《プロが教える》取扱説明書の制作を外注するメリット・デメリット、外部委託する際のポイント
現在は、取扱説明書や作業手順書などのマニュアル類の作成はアウトソーシング(外注、外部委託)するのが一般的です。
委託のパターンとしては、取扱説明書の完成時期やコストをコントロールする社内担当者がパイプ役となって外注会社とともに作成していくスタイルのほか、外注会社に全部お任せ(丸投げ)するスタイルもあります。
かつては作成作業のすべてをメーカーで行うという荒業をこなしていた時期もありましたが、あらゆる業界で人材不足が叫ばれている昨今においてはテクニカルライターも同じ。
現在は自社内でテクニカルライターを専任で抱えることは少なく、有能なテクニカルライターの在籍する外注会社に制作を依頼することで、企業は外注会社をコントロールできる指導力や管理能力の高い担当者の育成に注力できます。
今回は、取扱説明書や作業手順書をアウトソーシングで作成するメリットとデメリットについてお話します。
この記事をお読みいただくことで、取扱説明書についての理解が進み、読みやすい取扱説明書の作成にお役立ていただけると思います。
目次
1.社内で取扱説明書を作成する意義
社内で取扱説明書のすべてを作成することは「取扱説明書は製品の部品のひとつである」という考え方を体現していると言えます。社内で作成するからこそのメリット・デメリットもあります。
2.社内で取扱説明書を作成するメリット
まずは、社内で取扱説明書に関わる工程のすべてを社内で行った場合のメリットを考えていきましょう。
(1)情報漏洩を防ぐことができる
自社内で取扱説明書を一から作成する最大のメリットは、製品の特異性を高め、競合他社への情報漏洩から免れることができるという事、この一点に尽きます。
ただし、取扱説明書はいずれ世に出るものですから、情報漏洩の心配も作成期間のわずかな間と言えますね。
(2)迅速に不明点を解消することができる
社内で制作をすべて執り行っているという事から、製作途中に機種に変更などが入った場合でも、早い段階で再取材や動作の検証などが行えるということもメリットと言えるでしょう。疑問点や不明な点があったら、即座に開発担当者に質問できるのも、社内で制作しているからこその強みです。
(3)リスケジュールがしやすい
社内ですべてを回していることから、スケジュール調整が付けやすいという点もメリットでしょう。製品の開発遅れや急な仕様変更などで発生するリスケジュールを立てやすいことが挙げられます。
ただし、しわ寄せを食うのはたいていの場合、取扱説明書を作成している部門なので、注意も必要です。
3.社内で取扱説明書を作成するデメリット
次に、取扱説明書の制作を社内で行う場合のデメリットを考えてみます。
(1)見えざる社内工数を生む可能性がある
取扱説明書を作成する、と一口に言いましたが、製品の取り扱い方の手順を記述するほかに、説明や開設のためのイラストや画像を入れたり、読みやすいレイアウトに文章を配置したり体裁を整えたり、と多くの作業工程があります。
専用アプリケーションを使って書面レイアウトを作成するという作業は非常に困難です。
まずはアプリケーションを入手することから始まり、習熟して使いこなせるようにならなければいけません。特に習熟期間は製品開発とは無関係の工数なので、リリースされる製品に計上することはできません。これが見えざる工数となって、担当者の本来業務を圧迫する可能性があります。
筆者も社内テクニカルライターとアウトソーシングのテクニカルライターの両方を経験しましたが、新人教育の一環としてアプリケーションの習熟ができればまだしも、たいていはOJT(オンザジョブトレーニング)となって、慣れるのにかなりの時間がかかるのです。
(2)データの刷新頻度が高すぎて、最新版のフェーズがわかりにくくなる
取扱説明書の作成工程には、製品の取材、取扱手順の作成、レイアウト、校正(誤字脱字がないか、イラストは正しく挿入されているかなど)、実機検証(実際に手順に従って操作してみること)などがあります。
作業のフェーズによって社内で分業化が進んでいる場合などは、どのデータが最新版なのかがわかりづらくなってしまう可能性があります。データ管理については徹底した社内ルールを作らなくてはなりません。
制作データは常に最新版で管理しなければならないものの、管理のための工数などは製品に載せることはできないため、見えざる作業工数がここにも発生する可能性があるのです。
こうした作業のマネジメントやコントロール業務こそが取扱説明書作成では重要で、それに要する能力は主にOJTで習得されます。DTP(Desk Top Publishing: デスクトップパブリッシング)を社内で行うことは目に見えない作業工数の発生をはらんでいる一方で、それらの一貫した作業をまとめ、管理する高い能力を同時に育成することもできるため、諸刃の剣と言えるのです。
4.外注で制作することのメリットと外部委託する際のポイント
かつてはDTPのみを外注するケースが多かったため、印刷業者が取扱説明書を扱う場合が多かったのですが、時代の変遷とともに変わってきました。
マニュアル制作専門会社などが登場し、従前の印刷業者でも専門性を高めた部門として確立しています。
アウトソーシングはいまや作業効率化の旗頭ともいえる存在。
時短のほかにも寄与するメリットを見てみましょう。
ポイント1.機密漏洩の心配は?
