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塗料の機能・原料・分類法《塗料/コーティング技術入門①》

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塗料の基礎知識を解説

建築物や自動車、家電製品など、塗料は様々な分野で使われています。
塗料は色付けだけではなく、鉄の錆び止めといった被塗物を保護する目的でも使われ、主に「3つの機能」を付与するために使用されています。
塗料の主な原料は樹脂・顔料・触媒・溶媒などであり、原料の種類だけでなく組成も塗膜品質に大きな影響を与えます。

連載1回目となる今回は塗料の3機能と原料、そして様々な分類法について解説します。

1.塗料・塗膜の機能

(1)塗膜の3大機能

鉄や建築材などの被塗物に塗料を塗った後、焼付もしくは常温乾燥で溶媒が飛び、樹脂が硬化することで塗膜が形成されます。
塗膜は被塗物に様々な機能を付与しますが、主な機能については3大機能と呼ばれ、「①美観」、「②保護」、「③特別機能」がこれにあたります。

塗料の三大機能
【図1 塗料の3大機能】

①美観はその名の通り被塗物の美観を整える機能で、白や赤などの色付けの他、表面の光沢をなくす艶消しなどがあげられます。

②保護は被塗物の腐食や浸食を防ぐ機能のことです。通常の鋼材は湿気を含む外気に放置するとすぐに錆びてボロボロになってしまうため、錆びを防ぐために塗料が使われます。また、外壁材や屋外展示物が紫外線によって劣化し、変色するのを防ぐために紫外線防止用の上塗り塗料が使われます。

③特別機能は美観・保護以外の特殊機能のことです。例えば遮熱性防水性耐薬品性などの機能があり、導電性を付与するものや、反対に絶縁性を付与する塗料などもあります。遮熱塗料は室内の温度上昇を防ぐ目的で屋根用塗料に使われるほか、導電性塗料は電磁波シールドの役割付与を目的として研究用などに使われています。

 

(2)塗料の用途

国内における塗料の主な用途先は建築と自動車です。重量比でみると2021年度は建物・建築資材を合わせた建築向けが全体の約33%、新車・補修を合わせた自動車向けが約18%を占めます(日本塗料工業会調べ)。

建築向けではサイディングボードやコンクリート、モルタルなどの外壁材の保護に塗料が使用され、内壁が壁紙でなければ内壁塗料が使用されています。工場や倉庫では床面に床用塗料が塗装されます。

自動車の場合は主にボディーに使用されており、ボディーは3段階に渡って塗装されます。下塗り塗料は鋼材の防錆び、中塗り塗料は耐チッピング(飛石からの保護)、上塗りは意匠性付与を目的としています。

建築・自動車以外では船舶やプラントなどの構造物、物置などの金属製品、機械類などが主な用途先です。

 

2.塗料の基本的な原料

塗料中に含まれる原料は主に「樹脂」、「顔料」、「溶媒」、「触媒」、「添加剤」の5種類に分類されます。
これらのうち溶媒は硬化の過程で飛んでいきますが、残り4成分は揮発せず塗膜を形成します。

 

塗料の原料
【表1 塗料の原料】

 

塗料の硬化機構
【図1 塗料の硬化機構】

 

(1)樹脂

樹脂は塗膜を形成する主成分です。顔料や触媒、添加剤などは基本、粉状の物質であり、これらだけでは連続した膜を形成し被塗物に付着することはできません。
樹脂は膜形成の他、被塗物を雨風から守る保護機能も有します。
樹脂の種類は様々なものがあり、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ウレタン樹脂などがあります。

 

(2)顔料

色付けの印象が強い顔料ですが、顔料には体質顔料着色顔料があり、白・黒といった色を付与するための顔料は着色顔料と呼ばれます。
一方の体質顔料は、樹脂と同様に保護のほか、塗膜の増量(かさ増し)下地隠蔽のために使われます。
なお一般的な塗料では、着色顔料よりも体質顔料が多量に配合されます。
着色・体質顔料以外にも防錆顔料など機能付与を目的とした顔料が配合されることもあります。

