組立分解忘れるべからず(設計者:初級)(技術者べからず集)
組立分解忘れるべからず
機械部品を設計する時、組立て完成した状態でその部品が発揮すべき機能・性能のみを思い描いて図面を描いたのでは片手落ちとなります。
部品の組立と分解の工程を、その運搬プロセスも含めて頭に入れて、各作業に支障が生じないような手段を講じなければいけません。
面取り忘れるべからず
機械部品には、穴側と軸側とが互いに非常に厳しいはめ合いで組み立てられるものが数多くあります。このようなはめ合い部を「インロー」と呼びます。
インローを持つ部品を設計する時には、お互いのはめ合い面の角部に面取り加工を指示することを忘れてはいけません。
面取りがあれば組立の際に、お互いの面取りを案内として両者の芯を合致させることができ、容易に組み込むことができます。面取りがないと、芯を合わせるのに大変苦労します。
押しボルト忘れるべからず
組立時と逆に、インローをもって組立てられた部品を分解する時には、蓋側の部品に押しボルト(Starting Bolt)用のネジ穴を設けることで、無理なく容易にインローはめ合い部を抜き出すことが可能です。
しかし押しボルト孔がないと、引き抜きが困難となり、蓋側部品を無理やりこじって引き抜こうとすると、最悪の場合はインロー部で噛り付いてどうにもならなくなる可能性があります。
ようやく引き抜けたとしても、インロー面が変形したり大きく傷ついたりして、補修に多大な時間と費用が必要となります。
吊り具を忘れるべからず
行政通達によれば、常時人力で取り扱う場合の重量は、労働者体重の約40%以下とすべし、と定められています。人の体重には軽重ありますが軽い方で50㎏程度を想定すると部品重量が20kgを超える場合には、アイボルトなど何らかの安全吊り具を取り付けられるように設計すべきです。
この時、吊り具には使用荷重上限があることを忘れてはなりません。
例えばある機械の主要部品重量が80㎏で、使用荷重100㎏のアイボルト用ネジ穴が設けられているとします。
機械として完成した時の重量が100㎏を超える場合、この部品吊り用のアイボルトをつけたままにしておくと、機械全体を吊り上げる時にそのアイボルトを使用してしまい、アイボルトが機械重量に耐え切れずに破損して、機械の落下という重大事故を招く危険性があります。
このアイボルトは部品吊り専用として部品の組立後には取り外し、当該ネジ穴はプラグでふさぐ、などの手順を文書化して明確に指示するとともに、機械全体を安全に吊り上げることが可能な手段(例えば機械が載るベース部品の吊り耳など)を別途講ずるなど、吊り具の使用荷重と機械の製作組立工程を考慮した設計が必要です。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)