3分でわかる技術の超キホン 単位 [dBm] とは?光ファイバの伝送損失を計算する

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光ファイバ通信の伝送損失を計算する

コロナ禍によってテレワークが叫ばれる今日この頃ですが、このテレワークに欠かせないのがパソコンなどの機器とインターネットです。

初期のインターネットは電話回線を利用しており、通信速度も遅かったのですが今は光回線のおかげで高速大容量の通信ができるようになりました。

最近はルーターを使用することで、Wi-Fiに代表される無線LANによりパソコンやスマホから手軽にインターネットに接続される方が多いかと思いますが、いずれにせよ光回線を利用しています。
現在のインターネットは光回線が主流で、総務省の情報通信統計データベースのインターネット普及率によると、令和元年には世帯あたりの利用状況が95%を超えております。
そう考えると、テレワークはまさに光回線、すなわち光ファイバで成り立っているといえます。

そこで今回のコラムでは、光ファイバ関連の業務等に携わる際によく使われている[dBm]という単位について、伝送損失を計算することを例に解説してみます。

 

1.光ファイバと伝送損失

伝送損失とは、通信における伝送路においての信号の劣化比率のことです。
すなわち光ファイバ通信における伝送損失とは、光のパワーが光ファイバ内を伝送する際に散乱や吸収等により減衰した比率になります。伝送損失を測定する際には伝送路の距離Lを考慮する必要がありますが、ここでは光パワーの減衰についてのみ述べています。

例えば、図1に示すように、入射光のパワーP1の光が光ファイバを伝送し、出射光のパワーが何らかの原因による損失により、P2になっていたとします。

伝送損失測定
 [図1 伝送損失測定のイメージ]

P1= 2[mW]、P2= 1[mW]のとき、単純に2[mW]-1[mW]= 1[mW]と劣化量を計算することはできますが、入射光を基準として出射光がどうなるかということを知りたいときには、入射光のパワーと出射光のパワーにあたる2つの量の相対的な関係を比率で表現する必要があります。

この比率の計算を簡便にするために対数を用いることが有効(*)になります。

 

2.デシベル[dB]について

光に限りませんが、信号パワーの相対的な差を表すための単位としてデシベル[dB]があります。
ベル[B]という単位に10-1 を意味する SI接頭語のデシ(記号: d)を付けたものになります。
ベルは基準となる物理量W1に対するその物理量W2の比を常用対数で表した量で、実用的電話の発明者であるアレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)の名前に由来しています。
ベルを 1/10 倍にしたデシベルの方が実用的であることから、現在ベル自体はほとんど使われておりません。

1[B] = Log10(W2/W1
1[B] = 10[dB]

ここで、Log10は 10 を底とする対数です。

 

3.[dBm]とは?

先に記述したように、デシベルにより2つの量の相対的な関係を簡便に表現することができます。

したがって、光ファイバ通信における光ファイバの減衰比率は、入射光のパワーがP1’[dBm]、出射光のパワーが P2’[dBm]のとき、(P2’- P1’)[dB] となります。
実際の測定時においては基準値である 0[dB]に相当する量を定義する必要があります。

そこで光ファイバ通信における伝送損失を測定する際には、1[mW]を 0[dB]の基準として1[mW]= 0[dBm]と定義します。(ちなみに1[W]を 0[dB]の基準としたときは、1[W]= 0[dBW]と定義されます。)

この定義を用いて実際に測定した光パワーP[mW]をP’[dBm]に換算し減衰比率を計算することが可能になります。

例えば、P1= 2[mW]、P2= 1[mW]のとき、減衰比率は3[dB]となります。

P1’=10 Log10 P1 、P2’=10 Log10 P2
Log10(P2’/ P1’)= Log10P2’-Log10P1
= 0 - 3
= -3

ただし、Log102 ≒0.3として計算しています。

以上より、3[dB]ダウンと耳にしたら、入射光に対する出射光のパワーが約半分になっていると理解してください。計算途中に出てきたように[dBm]はパワーを表す単位になります。
 


(*)対数を使うことが有効な理由

対数を使うことで非常に大きな桁数の値を小さな桁数で表現でき、乗除算を加減算に置換することが可能になり扱いやすくなります。

対数を用いた表現であるデシベルは音の強さを表す単位としてもよく使われており、”現在の騒音が○dB” と表示されている電光掲示板を目にする機会もあるかと思います。
デシベルは、特に電気工学や音響工学などの分野において利得の特性を評価するときや、ダイナミックレンジの大きな現象を扱う場合には頻繁に使われています。
とても便利なデシベルですが、デシベル自体は国際単位系(SI)では定義されておらず、その量と基準とする値を特定することを条件にSI単位と併用が可能(非SI単位)となっています。


 
(日本アイアール株式会社 N・S)


 

 

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