アウトソーシングで制作を行う場合、まず、機密保持に関する決めごと(NDA)を両社の間で結ぶので、漏洩の心配はかなり軽減されます。
昔から言われるように、こうした業務にも信用・信頼が最も大事なので、これに反して機密漏洩が行われれば、徹底的な調査の結果、厳しいペナルティを課されることもあるからです。
ポイント2.コスト管理
アウトソーシングで制作を行った場合、まずコスト意識が非常に高くなり、予算を越えての作業や製品のリリースに関わる費用に跳ね返りそうなものについては見積の提出などを求めることもできます。
この場合、社内で外注先の担当者を一本化しておきましょう。製品リリースのすべてに関わるあらゆる情報の窓口は一つにしておくことで、担当者の管理能力の育成も兼ねることができるからです。
ポイント3.リスケジュールの管理
製品の情報が更新された場合、担当者がその情報が取扱説明書の作成に必要か否かを判断して外注先に流せば、外注会社はそれを反映してリスケジュールするだけなので、管理もしやすくなります。
そもそも情報の整理整頓は取扱説明書を作成する上で最も大切な作業です。外注先に情報を提供するからこそ、情報の取捨選択能力も向上すると言えます。むしろ、外注先を使うことで管理能力は大きく飛躍するのです。
5.外注で取扱説明書を作成するデメリットは?
アウトソーシングで取扱説明書を作成するデメリットとはいったいどういったものなのでしょうか。
実はデメリットはほぼないに等しいと言えるでしょう。
というのも、外注会社に作業を任せるうえで機密保持契約が結ばれますので、信頼できる委託先であれば機密漏洩の心配はまずないからです。
また外注会社は与えられた情報をもとに取扱説明書を納期に作ることが課せられた使命であり、そのために保有スキルを駆使します。納期管理は非常に厳密です。
さらに見積でコストの根拠なども確認することができるので、必ず業務開始前に見積もりを取ることをおすすめします。
担当窓口を一本化し、情報の出入りをしっかりと把握することがアウトソーシングを潤滑に進める第一歩と言えます。
6.まとめ
取扱説明書を作成するノウハウに長けたアウトソーシング会社を管理する―――これが一番コストを圧縮して適切な取扱説明書を作成する方法であると言えます。
信頼のおけるテクニカルライターを外注先に一人要しておけば、それに連なるDTP作業は安心して任せることができます。
外注先をマネジメントすることにより、窓口の担当者は自社開発製品の使い方などをしっかりと深く習熟し、取扱説明書を制作する上で必要な情報の取捨選択が正確にできるようになります。
DTPアプリケーションの知識なども外注先から学ぶことができ、身に着けた管理能力を駆使して外注会社にどういったツールやアプリを使ってデータを作っていくのかをきちんと伝えることができるようになります。
外注先のコントロールと編集などのディレクション業務は貴重なスキルであり、求人情報でも優遇措置がとられるなど別格で扱われるほどです。今後もこうした動きは加速していくことは間違いありません。
(アイアール技術者教育研究所 M・I)
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