3分でわかる技術の超キホン ディレイラインとは?役割・構造・使い方がこれでわかる!
今回は電子回路部品「ディレイライン」について説明します。
1.ディレイラインとは?
電子回路を構成する部品のなかに、ディレイライン(delay line)という部品があります。
和訳で”遅延線”ともいわれています。
名前の通り、電気信号の伝搬を遅くする部品です。
一般には、インダクタンスとキャパシタンス(コイルとコンデンサ)で構成されている「電磁遅延線」が多いですが、電気信号を超音波に変換しガラス・ブロックの中を伝播させ、再び電気信号に変換する「ガラス遅延線」や、磁歪振動の伝搬を利用したもの、半導体デバイスを利用したものなど、色々な種類のディレイラインがあります。
2.ディレイラインの役割
電気信号が伝搬する速度は有限です。
したがって、経路の異なるところを伝送されてきた複数の電気信号の位相を揃えるためには、先に進んでいる信号を遅らせる以外にありません。(遅れてきた信号を速くすることはできません。)
このような場合、特定の信号を必要な時間だけ遅らせることができれば、電気信号の位相を揃えられます。
【図1 ディレイラインによる位相合わせ】
図1は、ディレイラインを用いた信号の位相を合わせる様子を示した図です。
図より、信号Aは、信号Bより時間Tdだけ先にパルスが立ち上がっています。
そこで、信号Aを時間Tdだけ遅らせるディレイラインを通過させれば、信号Aと信号Bを同じタイミングで立ち上がらせることができます。
このようにディレイラインは、信号間のタイミングを合わせたり、また逆に、信号間に時間差を持たせたりする場合に必要となります。
ディレイラインの機能としては、DC~数100MHz程度の信号の遅延伝送、一時的なパルス情報/アナログ情報の記憶保持、波形変換および符号化などがあります。
主にこれらの機能を活かし、アナログ回路・ディジタル回路に応用されています。
3.ディレイラインの構造
図2は、一般的な電磁遅延線のディレイラインの回路構成です。
はしご型の伝送回路網で構成されています。
【図2 ディレイラインの回路構成例】
ディレイラインは、同軸ケーブル(1m当たり約5nsの遅延時間がある)などでも構成できますが、長くなってしまうので、LとCで置き換えた形になっています。
遅延時間は、1nsから数100nsぐらいのものが多いです。
実際には、中間から信号を取り出して様々な遅延時間を得られるものやICと組み合わせて、使い勝手を良くしたものがあります。
4.ディレイラインの種類
ディレイラインの種類としては、主な以下の3つがあります。
- パッシブディレイライン:電源の不要な受動部品で構成されたディレイラインです。
- アクティブディレイライン:電源が必要で、外部のデジタルICを直接駆動可能です。
- プログラマブルディレイライン:遅延時間をプログラムで可変可能なディレイラインです。
5.ディレイラインの使い方・用途
ディレイラインの使用法は、当然ながら目的に合った性能のものを選ぶことですが、ディレイラインに求められる性能についてみてみましょう。
《ディレイラインに求められる性能とは?》
- 遅延時間が正確であること
- 周波数特性、位相特性が良いこと
- 特性インピーダンスが一定で伝送信号の反射が少ないこと
- 伝送損失が少ないこと
- 温度特性が良いこと
実際には、各ディレイラインのメーカの仕様書から目的に合った最適なものを選んでいきます。
最近は、小型の機器が多いので部品の大きさも重要な要素となるでしょう。
ディレイラインは、かつて、アナログ放送時代のテレビの輝度信号、色信号分離用のくし型フィルターにガラスを伝わる超音波信号を利用した1Hディレーラインなどとして使われていました。
また、BBD(BucketBrigadeDevice)という素子があり、オーディオのエコー回路等に使用されていました。
現在は、デジタル化されたディレイライン素子が多くなっていますが、信号を遅延させるという電子部品の必要性は無くなることはないでしょう。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)