 

(3)溶媒

溶媒は塗装における柔軟性付与のために必要な原料です。
樹脂は高粘度な物質であるため、溶媒に溶けた状態でなければ顔料や添加物を均一に混ぜ込むことができません。刷毛やローラー、スプレーで塗りやすくするためにも必要な原料です。

 

(4)触媒

触媒は樹脂同士の反応を促進し、塗膜を硬化させるために必要な物質です。樹脂種によって適切なものが選択されます。

 

(5)添加剤

添加剤には様々なものがあり、難燃剤紫外線吸収剤などがあげられます。
塗膜の3大機能の一つである「特別機能」を強化するための材料と考えてよいでしょう。

 
なお塗料には自動車向けや建築向け、常温硬化型塗料や焼付型塗料などの多種多様な塗料が存在しますが、主なものはいずれも以上の5成分で構成されています。粉体塗料には溶媒は含まれていません。

 

3.塗料の分類法は様々

塗料はベースとなる樹脂が多種類存在するほか、用途も多岐にわたり、塗り方も様々な手法があるため、その分類法も様々です。
固定化されたカテゴリーごとに分類することはできず、同じ自動車向け塗料でもエポキシ樹脂を使うものやアクリル樹脂を使うものが存在します。目的に応じてその都度分類することになります。

代表的な分類法は次の通りです。

 

(1)焼付硬化/常温硬化

塗料を硬化工程で分類するならば、焼付硬化型と常温硬化型に分類されます。

焼付硬化型塗料は、150℃や180℃の条件で樹脂同士が反応し硬化する塗料のことです。
自動車や金属家具などの塗装に使われており、例えば「下塗り⇒焼付⇒上塗り⇒焼付」のような工程を経て塗膜が形成されます。

常温硬化型塗料は、建築など主に屋外で塗装するタイプの塗料がこれに当てはまります。
塗装した後に溶媒成分が徐々に揮発し、反応性の樹脂同士が接触して硬化が進みます。
耐薬品性や耐熱性は焼付硬化型塗料の方が優れますが、巨大な建築物を焼き付けることは不可能なため、常温硬化型塗料が使用されます。

 

(2)塗り方による分類

塗料の塗り方も多種多様です。
一般人が思い浮かべる刷毛・ローラーによる塗装のほか、圧縮空気で塗料を噴霧するエアスプレー塗装、被塗物に「+」、塗料成分に「-」の電圧をかけて電気力で付着させる静電塗装などがあります。ディップ塗装では塗料を満たした浴槽に被塗物をつけるだけで塗装する手法です。電着塗装は浴槽内の電極と被塗物にそれぞれ逆の電気を印加し、電気分解の原理で塗料成分を被塗物に析出させる塗装方法です。
これらの塗装方法のなかで、静電塗装と電着塗装に関しては金属などの導電性を持つ被塗物にしか適用できません。

 

(3)原料による分類

塗料は原料によっても分類することができます。

溶媒で分類する場合は、水系塗料と溶剤型塗料に分類できます。
水系塗料は文字通り水を溶媒とするもので、溶剤型塗料ではトルエンなどの有機溶剤が溶媒として使われます。

樹脂の場合は、アルキド(ポリエステル)樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂やウレタン樹脂といったベースの樹脂ごとで分類されます。ただし、必ずしも一製品に一種類の樹脂だけが使われているのではなく、アルキド樹脂-ウレタン樹脂、エポキシ樹脂-ウレタン樹脂というように複数の樹脂が併用されることが一般的です。

 
以上、塗料の機能や原料、分類法について解説しました。
次回2回目では建築向け塗料についてより細かく解説していきます。
 
 
(アイアール技術者教育研究所 G・Y)

 


≪引用文献、参考文献≫

  • 1)トコトンやさしい塗料の本(今日からモノ知りシリーズ),日刊工業新聞社(2016)
  • 2)図解入門よくわかる最新塗料と塗装の基本と実際,秀和システム(2016)
  • 3)早わかり塗料と塗装技術,日本理工出版会(2010)

 

 

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