3分でわかる技術の超キホン 分離膜 (濾過膜) の種類と用途
膜分離技術は、精製する溶液を、圧力差などを駆動力として、分離膜を通して膜ろ過を行う分離方法です。
圧力差を駆動力とする分離膜は、孔の大きさによって以下の4種類があります。
目次
1.精密ろ過膜(Micro Filtration,MF膜)
「MF膜」の孔径範囲は0.1~10μmと比較的広く、水、有機溶剤等の液体中に含まれる懸濁物質、コロイド粒子、細菌などを高精度で効率的に除去したり、分離したりすることに使われます(図1)。
【図1 分離膜と分離対象の関係】
MF膜は、ろ過装置に直接溶液を通してろ過する「スクリーン方式」が使用されています。
この場合、ろ過を続けていくと膜面に濁質粒子が溜まっていき、膜の給水側と処理水側の間で圧力損失が上昇します。この圧力損失が高くなると、新しい膜と交換するか、処理水側から逆洗を行い、堆積した濁質粒子を系外へ排出する必要があります。
素材により、有機膜、無機膜、金属膜、又はこれらの組み合わせるフィルターがあります。
(1)有機膜
もっとも多く製造されているフィルターの種類です。
ナイロンやポリエチレン、酢酸セルロースなどの高分子によって作られ、比較的低コストです。
(2)無機膜(セラミックフィルター)
主にセラミックで作られており、耐熱性、耐食性などに優れ、繰り返しの薬品洗浄や蒸気滅菌に使用することができます。
(3)金属膜
金属フィルターは、機械的強度や耐熱性に優れています。ステンレスが多く使われます。
2.限外ろ過膜(Ultra Filtration,UF膜)
UF膜は、MF膜より微細な孔を有し、溶質の分子サイズでふるい分けて、分子量5000~30万程度の高分子や、粒子径1~100nmのウイルス、エマルジョンなど小さな物質を除去することができます。
UF膜はポンプで圧力をかけてろ過します。
3.逆浸透膜(Reverse Osmosis,RO膜)
逆浸透膜(RO膜)の孔の大きさは概ね2nm(ナノメートル)以下で、電解質イオンを通さないろ過膜になります。浸透圧を駆動力とする膜ろ過方法です。ちなみに、1nmは1/100万mmを意味しています(図1)。
その原理を説明するには、海水の真水化を考えるとわかりやすいと思います。
海水と真水の間に半透膜で仕切ると、真水は海水を希釈しようとして、海水側に移動します。
これを「浸透作用」といいます。
また、海水側に浸透圧以上の圧力を加えると、逆に塩水側から真水側に真水が移動してきます。
これを「逆浸透」と言います(図2)。
【図2 逆浸透膜の働き原理、(左:浸透作用/右:逆浸透作用)】
4.ナノろ過膜(Nano Filtration, NF膜)
NF膜の原理は、RO膜と同じであり、分離対象はUF膜とRO膜の中間にある分子量の物質が対象となります。
主にカルシウムやマグネシウムなどの2価イオン及び分子量が200程度以上のトリハロメタン>や農薬などの有機物を除去することができます(図1)。
ろ過膜は膜のろ過方式による「全量ろ過方式」と「クロスフローろ過方式」の2種類に分けられます。
(1)全量ろ過方式
全量ろ過方式は、膜供給水を全て膜を通す方式です。
供給液中の懸濁物質やコロイドが膜面に堆積するため、定期的に洗浄を行う必要があります(図3)。
(2)クロスフローろ過方式
クロスフローろ過方式は、膜面に対し平行な流れを作ることで、膜面に溜まる懸濁物質やコロイドなどが抑制しながらろ過を行う方式です(図3)。
【図3 分離膜のろ過方式】
5.目的に応じた膜の使い分け、組合せ使用が必要
分離膜の特性と分離対象物としては、「MF膜」は懸濁物質や細菌、超微粒子など、おおむね0.1~10μmの物質の通過を阻止し、「UF膜」では蛋白質や酸素、細菌類やウイルスなど1~100nmの物質の通過を阻止します。また「RO膜」では、無機塩や糖類、アミノ酸やBOD、CODなど低分子やイオンを含む溶液を分離濃縮することができます。
実際の分離においては、こうした各種の膜を目的に応じて効率的に組み合わせて使うことが多いです。
これ以外にも、膜を介して濃度差を駆動力として分離を行う透析膜、電位差を駆動力として溶液中の分子の電気化学的特性と分子の大きさの違いにより分離を行う電気透析法もあります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)