3分でわかる技術の超キホン D-アミノ酸を含む医薬品17選・簡潔にまとめて一挙紹介!

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医薬品

医薬品の中にはD-アミノ酸を含むものが意外にも多くあります。

医薬品のD-アミノ酸の役割はまだよくわかってはいないことが多いのですが、例えば、D-アミノ酸を構成成分とする医薬品は、生体内では酵素などによる分解がされにくくなり、その結果として効果が持続するなど、医薬品としてのメリットが予想・期待されています。

このコラムでは、D-アミノ酸を含む医薬品を抗生物質・抗菌剤を中心にピックアップしてご紹介します。
(※今回は「3分」では読み切れないかもしれません!)
 

D-アミノ酸を含む抗生物質・抗菌剤

①ポリミキシンB

ポリミキシンBは、緑膿菌、大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクター等のグラム陰性桿菌に対し、優れた抗菌作用を示す抗生物質です。
その作用機序としては、主として細菌細胞質膜の透過性に変化をきたすことにより、殺菌的に作用するとされています。Bacillus polymyxa またはその近縁菌が産生するポリミキシンは、A、B、C、D、E などが確認されています。その一つであるポリミキシンBは、D-フェニルアラニンを含有する環状ペプチドです。

ポリミキシンB
ポリミキシンB1 :R = 6-メチルオクタン酸、Dbu = L-α、γ-ジアミノ酪酸
ポリミキシンB2 :R = 6-メチルヘプタン酸、Dbu = L-α、γ-ジアミノ酪酸
 

②コリスチン(ポリミキシンE [オルドレブ] )

サイクリックポリペプチド系の抗菌薬であり、福島県の土壌中の有芽細胞菌から精製された新規の抗生物質として、1950 年に報告されました。
コリスチン(別名:ポリミキシンE)は、当初硫酸塩及び塩酸塩として開発されましたが、低毒性の誘導体が検索された結果、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS-Na)が選択されました。
コリスチンが細菌外膜に結合することによって、細菌細胞表層の透過性が上昇し、細胞内物質が流出することで殺菌活性を発揮するとされています。コリスチンは、D-ロイシンを含有する環状ペプチドです。

コリスチン
コリスチンAメタンスルホン酸ナトリウム:R=6-メチルオクタン酸
Dbu=L-α、γ-ジアミノブタン酸
R’=-CH2SO3Na
コリスチンBメタンスルホン酸ナトリウム:R=6-メチルヘプタン酸
Dbu=L-α、γ-ジアミノブタン酸
R’=-CH2SO3Na
コリスチンは、コリスチンAメタンスルホン酸ナトリウムおよびコリスチンBメタンスルホン酸ナトリウムの混合物です。
 

③ダプトマイシン(キュビシン)

ダプトマイシンは、新規の天然物質として見出された環状リポペプチドであり、Streptomyces roseosporus株の発酵産物に由来する新規クラスの抗生物質として開発されたものです。
グラム陽性菌に対し抗菌活性を示し、増殖期及び静止期にある他、抗菌薬感受性株及び耐性株にも活性が認められています。抗MRSA薬としての適応があります。ダプトマイシンも、D-アミノ酸や側鎖が特殊な非タンパク質性アミノ酸を含んだ構造をしています。

ダプトマイシン
 

④アクチノマイシンD(コスメゲン)

D-バリンを含む抗腫瘍性抗生物質です。
アクチノマイシンD は、ストレプトマイセス属(Streptomyces parvullus)によって産生されるアクチノマイシン混合物中の主成分で、DNA のGuanineと結合し、複合体をつくり、そのためDNA 依存性のRNA polymerase によるDNA の転写反応が阻害され、RNA 生成が抑制されることにあると考えられています。
適応となるがんとしては、ウイルムス腫瘍や小児固形腫瘍などが対象となっています。

アクチノマイシンD
 

⑤テイクソバクチン(teixobactin)

環状ペプチド構造を持った新規の抗生物質・テイクソバクチンが、2015年に発見されて話題となりました。
近年開発されたシステムを使って、培養した1万種類の細菌のなかから、ベータプロテオバクテリア網の細菌Eleftheria terraeが見つけ出され、この細菌が産生するデプシペプチド抗生物質がテイクソバクチンです。
耐性菌が生じにくいと考えられ、感染症治療に新たな光をもたらすと期待されています。
D-フェニルアラニン、D-グルタミン酸、D-イソロイシン、D-スレオニンといったD-アミノ酸を含む化学構造になっています。

