしたのちメッキ処理を行いますので、メッキ処理後の熱処理による母材への熱影響を考慮して、メッキ後熱処理の温度を設定しなければなりません。
コンポジットメッキのメリット
無電解ニッケルメッキでは、メッキ皮膜中にサブミクロンの粒子を分散させたコンポジットメッキ(複合皮膜メッキ)とすることが可能です。
分散させる粒子としては、テフロン(PTFE)、セラミックSiC、ボロンなどがあります。
テフロンの自己潤滑性(潤滑油なしでも摺動性良)やセラミックの耐摩耗特性を複合できます。
ボロンを分散させた場合には、メッキ後の熱処理なしでもHv700程度の表面硬度が得られるため、メッキ後の熱処理なしという仕様の設定が可能です。この場合には、メッキ後熱処理時の母材部品の熱影響を考慮する必要がありません。
以上、今回はメッキに関する用語についてご紹介しました。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)
《引用文献、参考文献》
- 1)日本カニゼン株式会社(WEBサイト)「カニゼンヒストリー」