《プロが教える》取扱説明書を作成する際の重要ポイント

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取扱説明書を作成する上での注意点

テクニカルライティングに関する前回の記事「プロが教える技術系マニュアル作成・5つのポイント」を踏まえたうえでの実践編として、今回は取扱説明書(取説)を取り上げます。

製品の取り扱い方を説明する取扱説明書は、はっきり言って、ほとんどつぶさに読まれることはありません。
これを読んでいる皆さんの中に、1ページ目からていねいに目を通す方はおられるのでしょうか。たいていは困ったときに開くというのが取扱説明書なのです。むしろ、最初から読まれないで済むのなら、その製品は取扱いしやすく、性能も優秀だというお墨付きになるかもしれません。

とはいえ、どうせ読まないのだから適当に作ってしまおう、といかないのが取扱説明書。
読まなくても、部品として製品が売られるときに揃っていなければなりません。
今回は取扱説明書を作成するとき、絶対に押さえなければならないポイントをご紹介します。

この記事をお読みいただくことで、取扱説明書についての理解が進み、読みやすくわかりやすい取扱説明書の書き方の習得にお役立ていただけると思います。

1.取扱説明書の存在意義

製品を購入すると必ず付いてくるものが取扱説明書です。
取扱説明書は製品のいわば部品の一つ。正確に言えば、付属品の一つです。
従って、これが添付されていない製品は販売できないし、セコハン(中古販売)で取引される場合でも、取扱説明書があるとなしとでは取引価格が大幅に違ってきます。

このように取扱説明書は紙製で、製品を出荷する時に同梱・添付されることが一般的です。
事実、取扱説明書のページ内に、製品の付属品として紹介されています。近年、PCなどで参照することが前提の取扱説明書もありますが、これも製品の性質に依存することが多いようです。PCの説明書などは紙よりも電子媒体という感じでしょうか。

実際、取扱説明書は製品に添付されていなければ販売できません。販売日に製品のパーツとして揃えておかねばならないからです。

製品の販売に際して無くてはならない存在なのですが、取り立てて意識されることはそれほどありません。ユーザーの多くは製品の取り扱い上、困りごとや疑問点・不明点が発生した時に初めて開くということが多いようです。

これから取扱説明書を作成しようとしているあなたも、取扱説明書の取り扱い部分はほとんど読まずに操作し、トラブルが発生したときに「困ったら」あるいは「トラブルシューティング」などのページをめくっていませんか?取説のライティングを生業にしていた筆者でさえも、そうした行動をとっていたものです。

 

2.取扱説明書の書き方《押さえておきたいポイント》

次に挙げるポイントは、取扱説明書を作成していくうえで意識して執筆していただきたい項目です。

最も大切なのは、執筆者自身がユーザーの立場に立って、わかりやすい取扱説明書を作成することです。

 

ポイント1.むしろステレオタイプがよい

辞書には辞書、小説なら小説のスタイルがあるように、取扱説明書にもスタイルがあります
製品の説明のあとに、製品の付属品の説明、製品の各部の名称と働き、取扱説明、トラブルシューティングの順にページが進みます。

製品ユーザーは、「取扱説明書はかくたるもの」というイメージを持っていて、言葉では説明できなくても、体感としてわかるものです。ですから取扱説明書のスタイルを大きく逸脱すると、ユーザーが戸惑ってしまう可能性があるのです。

 

ポイント2.コマンド(動作指示)は1手順ひとつ、最大8手順くらいまで

製品の取扱説明は、1ページ以内に収めることが理想とされています。
1ページ内におさまる手順の数は、多くて4つ程度です。
取扱動作の指示文言は1手順につき一つまでとし、多くて見開きで示すことのできる手順で、最大8つで完結するようにしたいものです。
 

取説の動作指示

考えてもみてください。一つの操作をするのに8つ以上も手順があったとしたら、いったい何がしたいのかわからなくなったりするのではないでしょうか。
操作手順を簡素化、簡略化するために技術開発も進みます。従って、くどい操作手順が必要な製品は、良い製品とは言えないのです。

一つの操作を完結するまでに長々とした手順を踏むような場合、改善点アリという事をテクニカルライティングの立場からいう事もできるのです。テクニカルライターは製品が世に出るまでに製品の操作を行える唯一のユーザーでもあるので、そうした改善点は積極的に技術者にフィードバックしましょう。

 

ポイント3.トラブルシューティングは多すぎないように

製品の開発技術者は、製品にトラブルが発生した場合に復帰する方法を懇切丁寧に解説してくれる方もいらっしゃいます。しかしこれらをすべて網羅してしまうと、トラブルの多い製品なのだと勘違いされかねません。

ユーザーはあくまでもユーザーですので、通常の使用で発生したトラブルに対し、ユーザーの立場で復帰できる以外のトラブルについては詳細にわたって記載する必要はありません
テクニカルライターとしてその辺の情報を整理することは大切です。

 

ポイント4.簡潔な表現を心掛けよう

取扱説明書は、製品の取り扱いが主ですから、取り扱いに関する説明をできるだけ簡潔に行いましょう。
紙上に文字の占める率が60パーセントを越えると、ユーザーはさらに読もうとしなくなると言われています。とはいえ、どうしても省略できない説明もあるものです。短歌や川柳など、日本語は簡潔な表現には長けた文化を持っています。取扱説明書にもその日本語力を発揮しましょう。

 

ポイント5.取扱説明書は紙? Web?

製品ユーザーはデジタル文化に慣れ親しんだ人に限りません。
製品ユーザーを老若男女あらゆる人をターゲットにしているのなら、紙媒体のものを主として用意し、紛失などを考えてデジタルデータとしてPDFデータをストックしておくのが一般的です。どちらを主として取扱説明書のデータを作るかによって、納期や金額なども変わってきます。
最終形態をどうするかを決めることは、製品発売のスケジュールにも大きく影響するため、非常に重要です。

 

取説は紙か電子化

 

3.外注する場合でもポイントを押さえておくべし

これまで挙げたポイントは自社内で取扱説明書を作成するときに役立つだけでなく、外部に作成を依頼する時にも納期や価格の設定などの見極めに非常に役立つポイントです。というのも、製品の付属品として販売当日までにそろえなければならない取扱説明書にも、制作スケジュールがあるからです。
自社内で制作するメリットとアウトソーシングすることで得られるメリットを精査して、どのように制作するかを決めることも大切です。

 
次回は、取扱説明書を自社内で制作する場合と外注する場合のメリットとデメリットをご紹介します。

 

(アイアール技術者教育研究所 M・I)
 

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