[※テイクソバクチンについての説明はこちらのページも併せてご参照ください。]

テイクソバクチン
 

⑥バシトラシン(バラマイシン)

バシトラシンはBacillus subtilis、Bacillus licheniformisなどの培養液から得られるポリペプチド系抗生物質で9種ものバシトラシン類の混合物であり、主成分はバシトラシンAです。
種々のグラム陽性菌、グラム陰性菌及び放線菌、梅毒スピロヘータなどに対して広範囲な抗菌作用があり、その作用機序は細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を表すとされています。
化学構造としては、D-グルタミン酸、D-フェニルアラニン、D-アスパラギン酸を含む環状ペプチドです。

バシトラシン
 

⑦バリノマイシン

放線菌から得られる抗生物質です。
L-バリン・D-α-ヒドロキシイソ吉草酸・D-バリン・乳酸が、基本単位となって環を形成しています。
バリノマイシンは、カリウムイオンと錯体を形成して、ミトコンドリア内にカリウムイオンを運び込み、酸化的リン酸化反応を脱共役させます。カリウムイオンとの錯体は、分子中心に取り込んだカリウムイオンに対して、エステルのカルボニル酸素原子6個が正八面体型の配位構造を形成しているとの報告がされています。D-バリンが入ることによって、配位構造に関与していることが考えられます。

バリノマイシン
 

⑧チロシジン

鎖状構造をもつグラミシジンとともに、枯草菌Bacillus brevisの培養液から得られた、環状ペプチドの抗菌性物質の混合物です。
A、B、Cの3種類が知られており、D-フェニルアラニンやD-トリプトファンを含んでいます。

チロシジン
A:X=Phe、Y=D-Phe
B:X=Trp、Y=D-Phe
C:X=Trp、Y=D-Trp
 

⑨グラミシジンS

グラミシジンの名はD型アミノ酸も含む鎖状ポリペプチドで、これ自身もA、B、Cなど数種の混合物です。
次いで同じ細菌から別の環状ポリペプチドが得られ、グラミシジンSと命名されました。両者ともに、ヒトあるいは家畜の皮膚感染などに適用されることがあるとされています。
グラミシジンSは、D-フェニルアラニンを構成成分としています。

グラミシジンS

また、グラミシジンAの構造は、
Val-Gly-Ala-D-Leu-Ala-D-Val-Val-D-Val-Trp-D-Leu-Trp-D-leu-Trp-D-leu-Trp-NHCH2CH2OH
となっています。
 

D-アミノ酸を含むその他の医薬品

⑩シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)

シクロスホリンは、肝・腎・骨髄移植時の拒絶反応抑制や再生不良性貧血、ネフローゼ症候群、アトピー性皮膚炎などに使用されています。
真菌Tolypocladium inflatumが産生する環状ポリペプチドで、免疫に関わる血液中のT細胞の働きを阻害することで強力な免疫抑制作用を示し、自己免疫疾患の症状を抑えます。
D-アミノ酸としてはD-アラニンを含んでいます。

シクロスポリン
 

⑪オクトレオチド(サンドスタチン)

生体内で安定性の高いソマトスタチン類似体として開発されました。
消化管ホルモン産生腫瘍や先端巨大症・下垂体性巨人症における成長ホルモン、ソマトメジン-C分泌過剰状態および諸症状の改善等に使用されています。
サンドスタチンのインタビューフォームには、「オクトレオチドはソマトスタチンの生理活性に必要最小限のアミノ酸配列(Phe-Trp-Lys-Thr)を残し、8 個のアミノ酸からなる環状合成ペプチドである。さらにペプチダーゼによる分解を受けにくくするために一部のアミノ酸をD 体に、C末端を水酸化修飾した。その結果、オクトレオチドの血中半減期は約100 分とソマトスタチンの2-3分に比べ著明に延長した。」と記載されており、D-アミノ酸導入により、酵素分解を受けにくくして安定性を向上させたことが説明されています。

オクトレオチド
 

⑫エテルカルセチド(パーサビブ)

