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LTspiceで学ぶシグナル・パワーインテグリティ設計・解析の基礎(セミナー)
2024/12/12(木)10:00~17:00
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今回は、電子回路部品のうち最も基本となる部品の一つである「抵抗器」(単に「抵抗」と呼ぶことが多い)について説明します。
電子回路を構成する部品のうち、抵抗はコンデンサと並んで数多く使用されており、例えばスマートフォンの内部には、数百個ものチップ抵抗(例えばタテヨコが0.4×0.2ミリの表面実装可能な抵抗など)が使用されているようです。抵抗は、普段我々が目にすることは少ないながらも、無くてはならない電子回路部品なのです。
目次
それでは、主な抵抗の種類を見ていきましょう。
まず、抵抗を大まかに形状で分けると、抵抗本体にリード線が付けられている「リードタイプ」と、基板表面に直接実装する「面実装タイプ」に分かれます。
安定したセラミック材料の表面に抵抗体として炭素被膜を装着した抵抗です。
小電力用の抵抗では多く使用されており、価格も低いです。
抵抗値の精度は、±5%や、±10%のものが多く使用されています。
温度係数は、あまりよくないので精密な用途には適していません。
炭素被膜抵抗の炭素被膜の代わりに、Ni-Crなどの金属材料を装着した抵抗です。
炭素被膜抵抗に比べて温度特性や直線性に優れていて高精度のものが作れます。
±1%~±0.1%程度のものも可能です。
反面、炭素被膜抵抗よりは高価となります。
金属皮膜抵抗の金属皮膜の代わりに、酸化スズなどの酸化金属材料を装着した抵抗です。
酸化金属の皮膜が熱によって燃焼することがないため、数W程度の中電力用として多く用いられています。
酸化金属材料は、燃焼せず発熱するため、抵抗の周囲の部品に発熱の影響を与えることになるので、実装には注意が必要です。
金属の細い線(マンガンやニクロム線など)をセラミックのボビンなどに巻き付けた抵抗です。
低い抵抗値で大電力(数100Wのものもある)を得ることができます。温度係数が小さく耐熱性が高いです。
周波数特性が悪いので高周波回路には適していません。
抵抗材料は、メタルグレーズ。抵抗金属や酸化ルテニウム等の金属酸化物とガラスを混合し、アルミナやセラミック等に高温で焼結させたものを抵抗体とした抵抗です。
基板表面に直接実装できるような電極形状を持ち、小型のものが多くなります。
スマートフォンでは、ほとんどこの抵抗が使用されています。
ここからは、抵抗の使用法を見ていきましょう。
まず、電子回路における、抵抗の役割とは何でしょうか?
抵抗は、電流を制限したり、電圧を分圧したり、電流を検出したりするために用いられます。
ここで、学校で習った「オームの法則」を思い出してみましょう。
オームの法則とは、電圧をV、単位はV(ボルト)、電流をI、単位はA(アンペア)とすると、
V=R×I ・・・(1)
で表される関係のことです。
ここでRは、電圧Vと電流Iの比例定数で、これを電気抵抗または単に抵抗(単位はΩ)と呼んでいます。
(Ωは、オームと読む)
上記の回路で電圧Vが1V、電流Iが1Aだとすると、式(1)から抵抗Rは、
R=V÷I=1(V)÷1(A)=1(Ω) となります。
1Ωとは、1Vの電圧を加えたとき1Aの電流が流れる抵抗値ということになります。
さらに、この時、抵抗Rで消費される電力W(単位はワット)は、
W=電圧×電流=V×I=R×I×I となり、(V=R×Iなので)抵抗値と抵抗を流れる電流値だけで求められることがわかります。
従って、電力Wは、1(Ω)×1(A)×1(A)=1(W)となります。
抵抗の定格電力(抵抗の電力に対する仕様)は、1W以上のものが必要となります。
実際には、安全性を考慮して、定格電力2W以上の抵抗が用いられます。
次に具体的な回路で見てみましょう。
下図は、LEDを点灯させるための回路です。
LEDが点灯するためには、その両端に2Vの電圧をかける必要があるとします。
まず、(a)では、LEDには、2Vでよいのに5Vの電圧がかかることになり、電流が流れすぎて故障する可能性もあります。
そこで、(b)のように抵抗Rを電源とLEDの間に入れて、LEDにかかる電圧を 5V-2V=3V分だけ抵抗で消費するようにします。
この抵抗の抵抗値は、LEDを点灯させるのに必要な電流値を0.01Aとすると、
式(1)より、 R=V/Iなので、 R=3/0.01=300
つまり抵抗値300Ωの抵抗が必要になります。
通常は、LEDを点灯させるのに必要な電圧と電流がLEDの規格で決まっているので、ここから求めます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
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