3分でわかる技術の超キホン 環状ペプチドとは?大注目の「テイクソバクチン」って何?

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環状ペプチドの説明

ペプチド、たんぱく質・・・・ご存じ、これらはアミノ酸が直線状につながったものが広く知られています。
しかし、天然にはちょっと変わったペプチドやたんぱく質が数多く存在しています。
”特殊ペプチド”と呼ばれることがありますが、中でもペプチドが環状になったもの、すなわち”環状ペプチド”が意外にも多くあり、これが結構人にも影響しているものもあるのです。
そんな環状ペプチドをご紹介したいと思います。

 

環状ペプチドとは何か?

環状ペプチドとは、環状になっているポリペプチド鎖を持つ化合物です。
環状ペプチドは、直鎖状のペプチドとは異なる種々の特性があることが知られています。
例えば、分子量が3000未満の中分子環状ペプチド類は、環状構造であることによる代謝安定性や、分子量が1000 以上でも膜透過性を有する等、創薬の研究対象とされる特性を持っていることが知られています。

一般的に、環状構造を持つ化合物は、直鎖状のものに比べ分子の動きが制限されるため(立体構造の固定化))、標的タンパク質との強い相互作用を獲得しやすいと考えられています。
また、環状構造を持つ化合物は、生体内で酵素による切断がされにくく、生体内で安定とされています。
ペプチドを環状化することによって膜透過性を獲得し、細胞内のタンパク質に作用するという報告例もあります。また、分子量が10000を超えるタンパク質製剤は、生体特異性が高く、副作用発現を抑えることができるとされています。

非天然型のD型アミノ酸や異常アミノ酸から構成されている環状ペプチドも多数見出されており、例えば、抗菌剤ポリミキシン、抗癌剤アクチノマイシンなどが医薬品として実用化されています。

 

いま話題の環状ペプチド「テイクソバクチン」

今注目されている環状ペプチドの代表的なものとしては、「テイクソバクチン」が挙げられます。

  • テイクソバクチン(teixobactin)

環状ペプチド構造を持った新規の抗生物質・テイクソバクチンが、2015年に発見されて話題となりました。
近年開発されたシステムを使って、培養した1万種類の細菌のなかから、ベータプロテオバクテリア網の細菌Eleftheria terraeが見つけ出され、この細菌が産生するデプシペプチド抗生物質がテイクソバクチンです。

テイクソバクチンは、細菌が細胞壁を生成するために必要な2つの異なる成分であるペプチドグリカンとテイコ酸のそれぞれの生合成経路にある前駆物質を別々に標的とする「二重標的機構」を持ち、バンコマイシン耐性菌を含む様々なグラム陽性菌に対して有効とされています。

メカニズム的に耐性菌が生じにくいと考えられ、黄色ブドウ球菌(MRSA)など感染症治療薬としての実用化が期待されています。
teixobactin
 
アミノ酸略号での表記では下記のようになります。
amino
細菌の細胞壁は変わりにくく、壁層を壊す薬剤には耐性が出にくいと考えられています。
似たようなメカニズムの抗菌薬であるバンコマイシンは耐性菌が出るのに30年かかったとされていますので、テイクソバクチンが実用化されれば、耐性菌が出にくい薬剤になることが期待されています。

この他にも多くの環状ペプチドがありますので、次回以降のコラムでいくつかご紹介する予定です。

 

環状ペプチドに関する特許出願を調べてみると?

環状ペプチドに関する特許を簡単に調査してみました。
関連する特許分類(FI)は下記のようなものが挙げられます。
(検索結果は、2019年9月時点における件数です)
 

FI 説明 J-platpat HIT件数
1 A61K38/12 ・・環状ペプチド[6] 3041
2 C07D457/00 インドロ〔4、3、―f、g〕キノリン環系、例.式「図」のエルゴリン誘導体、を含有する複素環式化合物、・・ 322
3 C07D519/02 ・環状ペプチド型の麦角アルカロイド[2] 111
4 C07K ペプチド(β-ラクタム環含有ペプチドC07D;環状ジペプチドであって、その分子中にその環を形成するペプチド結合以外のペプチド結合を有しないもの、・・
5 C07K5/12 ・・環状ペプチド[4] 213
6 C07K7/50 ・擬ペプチド結合を少なくとも1個含有する環状ペプチド[4] 595
7 C07K7/64 ・ペプチド結合のみを含有する環状ペプチド[4] 674

このうち、FI: A61K38/12を出願年度別にグラフ化してみました。
出願件数は、安定的に右肩上がりの傾向を示しています。

Number of applications

 
つぎに、J-Platpatを用いて、上記のFIと「抗菌、殺菌等」のキーワードを掛け合わせてみました。

FI:A61K38/12 C07K5/12 C07K7/50 C07K7/64
KW(請求範囲): 抗生物質 抗菌 殺菌

検索の結果、519件がヒットしました。
中を見てみると、ポリミキシン誘導体、環状ペプチド、シクロスポリン製剤などの特許が含まれていることがわかります。

 
また、比較的よく知られている環状ペプチドである物質をキーワードで検索結果は下記の通りです。

物質名 請求範囲で検索 全文検索
テイクソバクチン 0 10
オキシトシン 639 4807
シクロスポリン 2285 17814
エルカトニン 100 649
デストラキシン 3 18
ポリミキシン 765 6634
カスポファンギン 82 707
ダプトマイシン 151 980
バシトラシン 506 6766
モロイジン 0 0
アマニチン 54 409
マイトトキシン 10 459
ミクロシスチン 27 272

やはりシクロスポリンなど医薬用途に関する特許が多いようです。
毒性のある物質はヒット数は少なく、特許の内容も処理方法や分析方法などの出願が目立っていました。
(※いずれも簡易的な検索による件数確認に過ぎませんので、分類やキーワードを厳密に精査したうえでの検索結果とは異なります。)
 

次回は、 医薬品に関する環状ペプチドの例をご紹介します。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


バイオ・医薬分野に関する特許調査サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。


 

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