二次性副甲状腺機能亢進症を対象とした薬で、カルシウム受容体作動薬です。
7つのD-アミノ酸とL-システインとのジスルフィド結合からなる合成ペプチドであり、副甲状腺細胞に発現するカルシウム受容体(CaSR)に作用し、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制し、血清PTH濃度の低下によって、血清Ca濃度及び血清P濃度を低下させる薬剤です。
エテルカルセチドは、ヒトCaSRのCys482に、エテルカルセチド分子内のD-Cysを介してジスルフィド結合し、アロステリック効果(※)により細胞外Caによる抑制シグナルを増強し、CaSR作動活性を発現すると考えられています。
D-アミノ酸ペプチド骨格を有するため生体内でほとんど代謝を受けずに、長時間にわたって血中PTH濃度を低下させることが可能とされています。

エテルカルセチド

※アロステリック効果とは、本来の受容体の活性部位とは違う場所に結合して、生理的なリガンドの作用を増強する作用様式のことをいいます。
 

⑬パシレオチド(シグニフォー)

先端巨大症及び下垂体性巨人症における成長ホルモン、IGF-I(ソマトメジン−C)分泌過剰状態及び諸症状の改善及びクッシング病に効能をもつ薬です。
D-トリプトファンを含有するシクロヘキサペプチド構造をとるソマトスタチンアナログ(SSA)で、ソマトスタチン受容体(sstr)に結合して、成長ホルモン(GH)及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌抑制等の薬理活性を発揮する持続性マイクロスフェア型徐放性製剤とされています。パシレオチドは、複数のヒトソマトスタチン受容体(sstr)サブタイプへの結合を介してGH及びIGF-Iの分泌を抑制することにより、先端巨大症及び下垂体性巨人症に対する治療効果が期待されています。

パシレオチド
 

⑭ランレオチド(ソマチュリン)

先端巨大症及び下垂体性巨人症における成長ホルモン、IGF-I(ソマトメジン−C)分泌過剰状態及び諸症状の改善及び膵・消化管神経内分泌腫瘍に効能をもつ薬です。
末端のD-アラニンと環状内のD-トリプトファンを含有しています。ランレオチドも持続性ソマトスタチンアナログ徐放性製剤です。
ランレオチドは、5種類のヒトソマトスタチン受容体(sstr)サブタイプのうち、成長ホルモン(GH)分泌抑制に関連する2型(sstr2)及び5型(sstr5)に対して高い結合親和性と選択性を示し、これらのsstrへの結合を介してGHの分泌を抑制することにより、先端巨大症及び下垂体性巨人症に効果を示すと考えられています。

ランレオチド
 

⑮プラルモレリン

成長ホルモン分泌不全症の診断に用いられる薬です。
D-アラニン、D-フェニルアラニンを含有する成長ホルモン放出ペプチドです(GHRP)。
GHRP研究の中で、強力な成長ホルモン(GH)分泌促進作用を持つアミノ酸6個からなるペプチド、プラルモレリン塩酸塩(GHRP-2)が合成されました。
プラルモレリン塩酸塩は成長ホルモン分泌促進物質(GHS)受容体に結合し、主に視床下部を介した作用により下垂体からGH分泌を促進させると考えられています。

プラルモレリン
 

⑯ペニシラミン(メタルカプターゼ)

3-メルカプト-D-バリンという単純な構造を持つ、ウイルソン病(肝レンズ核変性症)に効果がある薬剤です。
1956年に銅代謝異常疾患であるウイルソン病に投与して尿中銅排泄量が著明に増加することを見いだし、各国で使用が開始されました。
その後、動脈炎を伴う関節リウマチ患者に投与してリウマトイド因子の低下と臨床症状の改善が報告され、関節リウマチが適応症として承認されました。

ペニシラミン
 

⑰リュープロレリン(リュープリン)

前立腺癌、閉経前乳癌、球脊髄性筋萎縮症の進行抑制に効果を示す薬剤です。
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)誘導体に関する研究から見いだされました。D-アミノ酸として、D-ロイシンが含まれています

リュープロレリン
 

以上、D-アミノ酸を含む医薬品をご紹介いたしましたが、D-アミノ酸の果たしている役割について記載している文献・資料はあまり多くないようです。
今後の研究によって、D-アミノ酸の機能や生化学的意義が明かされることを期待したいものです。
 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


医薬系の特許調査・文献調査サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。


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