【早わかり電子回路】オーディオアンプICの概要 [機能特化アナログIC紹介②]
今回は、アナログICの代表的なものとして「オーディオアンプIC」について、紹介します。
ICもデジタル化が進んでいますが、アナログ部分がなくなることが絶対にない分野がオーディオにあります。
それは、音声を信号として処理するオーディオ機器とその信号を音声としてスピーカやイヤホンから出力するための、オーディオ用パワーアンプの分野です。
1.オーディオアンプICとは?
オーディオアンプICは、オペアンプほど様々な機能はありませんが、いわゆるアンプ(増幅器)です。
例えば、代表的なICで、LM386というICがあります。このICも各社から同様のICが販売されています。
LM386は、オーディオアンプ用 IC の定番品です。これ1個と数個の部品でアンプが作れてしまいます。
出力は1W程度は出るので、一般家庭で使うには十分な大きさの音量があります。簡単に小さいスピーカを鳴らしたい時などに便利なICです。
LM386には、下記のような特徴があります。
- バッテリでの動作可能
- 必要な外付け部品が最小限
- 広い電源電圧範囲: 4V~12Vまたは5V~18V
- 低い静止消費電流: 4mA
- 20~200の電圧ゲイン
- 低歪: 0.2% (AV=20、VS=6V、RL=8Ω、PO=125mW、f=1kHz)
【図1 基本的なオーディオアンプ回路の例】
図1の回路例のように、少ない部品を追加するだけで、INPUTからオーディオ信号を入力しスピーカを鳴らすことができます。
2.オーディオアンプICの応用
オーディオアンプを2個使用すれば、スピーカを2台鳴らすことができます。
1つのパッケージに2個のアンプを内蔵すれば、ステレオアンプICとなります。
ここでは、1つのパッケージに2個のアンプが内蔵されたICの応用として「BTL接続」の紹介をします。
BTLとは、「Balanced Transformer Less」、「Bridged Transformer Less」、「Bridge-Tied Load」など色々ありますが、どれも同じ構成の回路を指しています。
図2は、BTL接続の原理を示す図です。
【図2 BTL接続の原理】
図2において、アンプAには、入力信号の非反転出力が出力され、アンプBには、反転出力が出力されます。
非反転出力にsinA、反転出力に-sinAの出力信号が現れるとすると、負荷の両端では、
sinA -(-sinA) = 2sinA
の信号が得られます。
理想的には、電圧が2倍になり出力電力としては4倍になります。
電源電圧が限られている車載オーディオなどによく用いられています。
図3と図4に、簡単な使用例を示します。
【図3 ステレオ接続で使用する場合の回路例】
図3は、TDA2822というアンプが2個内蔵されたICにおいて、ステレオ接続で使用する場合の回路です。
ステレオ接続の場合は、INPUT1とINPUT2にそれぞれ入力し、スピーカ1とスピーカ2から音声出力が出ます。アンプを独立して利用する、一般的なスピーカが2個あるステレオ装置を構成できます。
【図4 TDL接続で使用する場合の回路例】
図4は、TDA2822をTDL接続で使用する回路例です。
入力は、INPUT1だけになり、出力も1個のスピーカになります。
入力は、1個になりますが、音声出力は大きくなります。
ステレオアンプ用ICは、このようにステレオ接続とTDL接続が選択できるような回路構成になっているものが多くあります。
車載オーディオでは、TDL接続のICを2個用意して、大音量の出せるステレオ装置を構成しています。
以上、今回はオーディオアンプ用ICについて紹介してきました。
この分野は、枯れた技術であり、あまり目新しいことはありませんが、人が音を聞くという行為は無くならないので、必要不可欠なものなのです。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)